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マジカルコスモ!玲を取り戻せ!

 玲を通して夜空と会話するスーパーセイビアは今、心から安堵していた。

 彼はかつてマジカルミルキーと対峙し、彼女に仕掛けた魔法によって彼女らの正体を暴こうとした事がある。その際にはメイテルの協力により魔法を看破、逆手にとって本物の宇宙人だと信じさせようとし、実際彼はそれにまんまと引っ掛かってしまった訳である。

 これまで彼はマジカルミルキーの事を外宇宙からの侵略者だと思い込み恐怖していた。もしそれが本当ならば如何に力を得た彼であっても到底敵わないからである。


 だが、今回この得体の知れない力の正体が"スキル"による物だという事が判明した。

 宇宙人は未知だがスキルならば既知である。何しろ彼も"神"からそれを受け取った張本人なのだ。つまり、人間の範疇。そして人間相手ならば勝てる、彼はそう信じていた。



──まさか目の前に居る少年が既に別の星で神を殺している事など、今の彼には知る由もなかったのだ。



──────



「ッ……!?」

「まともに打ち合える……フンっ!!」


 罵声の撃ちあいから始まった最初の鍔迫り合い、それは俺の不安を他所に互角に競り合っていた。

 イルミスの戦いの教訓から作り出したパワードスーツ──スキル相手にどれだけ戦えるか不安だったのだが、どうやらこれは期待以上の働きをしてくれそうだ。俺が剣に力を込めると奴は苦い顔をして後ずさる。

 そこにすかさずゲリエドラグーンを取り出してショックレーザーを撃ち込む。三発の光弾は、しかし命中寸前に振るわれた刀に防がれ、直後奴は再び突撃してくる。

 床を蹴り、跳ねて俺まで辿り着く間に居合の様な構えを取り、言う。


「"シャイニースラスト"!」

「っ、ぐっ……」


 そうして振り抜かれた光り輝く刀を剣で受け止める。片手で刀身を押さえ、重力制御もフル稼働させてなんとか止める事に成功する。

 だが、発せられた衝撃波までは食い止められなかった。それらは廊下の中で暴れ回りズタズタに破壊する。


 このままでは不敗神話を誇るミズーリが内部から破壊されてしまう──だが、その可能性は考慮済み。


「──間に合ったな!」

「なっ!?」


 瞬間、乗っていた廊下が消失する。それだけではない、ミズーリその物が消え、一転して俺達は宙に投げ出される。

 出ていったその空間は、リング状のガラスドーム。俺達が廊下で戦っている間に艦を月面基地へと移動させていたのだった。


「ここは……!」

「お前も知ってるだろ? 艦を破壊されちゃ堪らないんで、なっ!!」


 そう言うと、空中でスラスターを噴射させて一気に奴へと突っ込んでいく。奴はそれに対してやはり刀を構えるが、それが触れる直前にスラスターの向きを変えて上部をすり抜け、背後に回り剣を振る。

 だが相手は戦闘のプロ、即座に反応し身体を捻らせて避けてみせる。そして俺の体勢が崩れた瞬間に蹴りを入れる。避けられそうになかったので重力制御で背後に下がって衝撃を殺そうとするが、それでも少し衝撃は来る。


「ぐぅっ……」

「そんなものか! マジカルコスモ!!」


 追撃は止まらない。

 吹き飛ばされた俺へ向かって無数の斬撃を飛ばし、それに合わせて奴自身も向かってくる。俺はマントを前に回してそれを防ぎ、隙間を突いて繰り出された斬撃を剣で受け止める。

 これではジリ貧だ、そう感じた俺はスタングレネードを取り出してピンを抜──


「させるか!!」


──こうとした所で真っ二つにされる。

 だが、想定内だ。


「囮だよバーカ!」

「なっ!?」


 俺は口を開け、何かを奴に向けて吐き出す。

 それは既にピンが抜かれたスタングレネード。奴は慌てて斬ろうとするがもう遅い。


 バン、高い音と共に激しい閃光が放出される。

 直前に遮光グラスを目元に出現させていたので目を開けたままでいられる。奴が目を押さえている間に斬ろうとするが、そう一筋縄ではいかない様で。


「チッ」


 奴は見えていない、しかし自らの刀で周囲の空間を斬り裂き続ける。あれでは近付けそうにない為仕方なく距離を取って体勢を立て直す事を優先する。

 俺はスラスターを吹かせて後ずさりながら床を何度か触り、加えてホログラムスクリーンを出して幾つかの操作を行う。すると触れた所に光の粒子が集まってにょきにょきと重機関銃が現れ、幾つもの壁が床や天井から伸びてくる。


「撃て!」


 ダダダッ、と無数の光弾が放たれる。丁度その頃に奴の目も回復した様で、光弾を避けつつ刀の切っ先をこちらに向ける。


「"アスタリスクフレア"!」


 無数の炎の手裏剣が奴の周囲に出現しこちらに勢いよく向かってくる。俺は生えて来た壁を盾にしながら走り、爆音と壁が破壊される音を聞きながら奴の死角からゲリエドラグーンで撃ちながら突撃する。

