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コバリ・アオヤマの華麗なる黙示録(疾風編)  作者: マツモト・ユウイチ
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「キジを撃つ」

「ヒガンテ」

「はい、隊長」

「明日の小隊構成員のリストを」

明日、ゲンマは1個小隊を率いて、ジャイアプールへ教会警備隊の武装列車で移動する。

 今回の海獣駆除はもちろん海上警備隊が主体のオペレーションだが、地元警察と連携し、港湾周辺の警備、海上警備隊の支援などを行う予定だ。

 そして、コバリとアズマもその武装列車へ同乗して移動するので、両名の護衛という意味合いもある。

マリア・クシナダにも同乗を打診したらしいが、断られたとのこと。

理由は「歩いたほうが速い」から。

 ファイバザールから、ジャイアプールまで約300kmだが、それを歩いて、かつ平均時速200kmの武装列車より速い、そうだ。

 ゲンマは「世界最強ともなると、歩く、の定義も変わる、ということらしい」と肩を竦めていたが、もはやヒガンテには理解不能だ。

 そのマリア・クシナダは数日前から既にファイバザールに滞在しているらしいが、基本的に彼女の所在は最高軍事機密扱いなので、ゲンマには知らされていない。極東地域最大の教会警備隊の大隊トップ、という程度では問題外なのだ。おそらく「破軍のニフリス」にも詳細は知らされていないはずだ。もっとも彼女の場合は独自のルートで情報を得ているかもしれないが。

 今回の小隊構成員のリストを確認する。通常、各小隊の構成員は大体決まっているものだが、今回については特別だ。何故なら出動したいという志願者が殺到したからだ。まぁ、気持ちはわかる。誰しもが本物のマリア・クシナダをその目で直接見てみたいのだ。

 もちろん、ゲンマが指名すれば、誰も異など唱えない、構成員は即決するが、今回についてはヒガンテに一任してみた。

 各小隊から数名ずつ、まんべんなく選ばれたメンバー。無論、精鋭中の精鋭と言っても良いその顔ぶれだが、決定までいろいろ関係者と公式、非公式に協議したのだろうな、と思い微笑みそうになる。が、もちろん表面上はしかつめらしく確認する。

「よろしい。今のところ予定通り、明日は10時にここから出発、コバリ様、アズマ様と中央軍(セントラル・フォース)の情報担当官1名、同乗し、ジャイアプールへ向かう」

「よろしく頼む、ヒガンテ」

「ハッ」掌を相手に向ける最敬礼。

 今回は支援任務が主だが、何といっても稀人が3人、一堂に会する。そんな現場でゲンマ隊長に恥をかかせる訳にはいかない。気を引き締めるよう、隊員にも発破(ハッパ)をかけなくてはな、と思うヒガンテであった。



「起きろ、朝だ」ドスッ「ゲハッ!」

 脇腹にコバリの蹴り、で目覚める。昨晩はなんだかんだで遅くまで盛り上がり、結局コバリの部屋のソファーベッドで意識不明になったらしい。

 お風呂上りらしいコバリは下着姿で、頭にグルグルタオルを巻き、化粧台に腰掛け、鏡を見ながら、顔になんか化粧水的なモノをペチペチしている。

「うーん、今何時」目が良く見えない。ゴシゴシ。

「ビーフ味。なんちゃって」

「今日は、午前中に教会区長にご挨拶に行くんだよな」

「あら、良く覚えてたわね。今から30分後に朝食よ、それまでにお風呂と着替え、済ませて」

 時間に猶予がないのは分かった。フンッと起き上がるが、脇腹以外にも全身に得体の知れない痛みがある。

「イテテテテ…」

「あぁ、昨日、急にトップスピードの加速したからね」

そのうち慣れる、とコバリ

 ホントかよ、と思いながら時間がないのでシャワーのみでサッパリして、サッと着替える、まだ余裕だ。「あら、速いわね」とコバリがブラッシングした金髪をツインテに結っている。コバリの身支度が整うまでの間、ストレッチして体をほぐす。

