マリア・クシナダと秘密の部屋
「お久しぶりです、コバリ様」
と会釈する、北方系の典型的な容姿、金髪碧眼色白の青年。背丈はコバリより少し大きい程度の小柄で華奢な体躯。白いシャープなスタイルのスリムなローブは北方の伝統的なスタイルだ。
「お久しぶりです、所長」優雅に会釈するコバリ
え!所長って言った?
目の前にいる青年はどう見ても、20代後半程度にしか見えないが、中央の研究所長は勤続25年のベテラン、とコバリから聞いている。
普通ならギョッとするところだが、まぁ、そういうこともあるか、と直ぐに考えるのを止めるアズマの表情に特に変化はない。
「初めましてアズマ様」
「私は当研究所で所長を勤めさせていただいております、モンダ・ラカビナと申します」
「以後、お見知り置きを」
微笑みながら会釈するラカビナ所長に、いや、こちらこそ、とペコペコするアズマ。
後ろに従うゲンマとマレッサとは、既に顔見知りのようで、簡単に挨拶を交わす。
中央技術研究所は遠くから見ると巨大な白い方形の建物で、外から窓などは確認できない。ツルツルの外壁は登りにくそうだ、セキュリティを重視した設計なのだろう。
ラカビナ所長が、一見何もない壁面に触れると、正面に一箇所だけある重厚なスライドドアが、ゆっくりと開く。
「皆様、ようこそ中央技術研究所へ」
「博士がお待ちです」
これより少し前の朝8時ごろ、教会警備隊本部からゲンマとマレッサが、コバリとアズマの逗留している宿泊施設のロビーまでやって来て合流し、朝食を共にする。
テラス席の凝った意匠の白い丸テーブルに着くと、色とりどりのフルーツ盛り、葉物サラダ、極東では見かけない固いバゲット様のパン、乳酸発酵のドリンクなど運ばれてくる。
「昨晩は良く眠れたかしら?」コバリがゲンマとマレッサに微笑み、冷えた柑橘系のジュースをグイッとあおる。
「はい、ゆっくり休ませていただきました」とゲンマ
実際はそうでもないが、そう答える以外の選択肢は無い。
昨晩、トマス博士のお屋敷を辞した後、精も魂も尽き果てたマレッサをなんとか自室まで運び、自身は極東からの報告や本日の議題など、結構遅くまで確認していた。
「昨日はありがとうございました」
とマレッサが改めて頭を下げる。昨晩は夢見心地だったが、本番は今日から、だ。呆けている場合ではない、と今日は早朝から資料を見直し気合充分だ。
「まあ」クスッと笑う、コバリ
「報酬の先払いみたいなものと思っておいてちょうだい」
「恐れ入ります」
とりあえずアタマを下げるマレッサだが、あれ?私の野望、お見通しなの?とちょっと内心オタオタしている。ゲンマはさもありなん、と思っているが、もちろん両名とも表向きは上品に微笑んでいるだけである。
アズマは例によって泰然と、野菜スープにパンを浸し、ウマウマとモリモリ食べている。
ゲンマも薄々、アズマは時々考えるのを止めているな、というのは気付いてはいるが、確かにコバリの隣にいると頭脳労働はおまかせ、という気持ちになるのもわからないではない。
ウンウンと一人頷きながら、山盛りのカットフルーツをモグモグ食べるゲンマ
ゲンマは立場上、考えないワケにはいかないので、今日の議題について、コバリにいくつか質問、不明な点など確認する。
「そういえば」
中央軍から、教会警備隊本部へ連絡がありました。とゲンマ
「詳細な所在は明らかにされていませんが」
「マリア・クシナダ最高顧問が昨日からこのエリア内にいらっしゃるそうです」
「…アラ、そうなの」
「…へぇ、そうなのか」
そいつなら、たぶんまだ半裸のままアズマのベッドでゴロゴロしてる、とはちょっと言い辛いな、とコバリとアズマは言葉を濁す。
「北大陸の稀人5人が、このエリアに勢揃いなのね」若干、興奮気味のマレッサ
