表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
コバリ・アオヤマの華麗なる黙示録(疾風編)  作者: マツモト・ユウイチ
14/54

大物は遅れて来る

身長8.4メートル、とかではないです。

 本日の晩御飯は教会施設内のレストランでカジュアルに、ということだが、さすがに運動着ではなぁ、と一旦部屋へ戻り、シャワーを浴びて着替える。

 本日2回目のお着替え、濃紺の膝丈ミニスカと少し大人なオシャレワンピのコバリと2階のレストランへ、レストランは宿泊施設の外観同様、白基調のインテリアだが、各テーブルには鮮やかな赤や緑、青のテーブルクロスが掛けられ室内に彩を添えている。

当然、コバリとアズマは個室へ案内されるが、ゲンマとマレッサが既に個室入口にて待機している。

「ごめんなさい、お待たせしたわね」

只今、18時3分過ぎ、もちろん約束の18時からわざと少し遅れての登場だ。そういう慣例はこちらでも同様のようだ。

落ち着いた内装の個室には、中心に円形卓、席は5席セッティングされている。

奥からコバリ、アズマ、ゲンマ、マレッサと腰掛け、コバリの右隣は空席。

「後ほどファイバザールの観光担当の方がいらっしゃるそうです」とゲンマ

「お先にいただきましょう」とマレッサ、入口にて待機していたウェイトレスさんを呼ぶ。オーダーはマレッサにおまかせだ。

どなたがいらっしゃるの? いえ、私も詳しいことは…とボソボソしゃべるコバリとゲンマ。

 飲み物はゲンマがウェイトレスさんにリストを見ながらオーダーする。と、コバリがチラリとアズマに目配せして、ネックレスの紅い勾玉型通信機をコンコンと指で軽くはじく。

頭の中に、見た目はへの字口で黙っているコバリの声が響く。

『教会敷地内とはいえ、ゲンマがこんな閉鎖空間で同席する人の詳細を把握していない筈は無い』

『もちろん、危険なことは無いとは思うけど、きっと何かある』

うわーなんだろう、と思いながらも表面上はシレッと、マレッサが注いでくれた金色の麦汁が入ったコップを受け取る。

「それでは、皆様、本日はお疲れさまでした」と音頭をとるコバリ「カンパーイ!」

一気にグラスを空ける、キンキンに冷えた麦汁、最高かよ。運動の後だからまた格別だ。

 全員いけるクチらしく、もう1杯、とグラスに注いだり注がれたり、とかしてると、料理が次々と運ばれてくる。

「石机地区では羊を召し上がっていらしたでしょうし、お魚はジャイアプールで堪能されるでしょうから、本日は豚、鶏などをメインに、北方地域のお料理をチョイスしてみました」

 円卓上に肉、野菜などの大皿料理が並べられる。各自、好きな物を取り分けていただく、なるほどカジュアルスタイルだ。コバリは早速、何かのお肉の煮込みをウマウマと賞味している、お気に入りらしい。ちゃんとお野菜も食べなさい、とアズマが山盛り蒸し野菜のサラダを取り分ける。お母さんかよ、と言いつつも、野菜もパクパク食べるコバリ。アズマはマレッサのオススメ、鶏のローストをいただく。うーん、身はジューシーで、皮はパリッと香ばしい。

 喉も潤ったところで、ゲンマは飲み物を麦の汁から微発泡のブドウの飲み物へ変更。この地方の特産です、とのこと。

「それにしても」マレッサが本日の測定について、感慨深げに語る

「やはり、稀人というのは、何事においても、別格、なんですね」

「うーん」腕組みするコバリ

「結局、上限値の見極めが出来ていないわね」どうしようかなぁ、モグモグ「ホント、美味しいわね、この鶏」

「お役に立てず、申し訳ございません」「いや、あなたには何の落度も無いわ、マレッサ」

「テンマに診てもらった時に、北の紅天龍と同等の生体回路(サーキット)出力と言われてたのだけど、ちょっと甘く見てたわ」

 一瞬、ギョッとするマレッサとゲンマ、内心では「ギャー、ホントかよ!」と叫んでいる。端的に言うと巨大戦艦のエンジンを1人用ボートにつけているようなものだ。規格外もいいところだ。

「…それは」努めて平静を装うマレッサ、2人とも場数は踏んでいるので表向き取り乱したりはしない。

「おそらく、人間サイズでは成層圏外まで達してしまうのでは?」

うーん、やっぱりそうかぁ、とグイッとグラスを空けるコバリ。

 えぇ、俺ってヘタ打つと宇宙まで飛んでっちゃうの? やだなぁと思うアズマだが、どうせコバリに何か指示されたら、やらざるを得ないので、考えるのを止めた。

「でも、ということは…」何かに気付くマレッサ「トマス博士の論文で全球測位システムについて読んだことがあるのですが…」コバリと目が合う

「そうね、良く勉強しているわね、マレッサ」皆まで言うな、と軽く右手を挙げ制するコバリ

「近々この件含め、トマス博士といろいろお話するけど、あなたも一緒にどう?」

「もし同席が許されるのでしたら、何を差し置いても伺います!」

フンフンッと鼻息荒く前のめりになるマレッサ。

 せっかく、知的大人美人を装っていたのに台無しにならないかと、内心ハラハラするゲンマだが、余計なことは口にしない。

 実はゲンマとマレッサは高等学校の同級生だ。総代はゲンマだったが、筆記試験ではマレッサが1位を他人に譲ったことは無い。「俊英」と呼ばれ、技術研究所でも一目置かれる彼女だが、トマス博士のこととなると、ちょっとアレな感じになるのは昔からだ。

