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コバリ・アオヤマの華麗なる黙示録(疾風編)  作者: マツモト・ユウイチ
17/54

海獣掃討作戦 前日

モーリは海に向かって走る。

 今年8歳になる、漁師の娘であるモーリの日課は、教会学校の授業が終わったら、海を見に行くことだ。森の獣道を抜け、少し開けた崖の上へ。ここはほとんど人の立ち入る事はないモーリの秘密の場所。本日は晴天、木漏れ日にモーリの金褐色の巻毛がキラキラ光る。冬の空気は澄んで、崖の向うに、遥か彼方の水平線が良く見える。

 ここは北大陸東岸、コバリとアズマの居る極東地域は北大陸の北東部から突き出した大きな半島であるが、その付根あたりから、南方に数千キロ下った地域。2月とはいえ、気温は20℃を割ることは無い。モーリも今日はダブっとした長袖ロングワンピだが、上着はナシだ。

 特に今年は、お父さんお母さんが言うには「いじょうきしょう」というヤツらしい。

この間なんか、沿岸の海水が赤や緑の色になっていてビックリした。お父さんは近くではお魚が獲れないから、遠くまで船を出す、って言ってたな。

 そんなことを考えながら崖上から海を眺めていると、遠くの海面の一部がユラユラ揺れてきた。

 お母さんからは、大きな海獣が獲物を獲る時には、アワを吐いて網の代わりにするんだよ、と教わっている。あれもそうかな?と思って、しばらく眺めていた、が、

 ふと、崖上の巨岩の上、黒い人が腰掛けて、海を眺めている姿が目に入る。

あんなところに人!?と、ビックリするモーリ、じーーっと見ていると、彼の人物が被っていたフードを上げ、こちらへ顔を向ける。あ、女の人だ!

 黒いフード付の厚手のマントに細かい紋様が刺繍された赤いロングスカート、この辺ではあまり見ない格好だ。赤褐色の肌に、豊かなブロンドの巻毛、ツノは一見して見当たらない。そしてなにより、左の瞳は青、右の瞳は金褐色が混じる深紅。虹彩異色。

 わぁキレイな瞳、とモーリが見惚れていると、

「こんにちは、お嬢さん」と彼女がニッコリ笑う

「あ、こ、こんにちは」ペコリと頭を下げるモーリ、両親から挨拶はキチンとするように、と躾けられている良い子である。

「こんな場所で何をしているの、お嬢さん?」

「あ、いえ、よく学校帰りにはここから海を見ているんです」

よく考えれば、お前こそなんでここにいる?だが、幼いモーリはまだそこまで考えが及ばない。

「そうなの」艶然と微笑む女性

「ちょうど良いタイミングね」

「ホラ、見てごらん」と遠く海上を指差す。

揺らめく海面がさらに波立ち、その範囲が次第に拡がっていく。

ボコボコとここからも音が聞こえるほど激しく泡立つ海面、そして海上に黒いアタマが、いくつも姿を見せる、最初10程度が出たり潜ったりしていたが、見る見る内に数が増えて、もはやモーリには数えられない。おそらく100は越そうという黒い塊が海面をかき回す。

激しく波立ち、崖下にも波が押し寄せ当たって砕ける。

近くに船舶が航行していたら、とんでもない大惨事になるところだ。

そんなダイナミックな光景を目の当たりにして、モーリは、うわぁ、凄い凄い、とピョンピョン跳ねる。

「そうね、凄いわね」といつの間にか岩の上からモーリの傍らに立つ女性。

優しくモーリの頭を撫でる

「でも」

「私のことは忘れてね」

パチンッと、モーリの額に当てた手の平から、小さな電光が走った。



「お母さん、お母さん!」

家に駆けこみ、お母さんのもとへ

「何、モーリどうしたの?」娘の勢いに少し驚く母親。

「今日、海がね、ブクブクって、凄かったんだよ!」

「へぇ、そう、良かったわねぇ」

モーリの頭を優しくなでる母親

 バブルネットフィーディング、大型海獣などが、口から出す泡で小魚など囲い込み、一網打尽で捕食する、狩りの方法。

 きっと、その大規模なものを見たのだろう、ひょっとしたらオケアノスかしら?

