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序章 聖なる柩
災難に遭う時節には災難に遭うがよく候、死ぬる時節には死ぬがよく候
ここはどこか
見上げる夜空には満天の星。
尋常ではない星の密度、月は無いのに薄暮の明るさ。
見渡す限り果てしなく続く銀砂の砂漠。
振り返ると黒々とした森の影が横たわる。
足下の砂を掬って、握ってみる。
サラサラと砂は掌から零れ、キラキラと風に飛ばされていく
傍らの少年はまだ眠ったままのようだ。
そっと少年の頬を撫で、砂を掃う。
「ついにここまで来たか」
独り言ち、不敵に微笑む少女。
次第に意識が明確になってきた。
少女の瞳に力が漲る。
「さて、まずは」
黒い森に向け歩き出す。
聖柩を見つけなくては…