 それにしても、その「俊英」マレッサに対して、遥か高みから語るコバリ・アオヤマ。彼女が顕現したのは、ほんの7か月前、実年齢も17歳と聞いている。将来、この世界を統べるのは、やはりこのような図抜けた存在なのだろう。ありがたいことだ、と考えるゲンマ。コバリ・アオヤマやマリア・クシナダ、彼女たちが存在してくれているおかげで、私はまだまだ未熟で、研鑽を積まなくてはならないと痛感できる。

 そんなゲンマの隣でアズマは、既に考えるのを止めているので、このお肉の煮込み、白米にかけて食べたいなぁ。モグモグ。とお食事堪能中である。一方、ちょっとハイテンションになったマレッサは、今日の「加速」の測定について、コバリと楽しそうに語り合っている。

 すると、急にゲンマがスッと立ち上がり、扉まで素早く移動する。何?何?と皆が見守る中、扉がコンコンとノックされる。ああ、遅れてくるって言ってた方かな、とアズマが見ていると、ゲンマより頭一つ背が高い女性が堂々と個室に入ってきた。肌は赤味を帯びた褐色、巻角だが、先端が捻じれ前方に突き出している。つややかな黒髪はストレートロング、黒曜石のような瞳、シンプルだが品の良い白いロングドレスに黒のローヒール。地位の高い女性だな、と一目で分かる存在感の強さ。

 ガラ〇の仮面で、舞台上の月〇先生を見た観客が「なんて存在感だ…」と感嘆するけど、こんな感じかな、と、どうでもいいことをアズマが考えていると、

いつの間にかコバリがその女性の前まで移動し、優雅に会釈する

「お久しぶりです」

「お久しぶりねコバリ、相変わらず可愛いわね」

「おそれいります」

マレッサもとっくに席を立ち、会釈した後、部屋の隅に控えている。さすがに空気を読んで、アズマも立ち上がり、コバリに続き女性に会釈する。

「はじめまして、アズマ」

「私はニフリス・サンゲ・サヴァイヴァーニ、この極東地域の首長です」



上空からゆっくりと下降し、こちらを見上げにこやかに待機しているゲンマと合流する。

「飛びすぎましたか」

スンマセン、となんか謝っちゃうアズマ

いえいえ、と微笑むゲンマ

「でも、高高度を飛ぶ際には、それなりの装備を備えてからにしましょう」

並んでゆっくりと下降する。

 途中、ファイバザールの街並みを上空から眺める。街中に大きい星型のようなラインが確認できるが、たぶん大戦時の城塞跡だろう。五稜郭っぽいな、いや、エルヴァスかな、と思うアズマ。

無事、ドーム天井からフィールドへ着地。ヒガンテがゲンマとアズマに頭を下げる

「お疲れ様です」

「残念ながら、あまり役には立てなかったわ」フッと軽く溜息をつくゲンマ

『アズマ、まだイケそうだった?』とブースからコバリ

「うーん、感覚的にはまだ飛べそうかな。石机地区であった()()()感じは皆無だ」

『超高高度に対応する装備が今、ここには無い。飛ぶのはここまで』

『次は加速、を見てみよう』

ゲンマが目配せすると、ヒガンテが頷く。

「こちらのヒガンテ・オグロは」

「私の部隊では、最も()()、隊員です」

私も多少、加速しますがその比ではありません、と謙遜するゲンマ

イヤイヤイヤ、そんなことはないですよ、とヒガンテは思うが、もちろん余計な事は言わない。

『これからやるのは』

『ヒガンテに打ち込んでもらって、避ける、それだけよ』とコバリ

簡単に言ってくれるぜコノ野郎。と思うアズマだが、ま、やるしかない。

「よろしくお願いします」ペコリとお辞儀する

「こちらこそよろしくお願いします」ペコリとヒガンテ

見た目と違って、とても良い人そうだな、と思うアズマだが、上背が2m近い筋骨隆々のヒガンテの正面に立つと、プレッシャー半端ない。

「それでは、まずは10倍加速でいきます」

これはゲンマとの前打合せ通り、この程度なら避けられるだろうとの判断だ。

ヒガンテがフッと動く、すぐに加速状態へ、右のストレートをアゴに薄く当てるぐらいの感覚で繰り出す。もちろん常人にはとても避けられない速さ。

アズマは動かない、あ、当たる、と思った瞬間。スゥーッとアズマの頭が横にスライド。最小限の動きで打撃を回避する。

『まだまだ余裕でしょ?』

「そうだな」ま、まだウォーミングアップなんだろ?とアズマ

 ゲンマも加速状態に入り、注視していたが、アズマはわざとギリギリまで回避行動を起こさなかった。余裕綽々ということだ。ヒガンテに軍人だけが分かる手信号で「手加減必要無し」と告げる。

頷くヒガンテ「次は30倍程度の加速に入ります」

 おねがいします!と構えるアズマに、もはや文字通り、目にも留まらぬ速さのパンチを繰り出すが、先程と同様、ヒットする寸前で最小限の動きだけで回避。

『まだ余裕でしょ?』

「そうだな」さすがに先程より速いけど、まだ余裕かな?