「いつものところから見てたの?」「うん、そうだよ!」「お友達と?」

え、あれ、と一瞬戸惑うモーリだが、

「ううん、1人で見てたよ!」とニッコリ笑う。


この日の出来事が、巨大海獣北上の前触れであったことが判明するのは、数か月後のことだ。



メガネ屋の一室にて、

「お久しぶりです、コバリさん!」

「久しぶりね、マリア」

コバリには普通に小走りで近付き、ギュッとハグするマリア。

えへへぇ、と懐くマリアを、「よしよし」とナデナデするコバリ。どうやら仲良しのようだ。

後ろに控える西方系の彼も、微笑みながら見守る。

「そうだ」パッとコバリから離れ、マリアが先程までのお澄ましモードになる

「アズマさん、ご紹介します、こちらは中央軍(セントラル・フォース)バルイフ・ラファルガ情報担当官です」

 奥に佇む彼はゆっくりと頭を下げる。西方系特有の額の短い角、赤褐色の肌。だが良く見ると涼しい目元、彫の深い顔立ち、美丈夫と言っても良いだろう。

「基本的には、私のサポートをしてもらってます」

いつの間にやら、彼の横に立っているマリア、ポンポンと軽く彼の腕を叩き、ねっ、という感じで見上げる。

小柄なマリアと並ぶと、もう親子ぐらいのサイズ感だ。

「お初にお目にかかります、今後とも、よろしくお願い致します」

見た目通りの深く響く声、叩き上げ、の隙の無い所作。見た目と雰囲気から言えば、こちらのほうが「世界最強」だな、と思いつつアズマも頭を下げる。

「いえ、こちらこそ、お世話になるかと思います。よろしくお願いします」

マリアは上機嫌に、バルイフを振り返ると

「これから、コバリさん、アズマさんとお食事に行ってくるわ」

「今日はもういいわよ」ニッコリと見上げる

「それでは、本日は失礼します。明日の朝、お迎えに上がります」

「そうね、よろしく」

部屋の奥にある扉から、一同に会釈し退出するバルイフに、マリアは小さくバイバイと手を振る。

さて、とコバリとアズマに向き合うマリア

「ちょっと遅くなりましたけど、お昼ゴハンにしましょう」

振りむいたその瞳は、両目ともコバルトグリーンに変わっている。

あれ?っと思う間もなく、髪も一瞬で茶髪のショートボブに変わる。

「そんな見つめないで下さいよぅ」とニッとするマリア

「一応、自分、世界最強ってことで、やらせてもらってるんで、意外と有名なんス」

お外に出る時には、変装するッス。ああ、そりゃそうか。

「お店も個室予約してますんで」

「あら、気が利くわねマリア」

えへへっと頭を掻くマリア

「実はみんなバルイフの手配なんス」

有能だなぁ。有能でしょ、とムフーっと胸を張るマリア。

バルイフとは仲良しのようでなによりだな、と思うアズマ。

「今日は、美味しいお魚食べながら、ゆっくりお話しましょう!」

ちなみにお勘定は中央軍(セントラル・フォース)持ちッス!

 ワーイとコバリ、アズマ、マリアで浮かれて移動。徒歩5分程度の裏路地にある小粋なお店に入店する。軍の御用達のようで、店員さんはマリアを見ると何も言わずに頷き、地下の個室へ案内してくれる。

 にじり口、とまではいかないが、高さ低めの引き戸を屈んで這入る。板張りの床に掘りごたつ式のテーブルと和風の設え。料理への期待が高まる。

アズマとコバリは奥へ、向かい合わせで座って落ち着く。なぜかマリアは、アズマの隣にチョコンと座る。まぁいいけど。

 料理のオーダーはマリアにおまかせ。まずはキンキンに冷えた麦の汁でカンパイする。

「そういえば」

「なんでメガネ屋なんだ?」マリアに訊いてみる。

「あのメガネ屋のメガネは、半分ぐらい自分のデザインなんスよ」

クイッと赤縁メガネを人差し指で上げるマリア

「え、メガネ屋で働いてんの?」世界最強なのに?