「それにしても」昨晩の飲めや歌えやを思い出す。極東地域ではお馴染み、300年前の守護神を称える歌などニフリスとマレッサがアカペラで熱唱。コバリとアズマも負けじと「砂浜で」を二人で歌い上げる、皆、変なテンションになっていて意外とウケた。終いにはゲンマさえも天龍族伝統の舞を披露してくれた。さすが巫女、素晴らしいキレだった。

「首長は、単にハメ外したかっただけなのかな?」

「なんか私もそんな気がしてきたわ」


軽く朝ご飯を済ませ、お互い指差し呼称で身だしなみチェック。

 教会内の特別応接室にて、教会区長にご挨拶だ。区長はふっくらとした、にこやかな女性。やはりキシマのような男性の区長は極東では稀有らしい。

ご挨拶はもちろん、コバリにおまかせで、恙無く終了。

 さて、今日はこれからファイバザール観光だ、このままお出かけかと思ったら、一旦、コバリの部屋へ戻る。

「このままだと目立つからね」

「アズマはそれ、着けて」

小さめの角が付いた銀髪巻毛のカツラに、黒縁メガネ

ああ、なるほどね、変装か、と鏡を見ながらカツラを装着。メガネはどうやら特殊な仕様みたいでレンズ越しでは両目とも虹彩が黒く見える。念のため、カツラの前髪をチョイチョイと下ろし目を隠し気味に調整。

「アンタの肌の色なら、ま、ファイバザールなら調整不要かな」

コバリはツインテをクルクル巻いて、大きめニット帽をガポッと被り格納。

「あれ?」

「何?」

「いや、おまえ肌、どした?」

いつの間にやら、コバリの肌の色が小麦色に変わっている。

「TPOに合わせて変化するのよ」フッと振りむくコバリの右目も、左目と同じ鳶色になっている。

「ああ」右目をパチパチさせるコバリ

「これはカラコン」


 教会からは、参拝者にまぎれ徒歩で外へ、コバリは昨日も着ていたアオザイっぽい服で地元感を醸し出している。アズマも、この辺で良く見るよね、という当たり障りない上下で、誰からも注目されず、最寄りの幹線道路の停留所へ。タクシーはさすがに距離制運賃だが、バスは市内なら一律料金。パスを買えば乗り放題だ。もちろん、通信機にはすでに電子パスが入っている。旅行者は1日券や1週券を使うが、市民はIDがチケット代わりに使用でき、お得な年パスも購入できる。購入、とはいえその金額分税金が控除される制度があり、納税している市民は実質無料だ。

ちなみにコバリとアズマのパスは、VIP用の永久フリーパス。

このパスはタクシーも乗り放題になるが、縁起物?ということで、バスで移動してみる。

 停留所の路線図を見る、さすがに「教会前」ということで、ここからはすごい数の路線が伸びている。

マレッサ曰く、ファイバザールに住んでいると「各系統のバスを巧みに乗り継ぎ目的地まで最短で行くスキル」が手に入るそうだ。

観光客は、観光路線・右回か左回に乗れば、ま、間違いないとのこと。

 バスは次から次へと流れるようにやって来る、観光路線も10分に1本は来るので、さほど待たずに乗車。朝のラッシュ時も終わり車内は空いているので、コバリと並んで着席する。

「基本的には、史跡を巡るわね」おう、特に異論は無い。

「まずは城郭跡、このエリアには極東地域の議会や庁舎が集中している、昔からの政治中心ね」「普段、ニフリスは大体ここにいる」

「もうちょっと東、第三堡塁跡には広場があって、露店もたくさん出ている、一番賑わっているかも」

 車内の乗客は概ね観光客らしく、肌の色や体格など様々だ。アズマと同様、ハンディサイズの観光地図を楽しそうに眺め、話も弾んでいる。


 まずは「城郭跡」大体の観光客は、お城の尖塔に上り、ファイバザールを一望する景色を楽しむそうだが、高いところからの眺めは別にいいかな、と今回はスルー。歴史ある荘厳なお城の石造建築と、超近代的な極東地域中央庁舎などを駆け足で見学。

 次の「第三堡塁跡」では、広場の露店で食べ歩きを満喫する。ちなみに支払いは現金

「そういや、俺、カネ持ってねぇや」と今更ながら気付くアズマ。

こっちではお小遣いくれるヒト、いないしな!

