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コバリ・アオヤマの華麗なる黙示録(疾風編)  作者: マツモト・ユウイチ
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飛ぶ男

タイトル、内容に沿った一般名詞の組み合わせ。なんの問題もないですね。

 森林地帯を抜けると、次第に窓外の景色が変化してくる。牧場や家などが見られるようになり、建造物の密度が高くなってくるのが分かる。

「そろそろね」と窓外を眺めながら、コバリ「ファイバザール周辺には、大戦時に街を囲っていた防護壁の遺跡があるのだけれど、ここからは見えないわね」

 見えてきた町並みは近代的な感じで、概ね似たような方形の建屋が並ぶ

「ま、この辺は新興住宅地だしね」

 もうしばらく行った処で、列車はトンネルへ潜り、中央駅までは地下を行く。


 滑るようにホームに入線する。見える範囲でもホームは10以上、さすがに石机地区の駅とは比べ物にならない規模だ。列車が停止したのとほぼ同時に、扉がノックされる。

「どうぞ」とコバリ、スッと扉が開くと、外に立つゲンマが軽く会釈する。

「ありがとう、快適な旅でした」とコバリが礼を述べながら通路へ。その後ろで

「列車のご旅行、いかがでしたか?」ゲンマが微笑みながらアズマに問いかける

「こちらでは、初めての長距離移動でしたが、非常に快適でした。ありがとうございます」

お礼にはおよびませんよ、と言いつつ、アズマを車外へ誘導するゲンマ。スムーズな荷重移動に体捌き、何気ない動きにもムダが無い。

 平日の昼過ぎだが、駅には人が多い、巻角褐色肌のご婦人やお嬢さん方は石机地区と同様、大勢いるが、肌の色が薄い人、ツノがない人、中には普通に北欧の人?モンゴルの人?というような外見の方々もおり、多様な人種が行き来する。

カルマを先頭にコバリ、アズマ、殿(しんがり)はゲンマでホームを歩いていく。

すると「コバリ様?」「コバリ・アオヤマじゃない?」と周囲がザワついているのがわかる。あぁ、やっぱり有名人なんだな、コバリ、と思っていると。

「後ろはゲンマ・ビエント?」「ゲンマ様だわ」という声も耳に入る。やはり「龍の巫女」も有名人らしい。


「龍の巫女は」

3本目のボトルを開け、グラスに注ぐコバリ。なんと、発泡する白く濁ったお米の飲み物だ。

「大戦前までは、基本的に北方の領地より出ることはなかった」

「そりゃ、支配階級だったろうしな」

「でも、大戦を機に状況が変わった」

「どんなふうに?」

「北大陸全域の政策は、聖イリヤ教会を中心に、中央(セントラル)が担うことになり、天龍族も当然、そのシステムに組み込まれた」

「紅天龍からも、世界を救った聖イリヤへの感謝を忘れるな、と直々の指示があった」

「つまり、龍に重要な決定事項のご託宣を伺う役目は実質不要になった、ということだ」

「ああ、もちろん」グラスから、チビチビ()るコバリ。

「天龍族が龍や巫女を軽んじるようなことは無い、ま、近代の皇族的な感じかな」

「みんな紅天龍大好きだしな!」


「さて、ここで」

多様生体回路(マルチ・サーキット)を持つ巫女は、言うまでもなく有能だ」

天龍族の中央(セントラル)における地位や発言力を維持、向上させるためにも、北の辺境より、中央で活動させたほうが良い、と考えるだろ?


ゲンマ・ビエントは現在、極東地域の教会警備隊、大隊の統括らしい。

個の能力で考えると、空を飛び、「加速」も使えるとなれば、戦闘面では最強クラスだろう。

しばらく現場で経験を積み、その後は極東から中央(セントラル)へ、

「彼女は若手有望株、一番の出世頭だ」

「天龍族以外にも人気は高い、ま、順調に出世街道を歩んで行くんじゃない」

目をスッと細め、ニヤニヤしながら、グイッとお米の飲み物を呷るコバリ

「空を飛び、加速するか…」

あれ、なんか嫌な予感がするな、と思うアズマだが、あえて気付かないフリをして、己を誤魔化す。だが大体こういう場合の予感は的中する。


 人々の注目を集めながらも、全く物怖じせず、金髪のツインテを靡かせ駅構内を闊歩するコバリ。さすがに慣れたものだ。やはりなんだかんだ言っても、見た目が良い、というのは注目を集める立場の人間には重要だな、と思うアズマ。