「うーん、そういうワケでは無いんスけど」

マリアの説明を搔い摘むと、

 マリアが顕現した10年前、もちろんメガネはすでに存在していたが、フレームは銀縁のみ、デザインもあまり豊富ではなかった。トマス博士も眼鏡をかけているので、薄型軽量化、遠近両用など、レンズの開発などには関与したようだが、デザインには無頓着だ。

もっとオシャレなメガネがかけたい!とテンマにお願いしたところ、何人かの工業デザイナを紹介してくれたので、彼らと数種類の試作品を作ってみた。マリアは自分のメガネが出来て満足したが、デザイナ達が、もったいない、とそれらを量産して売り出したのだ。

 マリアが赤縁のボストンやウェリントンをかけ、期せずして広告塔のような役割を果たしたこともあり、ジワジワ売上は伸び、そして、今や各主要都市にお店を構えるほどの定番商品となっている。とのこと。

「で、出張の際には、各支店に顔を出すことにしてるんスよ」

 ちなみに店員さんはもちろん教会関係者、だが、諜報機関も兼ねているっぽい。なのでこれ以上は立ち入らない事にしてスルー。

「アズマさんのメガネもウチのッス」

ああ、この偏光フィルタ付のヤツか。特に今は不要なので、外して卓上に置く。

「コバリさんや自分みたく、カラコンが良ければ用意するッス」

「いや、ま、とりあえずメガネでいいよ」

「あれれぇ」「なんだよ」「ひょっとしてコンタクト入れるの怖いッスか?」

「…目の中に何か入れるってさぁ」スゲェ嫌じゃない?

「大丈夫、痛いのは最初だけ」目を細めて顔を近付け囁くマリア

「いや、いいって」「慣れれば気持ちよくなりますよ」「ちょっと濡らせば、スルリと入りますよ」ジリジリにじり寄ってくるマリア「いや、ヌルッと入りますよ」「先だけ、先っぽだけでもいいんで…」

「レンズの先っぽってなんだよ!」

さてはコイツ、厨二のエロボケだな、とマリアの認識を改めるアズマ。

そうこうしているうちに、次から次へとお料理が運ばれてくる。

 期待通り、お刺身、お魚の焼き物、蒸し物、天ぷらだ、テンマ様、和食を普及させてくれてありがとう。

 魚の名前はこちらの固有名詞でメニューにも書いてあるが覚えきらん。これは、ブリっぽい、サバっぽい、タイっぽい、これはカナガシラ?などと食べ進める。赤身の刺身はマグロというより獣肉に近い、どうやら小型の海獣らしい、「イルカっぽい」ヤツとのこと。

確かに、以前W歌山のT地町あたりで食べたイルカと似てる。

「今晩は特に予定は無いんだよな?」イルカっぽいヤツ美味しい。モグモグ。

「そうね、明日から本格的に海上警備隊と教会警備隊の作戦行動開始だ。不測の事態が生じる可能性もあるし、上の思惑としては全てのカタがついてから、慰労会みたいな感じで、パァっと宴会したいみたいよ」