「そうね」微笑むゲンマ「今、このエリアが地上で一番安全かもね」
ジャイアプールの一件以来、中央の警戒態勢は1段階上がった。もともと要塞並みの武力が配備されている教会本部地区だが、そこにマリアがいれば戦車大隊で攻め込まれても、おそらくビクともしない。だからといって、教会警備隊の警備担当が緩む事はない。逆に、マリアが投入される事案、ということで今回の警備のため特別に配備されている、別動隊第1班の精鋭「黒服」の士気は異様に高い。
今回はどちらかというと、ゲンマは警護対象のほうだが、もちろん警備体制は把握している。現在も目につく場所には確認できないが、要所要所に黒服が潜んでいる。
「油断禁物ですよ」
コバリとアズマの間、何もなかったその空間、一瞬にして現れ、椅子に座りカップとソーサを持ってお茶を飲むマリアは、チェック柄のプリーツミニスカート、ドレスシャツに若草色のニットベストとザ・女子学生スタイルだ。
さすがのゲンマも、一瞬ビクッとし、席を立ちそうになったが、全く動じないコバリとアズマを見て、なんとか落ち着く。
マレッサはマリアを初見のため、ヒッと声を上げ椅子からズリ落ちそうになったが、これまた全く動じないコバリとアズマに隣のゲンマを見て、なんとか口を押え堪える。
「みなさん、おはようございます」
朝食ご一緒させていただきますね、とニッコリ微笑み周囲を見回すマリア。
テーブル横で待機しているメイドさんは、もちろん只のメイドではなく、教会警備隊SPなので、神出鬼没のマリアにはもう慣れっこだ。
手を挙げてそのメイドさんに、お皿などを持ってくるようお願いするマリア。
先程まで、円卓に4人等間隔で席に着いていたが、今は5人等間隔の並びになっている、と気付いて、ハッとするマレッサ。どう考えてもマリア・クシナダの仕業だ。これが「時を止める」と言われる世界最強か、と内心ゾッとする。これだけの事をされて、全く知覚できないのは恐怖でしかない。
「私はマリア・クシナダ、一応、中央軍の最高顧問ということになっています」
「初めまして、マレッサ・ロクメ」
驚かせたかしら?ごめんなさいね、と微笑む、プラチナブロンドのショートボブに赤縁メガネ、右は深濃の紅、左の瞳はコバルトグリーン。虹彩異色の可憐な美少女。
相変わらずコバリといいコイツといい、外面は良いな、と思いながら、モクモクとフルーツを頬張るアズマ。
「あ、はい、いえ、こちらこそ初めまして、マレッサ・ロクメです」
反射的にピョコンと立ち上がり、深々とお辞儀する。まだ、心臓の鼓動がおさまらない。
「以後お見知り置きの程、よろしくお願い致します」
「そんなに畏まらなくても良いのよ」とマリア「お掛けになって」
そりゃ、畏まるやろ、てゆうか普通におっかねぇよ!お前は!
と、心の中でツッコむアズマ。
「何か御用かしら?マリア」ちょっとツンとしてコバリ
「いえ、私は直接、今回の会議には関係ないのですけど、ご挨拶でも、と思って」
表面上は品良く振る舞う稀人3人だが、只今、絶賛無音で交信中である。
-アンタ何しに出てきたのよ
-イヤァ、楽しそうだったんで、混ぜて欲しかったんス
-なんじゃそりゃ、大人しくしとけや!
-何スか、こんな美人を2人も目の前にして、この私に大人しくしろと?
-テメェ、何するつもりだ!
ゲンマには、一見、静かに朝食を摂っている3人が、何か交信しているのは分かっている。もちろん内容は分からないが、何らかの機密事項だろうと、気付かないフリをする。
-ここでトーシローなら、ゲンマ×マレッサ、を妄想しがちッスけど
-やはりここは、意表をついて、マレッサと博士の年の差イチャラブ××××ッスよねぇ
-黙れや、色ボケ
-フッ、昨夜そんな色ボケの×××で×××を×××させていたのは誰ッスか?