 再び刀身同士が打ち合わされる。何度も何度も金属音が鳴り響き花火の如く火花が散る。時には光弾が飛び交い、また俺が重力制御で飛ばした破片を斬り裂いたりもする。


 俺達は縦横無尽に動き回りながら戦闘を続けていた。基地は半壊し最早基地に備えられたシールドによって与圧している様な状態だ。

 これ程までに激しく戦闘を行ったのは今回が初めてだった。スーツのお陰でかなり軽減はされているが、戦闘という一つ間違えれば命を落としかねない行為による精神的摩耗は軽減出来ない。


「貰ったァ!!」

「ッ──」


 だからこそ、ふとしたミスで致命的な隙を晒してしまうのも仕方のない事だった。

 剣を弾かれ、大きく空いてしまった脇。すかさずそこに相手の刀が差し込まれる。どうやっても防御は間に合わない──


 所でここまでの戦闘において、否、これまでの地球における戦闘において俺もミルキーも「使えるのに使わなかった物」がある。

 正確に言えば直近の怪物退治で一度使ったが、その時は重力制御で誤魔化した。それが──


「なッ!?」


 ギイン、とけたたましい音を立てて刀が空中で食い止められる。それは重力制御などの目に見えない力ではない。

 その刀は、何か半透明な光の膜によって止められていた。それに彼は目を見開き、その致命的な隙を見逃す俺ではない。俺はすかさず剣を振り抜き、奴も避けようとするが間に合わず刀を持っていた腕に当たる。

 普通の剣ならば確実に腕を切り落としていたその一閃は、しかし玲の身体には全く外傷を与えない。ただし刀身が腕を通り過ぎ、そこから手までの衣装が消えその腕は糸の切れたマリオネットの様に動かなくなる。カラン、と刀を取り落とした奴は顔を顰めて背後に飛び距離を取る。


「その能力は、一体……!」

「どうしてこれだけ基地が壊れてるのに俺達がまだ普通に生きてるのか、疑問に感じなかったのか? ここは月面だぞ、建物が壊れたら普通は死ぬだろ?」

「!……成程、シールドか。そんな物まで使えたとはね」


 そう、俺が今使ったのはシールドだ。

 怪物事件ではそもそも使わなくても解決出来る場面が多かった。何処で見ているか分からない敵に自分の手札を矢鱈と見せるのは良くないと思い基本的にシールドなど一部の機能は使わない様にしてきたのだ。

 直近の怪物退治──対スライム戦ではマジカルミルキーがシールドを纏ってスライム内部に侵入、直接核を破壊したがその際には重力制御装置によってスライムの体液を跳ね除けていると誤認させていた。そう、全てはいつか訪れるであろうこの時の為に。

……正直な所を言えばもう少し温存しておきたかったが仕方ない。


「さあ、玲の身体を返してもらうぞ」


 刀は既に無く、利き腕は使えない。互いに全力を出して互角だったのだからこの状況では奴はもう俺には勝てない。

 俺は切っ先を奴に向け、そう言った──が。


「……クク、HAHAHA!」


 奴は笑う。

 気でも狂ったのか……否、そうではない。奴は懐から小刀を取り出すと自らの首に当てる。


「君は随分とこの身体に入れ込んでいるみたいだね。ならばこうすればいいだろう?」

「……今更か。随分ダサイ事するじゃないか、救世主(セイビア)サマよぉ」

「そうだな、出来ればやりたくなかった。この手で君という敵を排除したかったが仕方がない。君達の言葉ではこう言うのだったかな? 『背に腹は代えられない』、そうだろう?」


 ああ、そうだ。今の俺にはそれが一番効く。

 利き腕ではないとはいえ、奴はその気になれば一瞬で自らの首を斬り飛ばすだろう。そして医療ポッドは生きていなければ治療出来ない。生首になっても暫くは生きているらしいが余りにもリスクが高い。

 これをされない為に俺は全力で剣戟なんて演じたんだ。奴にその気があってもそうさせない為に。

 奴はこちらを見ながら意地の悪い邪悪な笑みを浮かべる。


「さあ、その剣を落としてもらおうか。ああ、少しでも不審な動きをすればすぐに首を落とすからな」

「……」


 首筋に刀身が押し当てられ、鮮血が一筋流れる。

 そんな状況で、俺は素直に剣を床に落とす。奴は少し呆気に取られる表情をした。


「おやおや、随分と素直に従うんだな」

「……確かにその方法は俺に効果覿面だよ。それをされたら俺は素直に従うしかない」

「ほう、ほうほうほう。成程な」


 ニヤリ、と口角を上げる。

 きっと奴の脳内では俺は素直に負けを認めた事になっているのだろう。


「だがお前は一つだけミスを犯した」

「……ミス?」

「ああ──」


 バン。


「な」


 奴が眉をひそめるのと、発砲音と共に小刀が砕け散るのはほぼ同時だった。奴は慌てて背後に視線をやり、その視界に|銃を構えるマジカルミルキー《・・・・・・・・・・・・・》の姿が映る。


「がっ……」


 刹那、剣を拾い上げた俺が両断する様に斬り、呟く。


「──遅かったんだよ」

高評価、ブックマークはモチベに繋がるのでよろしくお願いします

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