 前後のカルマとゲンマの「近付くなオーラ」が凄いので人混みでも移動はスムーズだ。遠巻きに交通警備隊も警戒しているのが分かる。

 一般の出入口とは異なる、人気の無い特別感がある出口へ。そこには黒くて長くて大きい流線型の車両が待機している。カルマが軽く触れると、側面の扉がスライドして開く。

「おお、リムジンだ」

「いや」車両に乗り込み、ゆったりとした黒革のシートへ流れるように腰掛ける「防弾軽装甲車だな」コンコンと窓を叩くコバリ。

 アズマはコバリの隣のシートへ、カルマは助手席に乗り込み、ゲンマはコバリの対面のシートへ腰掛け、スライドドアを閉める。

「では出発します」

 スムーズに動き出し、両側が壁に囲われたレーンを進む。グーッとカーブを曲がると、他の車両も往来する幹線道路へ合流。ゲンマが今後の予定など説明してくれる。

「今から20分ほどで教会本部です」

一旦、教会併設の宿泊施設に入り、その後、夕食までの間、教会施設の見学という手筈だ。


「ファイバザールの教会は」

「大戦後すぐに建立された、石机地区の教会より歴史のある建物だ。一見の価値アリね」

「併設施設は図書館、学校だけど高等部の更に上、大学、大学院もある」

「そして」

「教会警備隊の養成学校も併設されている」

楽しみねぇ。とニヨニヨするコバリ。…そうだな、楽しみだなぁ。と嫌な予感的中かなと思うアズマ。


 コバリとアズマを乗せた車両は、当然、特殊仕様の公用車なので、専用レーンを走り、トラックやバスなどを流れるように追い抜いて行く。

 車窓から時折、防護壁の向うに見える街並みは、昔ながらの石造りの屋敷が連なるエリアもあれば、近代的なビルが林立するエリアも遠くに見える。石机地区と比べるまでもなく大都会だ。

 ほどなく、車の速度が落ちる。幹線道路からターミナルで一旦停止。通常ならここから先はクルマ移動不可なのだが、公用車は特別だ。ゆったりとした道幅の教会へ続く道路を、人が走る程度の速度で進む。クルマはこの1台しか走っていないが、教会施設が集中するこのエリアではさほど珍しいものでは無い様で、道行く人々もあまり気にしていないようだ。

 鮮やかな植物紋様が描かれた装飾タイルにて彩られた石造りの門をくぐると、教会敷地内だ。正面に歴史ある石造りの教会、その脇道へ進み、裏手にある教会宿泊施設へと到着する。パッと見で10階はありそうな立派な建屋だ。車寄せに滑らかに停車しゲンマ、アズマ、コバリと降車する。カルマはコバリとアズマの手荷物を宿泊施設の方へ預けてくれている。

 教会宿泊施設という語感からは想像できないような、洒落たエントランスに入ると、巻角褐色肌の、空色の襟無しツーピースを着こなし、スラリと立って我々をお迎えしてくれるご婦人方。

教会関係者というよりコンシェルジュと呼んだほうが相応しい。

「お待ちしておりました、コバリ様、アズマ様」

「しばらくお世話になります、よろしくお願いするわね」


 カルマ、ゲンマは下のロビーで待機。コバリとアズマはコンシェルジュ?に案内され、透明なチューブ状のエレベーターで上へ。眼下に教会、その向うに学校、図書館らしい建屋が見える、その向うにはプールやグラウンド、なにか大きなドーム状の建造物もある。

 コバリとはもちろん、別々の部屋だが、送ってもらったキャリーバッグがコバリの部屋にあるので、一旦コバリの部屋に集合する。

 え、ここに1人で泊まるの?と小市民には気が引けるほどの部屋だが、何人掛けだよという円形ソファに腰掛け、ゆったりとお茶を嗜むコバリ。

衣装の類は既にキャリーバッグからクローゼットに整理され、キチンと掛けられている。

 まずはアズマもソファに腰掛け、お茶をいただく。詳しくは分からないが、とても良い紅茶だというのは分かる。

「15時には部屋を出て、教会から警備隊養成学校へ向かう」

「そして一旦部屋へ戻り、18時からは会食だ」

今日、極東地域の首長は不在なので、カジュアルな感じのお食事会とのこと。

「とりあえず、それに着替えて」

 コバリが指差す、クローゼット前の小卓に、持ってきた服とは異なる、見覚えのない服が畳んで置いてある

「これは?」

「警備隊養成学校の運動着ね」

「で、これを着ろと」

「そ、とても丈夫なんでね」

「丈夫な服が必要なんだな」

「そうね、概ねお察しの通りよ」


 うーん、そうか、まぁそうだよね。通常濃度の正粒子環境下での生体回路(サーキット)出力の確認は必要だよねぇ。


 15時、ロビーへ降りると、ゲンマが1人で待っていた。

 コバリは細身のスラックスにサイドスリットの入った、ロングタイト、簡潔に言うとアオザイっぽい薄桃色のドレス。一方、アズマは件の運動着を着ているが、その出で立ちを見ても、ゲンマは特に表情を変えない。