-今、それ関係ねぇし! それ以上言うと泣くぞ!
単に下ネタを連発しているだけだが、機密と言えば機密だ。
-それにしても分かってないわね、アズマ
-え?何が?
-ん、何スか?何スか?
-まぁ、それはおいおい、ね。
「ジャイアプールではお世話になりました」
改めてマリアに頭を下げるゲンマ
「アラ、一応、私は何もしていない、ということになっているのよ」
アズマにニッコリ微笑みかけるマリア
「前回も、今回も活躍するのはアズマさん、でしょ?」
渋い顔のアズマだが、脳内で引き続きマリアが、調子に乗って下ネタを連発しているからだ。
-もう昨晩から、×××の○○が△△△で…
これで、フツーに会話しているのだから大したものだな、とある意味、感心する。
「今回も」
「私は特に何もしない予定ですよ」
マリアが大活躍するシチュエーション。この間のジャイアプールを思い出し、想像しただけで寒気がするゲンマ
「そう願いたいものです」
虹彩異色の4人に囲まれ、マレッサは緊張し通しだったが、表面上は穏やかに朝食は終了し、ソロソロ時間だ、と席を立つ。
「私はこれで失礼しますね」と言うが早いか、マリアの姿は搔き消える。
「ああ」「いつもこんな感じなんで、気にしないでね、マレッサ」
ちょっとビビり気味のマレッサに、優しく声をかけるコバリ
会議直前に災難だな、と気の毒に思うアズマ
「さあ、中央研究所へ参りましょう」とゲンマに促され、宿泊施設を出る一行。
同敷地内なので、少し歩けばそこは中央技術研究所だ。
そんな4人を離れた木陰から、目立たないよう見守る黒服の警備隊員は、色白ツノ無しの北方系と、赤銅色の肌に短い額のツノの西方系の対照的な容姿。昨日、空港にコバリとアズマを迎えに来た別動隊第1班の精鋭2人だ。
先程、宿泊施設の教会警備隊SPからマリア・クシナダ最高顧問が現れ、朝食を共にしているとの連絡があった。思わず2人は目を合わせ頷く。
稀人2名が滞在している間、顧最高問は中央に滞在する、と中央軍から連絡はあったが、本当だったな、の頷きだ。
もちろん、最高顧問は「滞在する」というだけで、警備にあたるわけではない。が、通常は機密事項である、その所在をわざわざ連絡してくる、というのは、最高レベルの警戒態勢、ということだ。
油断なく周囲を警戒する彼ら、その目の前に、腕組仁王立ちのミニスカ少女が忽然と現れる。
「おはよう、ガンデ、メルナ」
特に振り向きもせず声を掛ける。ちなみに別動隊における呼び名は皆、本名ではなくコードネームだ。
「おはようございます、顧問」予想はしていたので、特に動揺する事も無く、最敬礼するメルナとガンデ。ちなみに北方系がガンデ、西方系がメルナだ。
両名とも、生真面目な表情を崩さないが、内心では
マリア様はいつも可愛いけど、今日もとても可愛らしい!
軍服もカッコイイが、やはり、マリア様にはミニスカートだな!