「ハイ、2本で300ね」「毎度あり、お嬢さん」コバリが鶏の串焼き買ってくれる。

キレイなお嬢さんにはオマケ、と肉団子的な串もくれる陽気な店主。

シンプル塩味だが、軟骨入りで美味い、コリコリ。

 ちなみに現金は全て紙幣、貨幣は100年以上前に廃止された。重くて嵩張り、持ち運びに不便、原材料のコストも高い貨幣をトマス博士が放置するワケは無い。

「紙幣とか言ってるけど」

「今の材質はプラスチック」パシンッと一番小額紙幣の「1リマ」を指で弾くコバリ

「ああ、香港ドルとかユーロ、みたいな?」

「そうね。ま、もっとも主成分はセルロースだから、広義の紙と言ってもいいかも」

 文無しじゃあなんだな、とコバリが1000リマ札3枚、アズマに渡す。

やった!お小遣い貰った、と喜ぶアズマ。

ライラへのお土産でも買おうかな、何がいいかな、と鶏の串を賞味しながら考える。

 と、ツンツンと(つつ)いてくるコバリ、指差す先には、キンキンに冷えた麦の汁のスタンド。

やはり観光地では、昼から冷えた麦の汁、だな! 


「うーん」

「どした?」

「ちょっとキジ撃ちに行ってくるわ」

「そこはせめて、お花を摘みに、じゃないか?」

「ちょっと時間かかるかも、ま、この辺ウロウロしてて」

「あいよ」

 ここは「第十四堡塁跡」、第三堡塁同様、人気観光スポットなので、お手洗いなどの施設も充実しているが、平日昼間だがソコソコの人出で賑わっているし、地図を確認するとお手洗いまでちょっと距離がある。

 城壁前の広場には、ツアーガイドらしき女性が、巻角の老若男女の一団を引き連れていたり、学生さんらしい一団もそこかしこに見かけられる。

 昨日、上空からも見た、所々残る星型要塞の先端部分、見上げる石垣は野面積、約30m程度の高さだろうか、保存状態は良好で三百年前の威容をほぼ保っている。本来は城壁をぐるり囲って堀があったようだが、すでに埋め立てられており、城壁の至近まで行って見学可能だ。

足下を見ると、御堀跡がわかるように、周囲と色違い、薄い水色のタイルが敷き詰められている。そのタイルの縁をブラブラ歩きながら、城門に近付く。

 と目の前に、観光地図を片手にキョロキョロ周囲を見回したり、城壁を見上げたりしながらフラフラ歩いてくる色白で華奢なメガネ少女。もう見た目、観光客丸出しだ。なんか危なっかしいなぁ、と思いながらちょっと気にしていると、あっ、と石畳のへりに足を取られてよろめく、危ない、とスッと加速モードに入る、この距離なら10倍程度でも余裕。少し重力をいじって、ふんわりと少女を抱きとめ、加速解除。ゆっくりと抱き起こす。「えっ、え?」と、キョドる少女。

「大丈夫?」そりゃいきなり知らない男に抱きとめられたらビックリするよね。

怖がらせない様に、努めて優しく微笑みかける。

「あ、はい、すいません」アタフタと身繕いし、「ありがとうございます」ペコリと頭を下げる。

「地図を見ながら歩くと危ないよ」

「あ、はい、そうですね、気を付けます」ちょっとハニカミながら、赤フレームの眼鏡の位置をチョイチョイっと直し、上目遣いでこちらを見る瞳は、両眼ともクリアなコバルトグリーン。