「警察と教会警備隊が今晩から港湾封鎖の準備を進めるみたいッス」スシをつまむマリア

「うーんそうねぇ、じゃあこの後、ちょっと港を見に行って、日暮れ前には教会に戻りましょう」

麦汁から、お米の汁に変更し、グイッと杯を空けるコバリ

「お二人は、あのリゾートっぽい教会宿泊施設に逗留なんスよね?」

「そうね、そういえばあなたは何処で寝泊りしてるの?」

「自分の所在は基本的に軍事機密なんで、内緒ッス」とメンゴのポーズをするマリア

「でも今日はコバリさんのお部屋にお邪魔してパジャマパーティーでもいいッス」

「それはダメね」

「ええぇ、なんでッスか?」哀しそうなマリア

「ここではアズマと同じ部屋に逗留しているの」

「なんと! ふしだらッス」

「そう、ふしだらなのよ」

「イヤイヤイヤ、寝室は別じゃねぇか」

「それ以外は一緒なんスね?」下からアズマを睨め付けるマリア

「おお、まぁ、そうだな…」

「お風呂も一緒に入って、あんなとこやこんなとこ、洗いっこするんスね…」

「そ、」

 そんなことは、と言いかけて、入浴中にコバリが乱入してくる可能性は十分にある、とか考えて返答が遅れた。

「あー言い淀んだッス!」

「もうこれは処女厨の味方、このマリア・クシナダがコバリさんの貞操を守るため同衾するしかないッス」

処女の味方、ではなく処女厨の味方なんだなお前は!

「大丈夫よマリア」

「アズマにはそんな甲斐性は無いのよ」

あと同衾の使い方がちょっと違うわよ、とマリアを嗜めるコバリ

アズマはちょっとイラッとするが、反論すると面倒な事になるのは明白なので放置。

 とにかく夜もおしゃべりしましょうよぅ、と駄々をこねるマリアに、ハイハイじゃあ寝る前までならいいわよ、とあしらうコバリ。



「そろそろ出ましょう」チラリとコバリが腕時計を見る。

なんやかんやと愉快に話しながら飲み食いしてたらもう夕方近くだ、

「あ、自分、ちょっとメガネ屋に戻るッス」

「そう、私とアズマは港へ降りて、その辺、ちょっと見て回るわね」

「了解ッス、夜、お伺いする前に連絡します!」

 お勘定は中央軍(セントラル・フォース)持ちだ、たぶん直接請求が行くのだろう、皆でちょっと女将さんに会釈し、綺麗な店員さんに案内され、そのまま外へ。

「では!」と言うが早いか、マリアが消える。

この時、アズマも加速モードに入っていたが、やはり全く動きが追えない。

フッと笑うコバリ「時間を止める、能力なんだから、そりゃ見えないわよ」


 もちろんマリアの能力は「時間を止める」訳ではない、一般人に説明する際にわかりやすいので、そう言っているだけだ。先程、マリア自身も

「いや、自分、時間止めるゼ、とか言ったこと無いッス」

「時間、止めてないんで」

と言っていた。

 しかしながら、実際にマリアの起こす事象がまるで「時間を止めた」かのようなので、特に細かいことは誰も言わない。相対性理論や時空間に関する物理学を学んでいる者なら、そんなことは無い、と分かっているはずだが、あのトマス博士がマリアの能力についてはノーコメントだ。まともな研究者なら敢えてコメントするような事はしない。

「自身の能力を」フッと鼻で笑うコバリ

「ベラベラしゃべるなんて、言うまでもなく愚の骨頂だわ」

そッスね、とウンウン頷くマリア。

「自分、いくつか戦場にも行ったんスけど、戦ってる最中に名乗りを上げたり、攻撃方法叫ぶとか、そんなバカ丸出しのこと、誰もやんないスよねぇ」

そうだろうなぁ。てゆうかマリアはこの若さで戦場に行くのかぁ。やだなぁ稀人。とちょっとブルーになるアズマ。

「ああ、マリア、ちょっとアレやってみて」真顔のコバリ

「え、あれッスか」同じく真顔のマリア

ん、アレって?