とか思ってはいるが、もちろん口にも態度にも出すことは無い。
別動隊第1班の面々は、マリアとは7年程前、軍隊にも匹敵する武力を誇っていた犯罪組織を壊滅した際、行動を共にして以来の付き合いだ。
当初、マリアと初顔合わせの際、アルハンゲスリンクにおける伝説級の逸話はもちろん承知していたが、可憐な見た目とのギャップに、所詮は公式記録ではなく噂話だ、誇張されて伝わっているんじゃないか、と半信半疑の隊員も多かった。
もちろんそんな評価は、マリア1人で一瞬にして、犯罪組織のメンバー全員を捕縛した後、180度反転した。
それ以来、マリアは別動隊第1班の女神様だ。
ちょっと振り向き、直立不動の2人をチラリと見るマリア
「今のところ、このエリアに危険は無いけど」
「直近では、ジャイアプールの件がある」フッと微笑む
「私がここにいる意味、わかるわね?」
「心得ております」
振り向くマリアの可愛さに、辛抱たまらず微笑みそうになった2人は、揃って頭を下げ誤魔化す。
マリアもさすがに、皆から若干エロい眼で見られているな、とは気付いているが、逆にクールビューティーを装っている。普段抑えている分、アズマで発散しているのだ。
「そう」
「あなた達がいれば心強いわ」
「よろしくお願いしますね」
と、マリアの姿は一瞬にして掻き消える。
残された2人は、一瞬だけ顔を見合わせて、ニヤッとする。久しぶりにマリアと直に話せて、2人とも、否が応でも気合が入るが、こういう時こそ冷静に、だ。
すぐに生真面目な表情になり、中央技術研究所の入口にて所長に出迎えられる4人を確認し、配置に戻る。
マリアは1人、教会地区内を一通り巡回し異常がないことを確認。そこかしこに教会警備隊の隊員や、黒服が警邏しているが、いちいち姿を現し、話しかけるようなことはしない。隊長格であるガンデとメルナとは違うのだ。
以前テンマから、あなたはもう気楽に下士官以下の隊員に話しかけてはいけない、と言われている。
「すでにあなたの存在そのものが」
「ステイタスシンボルなのよ」
マリアにテンマに逆らうなどという選択肢は無い。うーん、まぁそういうものなのか、と言いつけを守っている。マリアは元々人見知りなので望むところ、ということでもある。
今日は中央技術研究所の大会議室にて、関係者一同勢揃いし、オープニングの会議、と聞いている。外からは当然、覗くことはできないので、コッソリ忍び込み、どんな様子か見てみる。もちろん警備員や他の出席している研究者にマリアは認識できない。トマス博士には気付かれたようだが、ちょっと微笑みかけてくるだけで、特には何も言わない。
こちらからも軽く会釈する。
大きな円形ホールの正面、壇上には薄い大型のスクリーンが浮かんでいる。オープニングということもあり、会議というよりプレゼンみたいだ。今は通信担当の技術者から通信衛星の説明がされているようだが、詳しい事はマリアにはよく分からない。
階段状に配置された席の、中央中段、一番良い場所に、博士、コバリ、アズマが並ぶ、その後ろにマレッサとゲンマ、同じくゲスト扱いだ。出席者は厳選しているとのことだが、研究所員はもちろん、中央軍、教会警備隊の技術者、中央評議会関係者、など出席者は多い。しかしながら広い会議室なので、ゆったり間隔を開けて席に着いている。
中段、右翼には中央技術研究所のトップがズラリと並ぶ。
これが、中央の「七賢人」かぁ、と壇上に並ぶ7人をホウホウと眺める。もちろん有名人なので顔は見知ってはいるが全員揃うと壮観だ。4人は男性型、ラカビナ所長と同じく北方系、3人は女性型、こちらは極東、南方系で、小麦色や褐色肌の有角だ。皆、生体回路はほぼ「思考」に特化されているようだが、種族、性別で何か差があるのかな?後でコバリさんに訊いてみよう。
ラカビナ所長ほどではないが、皆、外見が若い。所長が何かしてるんじゃない?とは専らの噂だが、マリアもここ10年、容姿はほぼ変わっていないので、他人のことは言えない。どんなに食べても太らないし、逆に食べなくても痩せない。