「ヒガンテは最高60倍加速まで上げられます」とゲンマ

『では、最高速度で』

『アズマも全力で回避してみて』

 それでは、と相対して構える2人、ヒガンテは生体回路(サーキット)をフル稼働させるため、集中を高める。フゥーッと息を吐き

「それではいきます」と、まさに一瞬消えたかと思わせる動きで渾身の右を打つ。

 加速状態のゲンマも目視で追いきれない。一方、超加速状態のヒガンテには、世界全てが止まっているように見えている。

そんななか、拳が、アズマに、ヒットする! と思った瞬間

アズマの姿が視界から消える。

え!と周囲をキョロキョロするが、発見できない。

と、次の瞬間。後ろから肩をポンッと叩かれる。振り返るとアズマが背後に、特になんということもなさそうに、ごく普通に立っていた。

「全く見えませんでした」お手上げのポーズをするヒガンテ「素晴らしい」

イヤ、そんな、とポリポリ頭をかくアズマ

 ゲンマも自身最大の加速状態に入っていたが、アズマの移動は全く見きれなかった。やはり凄まじいな、と素直に感嘆する。

『60倍以上は確定だけど』

『それ以上、どれぐらいなのか、物差しとなる人材も、測れる機器も無い』

やはり中央(セントラル)で再度測定するしかないわね、とコバリ

えーまたやんの?とゲンナリするアズマ

ゲンマはポンポンとヒガンテの肩を軽く叩き労う。

「まぁ、気にすることは無い」微笑むゲンマ

「いえ」至近距離のゲンマの微笑に、思わず相好が崩れそうになるが、鋼の意思で無表情をキープ

「大変勉強になりました」

今後、更に研鑽を重ねなくてはな、と気を引き締めるヒガンテであった。



「やはり、凄いわね、アズマ」

さすが稀人ね。と本日の生体回路(サーキット)確認の経緯を聞いてウンウンと頷くニフリス。

 コバリの右隣に腰掛け、まずは改めて乾杯した後、主にゲンマ、マレッサから、かいつまんで報告を聞き、コバリが時折注釈を入れる。

「ところで」と、スンッとした表情でコバリ「観光担当の方、が来られるのではなかったのかしら? ゲンマ」ちょっとした意地悪モードだ。

何とも言えない表情のゲンマに代わり、ニフリス

「あら、私はファイバザールの観光協会名誉会長よ」

「いえ、首長は本日、不在と伺っていたもので」

「予定は変わるものなのよ、コバリ」

 フッと口の端を上げ、てんぽこきらなぁ、と軽くディスるコバリ。おそらく「翻訳」の生体回路(サーキット)もN潟弁には対応していない、ということなんだろう。と思うアズマ。

「明日は公式な晩餐を予定しているけど、区長や次官が同席するので、よろしくね、コバリ、アズマ」

なるほど、区長やら次官やらがいないところで話がしたかったんですかね、首長

と思うアズマだが、もちろん余計な口は挟まない。

こういう事はコバリにおまかせだ。

「明日は、午前中、教会の区長に挨拶してから、午後は観光の予定です」

「そう?晩餐は19時から予定しているので、18時には教会へ戻ってね」

「承知致しました」

そうだ、護衛は?とゲンマを見るニフリスだが、「いや」とゲンマを制しコバリ。

「護衛は不要よ、目立つ」「いや、あなたたち普通に目立つじゃない」「その点については心配ご無用です、首長」うーん、まぁあなたがそう言うんなら、とニフリス。

そういえば、首長って、大統領みたいなもんだとコバリから聞いていたが、教会敷地内とはいえ、ここへは、護衛とか無しに来たのかな?

と、ちょっと気になるアズマ。ま、ゲンマとかいるし、いいのかな。

あ、そっか、と察しの良いコバリ

「こちらのニフリス首長は」

「東の守護神、ニフリス・アンブラ・イリスの直系の子孫、正統な後継者よ」

ちなみに呼び名には時々「破軍」の冠がつくわ


「ああ、でも」

「血筋だけで、この地位にいるワケではないのよ」

パチッとウィンクする、破軍のニフリス


おぉ、ここにも生きる伝説みたいなヒトが、と思うアズマ。

教会敷地内をちょっとそこまで、なら護衛とか要らなそうだ。

「東の守護神」に「龍の巫女」か、そういえば「金色(こんじき)の聖女」だったなコイツ

とコバリを見るが、なんかもう情報が飽和状態なので、考えるのを止めた。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