「バインド!」マリアがアズマを指差し、叫ぶ。

え、なんだ?と横のマリアを見るアズマ、ニコーッとしながらマリアがすり寄ってくる。

アレ、体が動かせない!と気付く。

「ふっふっふ、アズマさんはもう身動き取れないッスよ」

「これが、『バインド』の能力ゥ!」「うわ、ちょっ、やめろよ」

どうやら首から上は動かせるので、せめてもの抵抗でキョロキョロする

「まぁ、まぁ、悪いようにはしませんよぅ」

マリアの左手が太腿に置かれ、右手はズボンのベルトをカチャカチャいじりだす。

「イヤー、やめてぇ」悲鳴を上げるしかないアズマ

「動けない異性にあんなことやこんなことするのは、男のロマンですよねぇ?」

マリアはアズマのベルトをバックルから外して緩め、ズボンのジッパーへ手を伸ばす。

「失礼致します」個室の外から声がかかる、「どうぞ」とコバリ、「お待たせ致しました」スッと個室の引き戸が開く、追加の料理が到着だ。

 マリアはもちろん、瞬間で元の位置に戻りスンッとして、店員さんに微笑みかける。

拘束を解かれたアズマは、ふうっと溜息をつく

「どうッスか、今のが『バインド』の能力ッス」

「なるほどね、普通の人相手なら、効果覿面だな」

 実は超加速状態に入ったアズマには、「バインド」の正体は分かっている。たぶんマリアもアズマが分かるよう、手加減したのだろう。ま、悪ふざけの範疇だ。

「技の名前」と「効果」を言いっぱなしで、何故そうなるのかを説明しない、というのは往年の少年漫画とか、質の悪いラノベで良く見る手口だが、相手に誤った認識、情報を与え、対策を困難にさせるという意味では有用かもな、と思うアズマ。

「そういえば、マリアは」

「え、なんスか?」

「素手で戦車をブチ壊すんだろ?」

「えーやだなぁ、アズマさん、ブチ壊したことはないッス」

「ただ単に、ブン殴って、裏返しにしただけですよぅ」

いや、一緒だって。

「えーっと、自分、何を隠そう、ギャラ〇ティカ・〇グナムが撃てるんスよ!」

ふーん、とコバリを見る、肩を竦めるコバリ。どうやら説明はしてくれないようだ。

「いや、だから何がどうなってそんな威力になんのか?って話だ」

「さあ?」頭をポリポリ掻くマリア

「自分、殴ったらそうなるってだけなんで」

「マリアの生体回路(サーキット)は」優しい眼差しでマリアを見るコバリ

「身体能力に全振り、みたいよ」

えへへぇ、と照れるマリア。いや、たぶん褒められているワケではないぞ!



 夕闇迫る、ジャイアプールの港。今日はいつにも増して警察、海上警備隊の姿がそこかしこに目立つ。

そんな中、フンフンと軽く鼻歌を歌いながら上機嫌に、堤防の上を軽やかに歩む少女。

夕闇に紛れ、容姿は良く分からないが、マキシ丈のワンピを纏う姿は小柄で華奢だ。

そんな彼女の歩む先に、海上警備隊ジャイアプール基地が見えてくる。

大型の護衛艦、補給艦に、海上哨戒艇などの小型船舶、潜水艇なども係留されている、極東地域最大の港湾基地だ。当然、基地の沿岸部は高い柵で2重に囲われており、おいそれと侵入できるものではない。

少女は柵の手前で立ち止まり、基地を眺める、と、

基地周囲を巡回警備していた女性警備隊員が近付いてきた。

「こんばんは、お嬢さん」念のため声掛けしてみたが、小柄で華奢な少女に相対して、女性警備隊員の口調も穏やかになる。

「こんばんは」

「もうすぐ日が暮れる、早くお家にお帰りなさい」

「はい、そうします」

「でも」

ジッと警備隊員の眼を覗き込む少女

「その前に、あの潜水艇、これからどこへ潜る予定なのか教えて」

係留されている、1隻の潜水艇を指差す。

「あれは」目をパチパチする警備隊員

「これからジャイアプール沖の大陸棚にあると推定されている、オケアノスの棲み処を探索に行く」

「そう」

「ありがとう」


夜も大分更けてきた。

基地周辺を巡回している、同じ遅番シフトの女性警備隊員が近付いてくる、そろそろ交替の時間だ。

「お疲れ様、こちら特に異常ナシ、そちらは」

「こちらも異常ナシ、です」

お互いに微笑み、軽く敬礼。

「ああ、そういえば」

「何?」

「夕方、女の子とお話してたみたいだけど、この辺の子?」

「え?」


「私、今日、巡回中は誰とも話してないけど?」

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