「それでは参りましょう」と先導してくれる。いってらっしゃいませと見送られ、一旦外へ、まずは徒歩で教会へと向かう。敷地内は白い石畳で敷き詰められている。

「この石は」石畳を踏みしめながらコバリ

「緻密で固いけど、非常に微細な孔が無数にあるので、水はけが良く舗装用に重宝された」

「北方地域の特産品だ」

「白くてキレイ、しかも丈夫なので、今でも墓石用などに人気は高い」

ね、とコバリがゲンマを見ると、静かに微笑み返してくれる。

 その白い石、をふんだんに使用した教会に到着。大きさは石机地区教会には劣るが、入口から最奥までゆうに50mはある、立派な建物だ。教会関係者は何人か見かけるが、一般の参拝者はいない。この時間帯は基本、閉鎖らしい。

手前、方形の建屋はステンドグラスで彩られ、揺らめく光が森の中にいるような気持ちにさせる。ユラユラ光る床面を指差しながら

「彩色ガラスに凹凸ガラスを重ねて、光を揺らめかせている」とコバリ

「ラファージ技法ってヤツね」

「へぇ、何それこちらの技術?」

「何言ってんの、ラファージは20世紀初頭のアメリカ人だ」

いや、知らねぇよ。ステンドグラスの匠とかよ! と心の中だけで呟くアズマ。

「ステンドグラスの飾り窓は、テンマの指示で作らせたみたいよ」

床の光の揺らめきを追いかけるように歩を進めるコバリ。

 奥のホール、お約束通り、東西守護神、天井に紅龍、正面に聖イリヤ三尊像だ。イリヤ様にお祈りし、東の守護神のツノを撫でて教会を出る。

 まだ学生が勉強中の教室もあるということで、学校は外から眺めるだけで通り過ぎる。

初等部の生徒は既に下校しているが、中等部、高等部の建屋には女子学生が何人か見受けられる。彼女らは制服着用しているが、コバリの着ているアオザイっぽい服と同じようなデザインだ。なるほどね、と思うアズマ。

 この3人が歩いていても、遠目には教会警備隊員と学生2人が歩いているように見られるだろう。

 図書館もスルーして先へ、高い壁にぐるり囲われた、今までとは異質なエリアへ足を踏み入れる。ゲート脇には銃と警棒をベルトに下げた警備隊員が2人、ゲンマが軽く右手を上げながらゲート通る間、敬礼、直立不動だ。建屋は何の特徴もない白い方形だが、窓は小さく極端に数が少ない。「こちらへ」とゲンマがこれまた普通の外観の白いドアを開ける。

外観は普通だが、ドアの厚みがアズマのイメージするドアの3倍はある。

飾り気無い廊下をしばらく右へ左へ進み、階段を上がり2階へ、突き当りのドアを開くと、いきなり開けた場所に出た。広めの屋内競技場のような空間。宿泊施設の上から見えていたドーム状の建築物だろう。

 入ってきた扉からはフィールドをぐるりと囲む通路が続く。左手には何かオペレーションルームのようなブースがあり、何人かの警備隊員の姿が確認できる。

100m×50m程度だろうか?オーバル形状のフィールド。天井までは30mぐらいはありそうだ。

ブースから誰かこちらへやって来る、伽羅色のアオザイっぽい服、巻角で豊かなブルネットロングヘアのご婦人と、濃紺の警備隊制服に、アズマより二回りは大きいガッシリとした体格、肌の色は浅黒く、ツノは短めの2本が額に生えた男性、の2人だ。