「お兄さんは、この近所の方なんですか?」

初めて言われたフレーズにちょっとフリーズも、そういえば只今絶賛変装中でした、と思い出す。

「いや、俺も昨日初めてファイバザールに来た、観光客だよ」

「へー、そうなんスか!」パァッと笑顔になる少女。仲間だ!と思われたかな。

「君、1人で来たわけじゃないよね? お友達は?」心配になって訊いてみる。

「ハイ、知り合いと待ち合わせッス!」

あーそれで、キョロキョロしてたのかぁ。

「西門?前で待ち合わせなんスけど」

あーここ、南門前だわ、地図を見ながら確認

「あそこ、ぐるっと回って向う側、かな」

「ホントだ、あざっす」

ところで口調が後輩後輩してきた。可憐な見た目とギャップがある。嫌いじゃないけど。

「俺も一緒に行くよ」まだちょっと心配。

「あざっす、でも」

「お兄さんはここへは1人で来たんスか?お連れの方とかは?」

気遣いは無用だぜ、メガネ美少女。

「ツレはいるけど、今、キジ撃ちに行ってる」

「え!?キジがいるんスか?」 

ああ、そうみたいだよ、とブラブラ歩を進める。コバリには電話すりゃいいや。

「ツレって、ひょっとして恋人ッスか?」

「いや、性別は女だが、恋人ではないし、友達でもないな」

「えぇ、じゃあ何なんスか?」

うーん、何なんだろうね。え、逆に?問われてるんスか、自分!

戸惑う少女を、改めてまじまじと見る。身長は160cm弱、コバリよりは少し小柄で何より細い、ちゃんとゴハン食べてるのか、ちょっと心配。

 ハイウェストで赤のチェック柄、ミモレ丈のプリーツスカートに、ちょっとしっかりした生地のフリル袖カットソーに、編み上げブーツ。

 髪はプラチナブロンドのショートボブ、前髪は少し眉にかかる斜めバング。白い肌に通った鼻筋。ほんのり桜色の頬。少し大きめサイズの赤縁ウェリントン型メガネをかけているが、俺のような小細工メガネではないな、ってあたりまえか。と思うアズマ。

