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これからもよろしく!おかえり、れいちゃん!

「……ちょっ、マジか」


 倒れた玲の"サンシャインサムライ"としての衣装が消えていく。そして彼女の元の服に──戻るのではなく、そのまま一糸纏わぬ姿になった。

 程よく筋肉の付き絞られたすらりと伸びた脚、普段の言動とは裏腹に艷やかで女性的な丸みを帯びた臀部、肩甲骨と間の微かな凹み、全身の白い肌……申し訳ない気持ちになりそっとマントを掛ける。


 彼女のその身体には一切の傷が無い。だが確実に何かを"斬った"感覚はあった──神の力が消え、それに紐付けられていた"サンシャインサムライ"としての衣装も消えたといった所だろう。元の服が出てこないのは正規の方法で消したからではないからだろうか。


「ミ、ミズリ。玲を医療ポッドに入れてやってくれ」


 俺は目を逸らしながらそう言う。

 だが、彼女からは意外な反応が返ってくる。


「マスターご自身で入れて差し上げればよろしいのではないでしょうか」

「えっ、いやでも流石になあ」

「玲様の生きる意味になると仰っていましたよね? ならばそれ相応の責任はとるべきかと存じますが」


 ぐさり。あの時言った言葉が刺さってくる。

 確かにそうだ。あの言葉はそんな生半可な覚悟で言っていい物ではない筈で、それを承知で俺も叫んだ筈なのだ。それを今更こんな事できょどっていても仕方がない。

 俺は玲を抱きかかえ、腕に温かく柔らかな感触を感じながら医療ポッドに運ぶ。基地内は壊れて使い物にならないのでミズーリを呼び出し医務室へと向かったのだった。



──────



『治療が完了しました。ハッチを開きます……』

「う、うぅん……」


 暖かな微睡みに包まれていた僕はそんな機械音声によって目覚めさせられる。

 何だかとても怖い夢を見ていた様な気がする。確か僕は母親を殺しかけて、ミルキーに止められて、それで……夜空君を突き刺したんだ。その後に自分の身体が自分の物じゃないみたいな、まるで誰かが操作しているアバターを画面越しに見ている様な、そんな感覚と共に変身した夜空君と戦って、負けた。

 ハハ、なんて出来の悪い夢。宇宙戦艦、だっけ。そんな物この世にある訳ないし、ましてや夜空君が持っているだなんて。それに「お前の生きる意味になってやる」だなんて、こんな僕が幸せになっていい訳がない。


「早く起きて学校に行かなくちゃ。怒られる……ん?」


 そうして上体を起こしてようやく気付く。


「なんで僕濡れて……え、それよりもなんで僕、裸──」


 そこで脳内にフラッシュバックする。


 薄っすらとした意識の中、僕は負けてコスチュームが消える。

 元々着ていた制服が返ってくることは無く、そのまま全裸になった僕はその後誰かに抱えられて謎の容器に入れられたんだ。

 そして、抱えられている時に見えた顔は──


「──ッ!!??」


 ぼうっ、と顔が熱くなる。

 この記憶が夢じゃないのは今の自分の状態が物語っている。つまり僕は、実際に裸のまま夜空君に抱きかかえられたのだ。

 いや、ある意味本望ではあるのだがそれはそれとして心の準備は出来ていなかった。


「あう、あうあ、ああ」


 とめどなく温度が上がる頬を両手で覆い、目の焦点は一向に合わず、口から出てくる言葉は最早言語の体を為してはいない。



『玲、入ってもいいか?』

「!? ひゃ、ひゃい!!」


 そんな時、何処からかそんな声が聞こえてくる。それは紛れもなく夜空君の物であり、どうやら部屋の一角にある扉の奥から聞こえてきている様だった。

 つまり、扉一つを隔てた向こうに彼が居る。そう思うと途端に羞恥心がこみあげてくる。つい先程裸で抱かれたのにも関わらず。

 だからつい反射的に返答してしまったが、それに更に恥ずかしくなってきて慌てて言う。


「ま、待って! ちょっと待って!」

『あ、ああ。分かった、外に居るから呼んでくれ』

「……っ」


 僕は顔を覆い、何度か息をする。

 戦っていた時、最後にミルキーが来ていたのを覚えている。きっと僕をここまで運んだのは彼女なんだろうけれど、もし仮に夜空君が運んでくれたのなら……そう考えて、自分の身体を見下ろしてみる。

 これまで抑えつけてきた胸はそこまで膨らんではいないし、ヒーローとしての活動や男性ホルモンの使用で筋肉がついているし、女性的魅力としてはミズリに敵わない。正直今でもあの言葉は夢ではないのだろうかと疑っているくらいなのだ。

 でも、この状況はそれが現実だったと物語る。僕は謎の容器から出て机の上に置いてある服に身を包む。服は幾つか用意されており、折角なのでこれまで殆ど着る事の出来なかったタイプの物を着る事にした。


「は、入って大丈夫だよ」

『ああ』


 シュイン、と音を立てて扉が開く。その様子はまるでSF映画の様だった。そもそもこの部屋だってそうだ、何なんだこのポッドは。

 さて、入ってきた彼は僕を視界に入れると少し動きを止める。

 僕が今着ているのは薄い黄色のブラウスに純白のフレアスカートといったカジュアルで可愛らしいコーデ。


「はは、や、やっぱり似合ってないよね」

「……いや、似合ってるよ。凄く可愛い(・・・)

「──ッ!!」


 ボンっ、とまたも顔が熱くなる。今ならおでこで湯を沸かせるのではないだろうか。

 でも……ああ、嬉しい。それは今僕が一番かけて貰いたかった言葉だった。一番言って欲しい相手から一番言って貰いたかった言葉を言われたのだ。思わず気絶しそうになるけれど、駄目だ。出来るだけこの幸せな時間を享受しないと。

 取り敢えずその為に話題を振る。何かを喋っていなければ耐えられそうにない。


「そ、そうだ。この服ってミ、ミズリちゃんの物なの?」

「え? いや、それは作ったんだよ。ミズリは服要らないし、気に入ってもらえてよかった」

「作った? え、手作り?」


 脳内にミシンに向かっている彼の姿が映し出される。


「手作りというか、ミズーリにある工場でな。データと引っ張ってきたデザインを入れたらすぐに出来るんだ」

「へえー……データ? それって、僕のスリーサイズとか? ……勝手に人のそういうの見るのはデリカシーに欠けてるんじゃないかな?」


 ジト、とした視線を送ると彼は途端に慌てだす。


「え、あ、いや、す、すまん」


 その様子がここまでの彼とは全くの別物の様で、少しだけ微笑ましい。

 僕はクスクスと小さく笑って言う。


「ふふふ、別にいいよ。君になら、ね?」

「そ、そうか……」


 ああ、()はなんて──

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