この世界に顕現した当初、得体の知れない状況にビクビクしながら、ほぼ飲まず食わずで過ごしていたが、健康状態に全く変化は無かった。
かつて、病床で点滴を打ちながらも、瘦せ細っていった自分の体を思い出し、便利な体になったな!ヤッタネ!と思う。
時折、隣の博士にコバリが小声で話しかけたりすると周囲の人間が聞き耳を立てて、その内容を把握しようとしているのが面白い。やはりこの2人は特別なのだ。
その後ろで、マレッサは生真面目に資料を確認、メモをとっている。ゲンマとアズマはスンッとしているが、どうせアズマは考えるのを止めているのだろう。
いま、ここで薄い本とか目の前に置いてみたら喜ぶかしら、グフフッと妄想していたら、会議室内をウロウロしているのをコバリにも気付かれた。やばいやばい。
基本的にコバリはマリアを鬼可愛がっているが、あまりハメを外すと怒られるのは分かっているので、ここは大人しく退散する。
研究所を出てから、一旦、上空へ。一応周囲を警戒する目的だが、今日は雲一つない晴天で気持ちいいなぁ、と仰向けになりフヨフヨと高度300mぐらいまで飛んでみる。さっき会議で、まずは上空400kmの高度に衛星を打ち上げるとか言ってた、意外と低いんだな、と思ったが、どうやらそれは「低軌道衛星」らしい。次段階は高度3万6千kmって言ってたな。上空、遥か彼方を眺めながら、アズマさんはそこまで飛ぶのかぁ、スゴイなぁ、と感心する。
眼下には中央の市街地が広がり、遠くに多くの船舶が行き交う港湾が見える。特に異常なし、とゆるゆる降下。上空監視している教会警備隊の索敵に引っ掛からないよう、注意しながら教会本部居住区へ移動する。
一応、教会本部居住区にはマリアの部屋もあるので、コソコソする必要はないのだが、なんとなく人目を避け、テンマの部屋へ。板張りの廊下は昔ながらの造りで、内装は質素に見えるが、建屋は全て高強度混凝土製の要塞並みの堅牢度を誇る。あまりお金を掛けたくはないが、セキュリティ上しょうがない、とのことだ。
「こんにちは、お邪魔しま~す」コンコンとドアをノックするが、誰もいないのは分かっている。まだ午前中だから、おはようございます、だったかなと思いつつ、両開きの重厚な扉をヨッコイショーイチと開き中へ。
ツカツカと奥へ進むと、壁一面の重厚な本棚の左端、上から3段目、左から2番目の分厚い本をスルリと抜き、その奥にある黒いパネルに手を当てる。
と、本棚横の重厚な飾り戸棚がゆっくりとスライドし、床に直径1m弱の穴が現れる。滑らかな金属製のダクトで、上から覗き込むと内部は漆黒の闇、底が知れない。
そんな穴にマリアは躊躇なく、ピョンと飛び込む。重力制御持ち以外は入ることさえ憚られるが、もちろん様々なセキュリティが施されており、登録された人物以外が侵入した場合はダクトに閉じ込められる仕組みだ。板厚50cmの超硬合金製のダクトは超電磁砲の徹甲弾でも、一撃では貫けない。マリアでさえも壊すのに苦労する代物だ。
ま、壊さないけどね、とグングン降下しながら考えるマリア。下が明るくなってきたな、と思ったところで、ダクトからスポンッと30m四方のこれまた全面金属製の巨大なハコのような部屋に出る。重力制御し、ゆるゆると軟着陸、ツルツルの壁面はどの面も同じようにしか見えないが、マリアは迷わずある一面に向かい、目線の高さに手をかざす。
フーーッと長い溜息をつきながらしばらく待っていると、どこにも継ぎ目が無かったように見える壁の一部がガコンッと少しへこみ、横にスライドする。
「おはようございます」
ペコリと頭を下げ部屋に入る。
地下深くにあるはずの室内だが、穏やかな陽光の中、今朝、朝食を摂ったテラス席のような洒落た丸テーブルで、お茶を楽しむ2人。
「アラ、いらっしゃい」とテンマ
そしてもう1人、
青いベレー帽を斜に被るショート栗毛の小柄で華奢な色白少女。見上げる瞳は鮮やかなアメジスト色。
「あなたも、一緒にお茶でもいかが?」
と、ヒトではないその存在は微笑む。