 大きめニット帽をかぶっているので有角かどうかはわからないが、いずれにしろ、色白金髪碧眼は概ね北方系民族と考えても良いらしい。

 首都へお出かけということで、オシャレしてきたんだろうなぁ、とほのぼのしながら、ついついじっと見てしまった、少女はちょっとテレながら、

あれ、私、なんか変ッスか?とスカートをつまみ、キョロキョロ自分の姿を確認する。

「いや、そんなことはない、とても可愛いよ」ごく素直な感想だ。お世辞ヌキで可愛い。

えへへぇ、そッスかねぇ、とテレテレする少女。

 堡塁の先端をぐるりと回りこむと、西門が見えてくる。しばらく進むと少女が待ち合わせ相手を見付けたようで、軽く跳ねながら大きく両手を振る

「見付けたッス!」

「そっか、良かったな」

 お相手はどうやら男性で、赤褐色の肌、額に小さめのツノ、周囲から頭ひとつ大きいガッシリ体格の西方系民族だ。柔らかく微笑み少女に小さく手を振っている。

「お手数をおかけしたッス」ペコリとお辞儀する少女

「礼には及ばない、楽しんできな」

小走りで去っていく少女の後姿をにこやかに見送る。


さて、

と、広場を何気ない様子で見渡すアズマ。

懸案事項を処理しよう。

先程から、左手後方、広場の端を俯き加減でゆっくりと歩む男性がいる。

 それだけでは問題ないが、気がかりなのは、その後方からジリジリ制服の婦警さんが2名、距離を詰めてきていることだ。

 グレーのスラックスにシンプルなシャツ、一見目立たない格好の男だが、注意して見ると周囲を警戒しているのが分かる。

 男の周囲から人気が無くなったタイミングで、スッと警官が一気に距離を詰める。誰何しているようだ。男は大人しく質問に受け答えしている。

と、油断した瞬間、男がドッと加速し、一瞬で移動、20mほど離れていたご婦人を突き飛ばす。

 慌てて警官がご婦人に駆け寄る、その隙に男は方向転換、再度加速し逃走を図る。人混みにまぎれ、銃を使わせない気だ。

加速はおそらく20倍程度、一般の警官では動きを追いきれない。

んのヤロウ!と一気に加速モードへ入るアズマ、状況は良くわからんが傷害の現行犯だ、フル加速すれば余裕で追い着く。

「…ッツ!イテッ!」しかしながら、昨日のダメージの名残で全身に痛みが走り、ちょっと発動が遅れる。

と、突然、

ドンッと鈍い音が響く。

見ると、逃走を図っていた男が、地面にうつ伏せに寝転んでいる。

もっと正確に言うなら、地面に叩きつけられて気絶しているようだ。

特にその両脚は、遠目にも分かるほど無残な状態で、「脚の形」では無くなっている。

警官が超電磁銃(レールガン)を打ち込んだんだろう、とか周りは推測しているが、超加速状態に入りかけていたアズマには、そうではないことは分かっている。

弾丸の類は一切着弾していない。

例えるなら、透明で巨大な拳で、一気に地面へ叩きつけられたよう。

うーんわからん、

分からないことは考えてもしょうがないので、考えるのを止めた。

アズマは無駄なエネルギィは消費しないのだ。

 あのメガネ少女のほうを見ると、カレシ?がしっかりと前に立ちガード、少女はその彼の後ろで何事ッスか?とキョロキョロしている。ま、あの彼が一緒なら安心だな。


通信機がブルッと震える

『何?』頭の中ににコバリの声が響く

『何の騒ぎ?』

仁王立ちしているコバリの姿が遠くに見える、こちらへ、と手招きしている。

そうだな、君子危うきに、ってヤツだ。

 応援の警察官も駆けつけ男は完全に包囲されている。もう逃走の恐れはないだろう。

そして広場へ警察車両がけたたましいサイレンとともに、次々到着する。

気持ち足早になってコバリと合流し、そそくさとその場から立ち去る。


ここからはタクシーで移動

「何かあっても首を突っ込むなって、言ったでしょ」

「いや、突っ込んでねぇし」

「でも」

「突っ込もうとした、わよね」

すっごい至近距離で、睨まれる。

ハイ、すいませんでした…

「ま、いいわ」

「帰ったら着替えて、今日は首長主催の晩餐に出席、で明日はいよいよ」

「ジャイアプールか」

マリア・クシナダがお待ちかねだ。


それにしても、と珍しく考え込むアズマ。

あのメガネ少女は何者だったのか


彼女の言葉を思い出す

『え!?キジがいるんスか?』


残念ながら、この世界には、昔も今も「キジ」はいない。





「明日は朝食後、9時にはチェックアウトします」

「そう、手続きよろしくね」


「既にご連絡の通り、私はその後、教会警備隊本部より特別武装列車でジャイアプールへ移動します。」

「そ、気を付けてね」

「予定通りならば10時出発、11時45分にジャイアプール中央駅に到着します」

「私のほうが先に着くから、お客様が来る前に、お部屋の掃除でもしようかしら」

「それはジャイアプールの担当が手配しますので…」

「あらそう?」


「ところで」

「今日の第十四堡塁では、やりすぎだったのでは?」

「そうね、ちょっと頭に血が(のぼ)っちゃった」

私もまだまだねぇ、と溜息をつく。少女。

「ま、私がやったことだなんて誰にもわからないしね!」

「いや、状況を聞けば、分かる人には分かります」

「んー、でも正式な報告書には載らないでしょ?」

「まぁ、それはそうなんですが」

「ご婦人の怪我は?」

「両膝の擦過傷程度で、他に異常は認められませんでしたが、念のため検査入院していただいているそうです」

「…そう、怖かったでしょうね」

「専門家が対応していますので、大丈夫でしょう」



「それにしても」

傍らに立つ、赤褐色の肌、額に小さめのツノ、ガッシリした西方系民族、の男性を見上げる少女。

 髪はプラチナブロンドのショートボブ、前髪は少し眉にかかる斜めバング。白い肌に通った鼻筋。ほんのり桜色の頬。少し大きめサイズの赤縁ウェリントン型メガネ。

左の瞳はクリアなコバルトグリーン。

そして右の瞳は、深く濃い紅色。虹彩異色。

「明日、楽しみね」


そして現世界最強、マリア・クシナダはニッコリと微笑んだ。






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