おお、なんか久々に男性みたなぁ。とアズマが思っていると、2人が立ち止まり挨拶する。

「お初にお目にかかります、(わたくし)、マレッサ・ロクメと申します」

細い銀縁眼鏡の位置をクイッと直す「技術担当です」

「ヒガンテ・オグロです。こちらの教会警備隊所属です」

どうやら2人とも、それ以上詳しくは説明してくれないようだ。そりゃまぁ、軍の人だしな。とあまり気にしないアズマ。

ゲンマが説明する。

「本日はアズマ様の生体回路(サーキット)に関する能力の具体的な出力強度を確認したいと思います」

チラリとコバリを見る。コバリはウンウンと頷いている。

「もちろん、アズマは戦闘についてはド素人なんで、その点は留意してね」

ま、多少のケガはしょうがないけどね。ボソリと呟くコバリ

イヤイヤイヤ勘弁して下さいよ。

とか言ってもどうせ無駄なので、腹を括る。ヨッシャ、飛べるだけ、飛んだろうやんけ!

失礼します、とマレッサが腕に何か巻いて固定する。

「これは高度や、気圧の測定器です」

「あぁ、空飛ぶしね、これから」

「ハイ、よろしくです」ニッコリ微笑むマレッサ、知的大人美人だ。


コバリとマレッサはブースへ、ゲンマ、ヒガンテとアズマは下のフィールドへ降りる。

フィールドは一見すると土だが、実際はクッション性のある何か、が敷き詰められている。ポリトラックのような踏み心地だ。

『ドームを開けます』と、ブースからマレッサの声

『まずはシンプルに』と、こんどは通信機からコバリ『上空へ飛んでみよう』

天井を眺めていると、ドーム中心がゆっくりと開き、直径30mぐらいで止まる。クリアな青空が見える。

「とりあえず、一緒にゆっくり上昇しましょう」とゲンマ

「はい、お願いします」

先に、とゲンマが上を指差すので、特に力むこともなく、自然にフワリと浮いてみせる。もう慣れたものだ。

まずはアズマ、その後、ゲンマがゆっくりと上昇していく。

 下で2人を見上げるヒガンテ、表情には出さないが、少し驚いている。天龍族でも「浮く」程度がほとんど、「飛べる」レベルはほんの一握りだ。そして高度100m以上を飛べるような生体回路(サーキット)持ちなら、軍、警察、消防から引く手数多だ。

 ゲンマとアズマはあっという間に、100m以上の地点を過ぎている。まだまだ余裕のようだ。ヒガンテの視力をもってしても、もう見えなくなってきた。おそらく300m超だ。

 龍の巫女、天龍族のトップオブザトップ、ゲンマ・ビエントは1000m以上の高度を龍と飛ぶ。もうそれはヒトの領域を超えている。ちなみに世間で囁かれる彼女の二つ名は「雷光の女神」だ。個人的にはクールビューティーの彼女にピッタリだ、とヒガンテは思っているが、そんなことはおくびにも出さない。美しく強い、そして自分に厳しく他人には優しい。極東地区の教会警備隊員は男女問わず、全員ゲンマに心酔していると言っても良いだろう。

いつか必ず彼女は中央軍(セントラル・フォース)の中枢を担う。稀人との交流も中央(セントラル)の意向だろう。

願わくば、そんな彼女の傍らにいつまでも立っていられる男になりたい。

いや、なるんだと心に誓うヒガンテだが、もちろんこの思いも伝えることは無い。


上空500m、下を見るアズマ。

「うっわ、スゲー怖いです」

「恐怖心は生体回路(サーキット)の働きを鈍らせる可能性がありますから、慣れるまで上を向いて飛んでみましょう」とゲンマ

アズマは言われた通り、上を向き、大の字になって寝転ぶ体勢になってみる。

「まだ飛べそうですか?」

「はい、大丈夫そうです」

『じゃあ、そろそろ』通信機からコバリ『本気出してみようか』

ハイハイ、と集中。体の中に流れる何か、を加速するイメージ

ブワッと体が上空へ一気に飛ぶ。あーけっこう寒い!

石机地区以外だとこんなに飛べるんだなぁ。

今後は服装にも気をつけなきゃだな。

顔にバサバサと強い風を受けながらそんなことを考えていると、

『アズマ、ストップ!』コバリの声だ

『ゲンマが追いつけない』

あれ、いつの間に。


『今、高度2,200m、酸欠になる、戻って』


くるり、と下を向く。遥か下にファイバザールの街。

うわーおっかねぇ。

教会、どこにあるかわかんねぇ。

あーこれから、ちゃんと制御方法、身に着けよう。

と、上空からゆるゆる下降しながら思うアズマであった。

この土日で、ケータイで書くとかムリ、ということを理解しました。

旅行中は更新できなさそうです。

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