魔法おしえて!マジカルミルキーのひみつ
さて、他の皆がサンシャインのセイバーズ加入を喜ぶ中、セイビアは自らの角膜にとある映像を投影する。
実は先程ミルキーと握手した際、彼は密かに彼女へ魔法をかけていた。かけられた者の視聴覚、位置を知る物──それを彼の類まれなる魔法技術により殆ど魔力反応を出さずにかけたのだ。彼を除くセイバーズの誰も気づかないだろう、それ程の妙技。
ミルキーは現状彼にとっての最大警戒人物であった。それは彼女の力が、彼の知らない物だからだ。
世界中に魔法組織があるのは知っている。野良の魔法使いが居るのも、妖魔の類が息をひそめているのも知っている。セイバーズの面々も、怪物の事も知っている。
だが、ミルキーは知らない。彼の知らない所から出てきて知らない力を振るっている。警戒しない理由が無い。
「(さて、ミルキー……お前の正体、見せてもらうよ)」
彼は心の中でそう呟き、目の前に広がる景色を見る。
そして──硬直した。
「な……なんだ、ここは」
「どうしたの、ジェイムズ?」
「は、ハオ、い、いや何でもないよ」
彼は彼らしからぬ慌て方をし、近くに居たフェンが怪訝な顔をする。それを誤魔化しつつ彼はその景色の分析を始める。
目の前に広がっていたのは──宇宙だった。いや正確には違う。何かしらの戦闘機のコックピットらしき場所にミルキーは座っており、そのキャノピー越しに宇宙が見えており、その先には月が鎮座している。
位置を確認してみる。場所は地球上ではない──地上から約10万キロ、11万、12万……有り得ないスピードで月に向かって移動している。
そうして見始めてから一分も経たないうちに月へ到着し、彼女は更にその裏側へ向かう。そこにあるクレーター、それには巨大な縦穴が空いており、彼女はそこを降りていく。
「な……」
そこで再び彼は唖然とする。
何しろ、縦穴を降りていった先にあったのは巨大な地下空間──そこに鎮座する巨大な未来的な基地であったのだから。
「ッ!!」
「あ、ジェイムズ! ……行っちゃった」
彼はとうとう堪えられなくなり血相を変えてその場から立ち去り、自室に入る。
そうして、自らの顔を押さえ、ダムが決壊したかの如く声を出す。
「ば、馬鹿な……馬鹿な馬鹿なそんな馬鹿なッ!!」
狼狽している間にもミルキーは基地へと進入し、その未来的な内装の中を歩いていく。人陰は一つも無く、ただ静寂だけが広がっている。
だが、そんな事は最早どうでもよかった。問題は……
「何故だ……ならば何故そんな事をする!?」
彼が思い浮かべた仮説が正しければ、マジカルミルキーには逆立ちしても勝てないという事になってしまう。
──マジカルミルキーは、外宇宙からの訪問者。
そうであれば彼女の能力にも、硬くに顔を出さないのも納得できる。できてしまう。
怪物を易々と貫通する謎のレーザーガン、バズーカ、そして魔力反応を出さないテレキネシス。恐らく最後は重力を制御しているのだろう、最新の研究で科学でも理論上は可能である事が分かっている。
だが、地球にはそんな技術はない。しかしもしそれが宇宙人であれば? 地球に最も近い地球型惑星でも約四光年の彼方。知的生命体が存在するとなれば数百、下手をすれば数万光年単位を移動できる技術を持っているのだ。重力制御程度は児戯にも等しい筈。
問題は、何故地球に来たのか。そして何故ヒーローなどの真似事をし、怪物を倒しているのか。
地球侵略の為ならば怪物やヒーローなど無視し破壊の限りを尽くせばいい。調査ならば態々真似事などせずとも一般市民として紛れ込んでいればいい。セイバーズの内情を探りに来たという可能性もあるが……恒星間航行をする技術を持つ者にとってはヒーローも一般市民もさしたる違いはない筈だ。
考えれば考える程分からなくなる──そうして冷や汗を流し続ける彼に、更なる爆弾が放り込まれた。
『──|akie2?:、dni183@;.][390d,《マスター、只今帰投致しました》』
「なッ」
未知の言語を話したかと思えばミルキーが跪く。
その言語が遠い宇宙の彼方──レヴィドリアンの言語である事など、今の彼には知る由もない。
『|sabue/2:s@ajenioa《大儀であった、ミルキーよ》……|djrn/3p;385-:/[\21$dmo《所で、礼儀の悪い者が居るようだな》』
そうしてミルキーが顔を上げ、謎のマスターをその目に映す直前に映像は途切れる。
どうやってやったのか、そもそもバレていたのか……そんな事など、今の彼にはどうでも良かった。
「ジェイムズ様」
「ッ……ああ、エドワードか」
「ミルキーの事ですな。何か分かったので?」
「ああ……」
キイ、と扉が開かれて何者かが部屋に入る。
セイビア──ジェイムズは慌てて顔を上げるが、そこに立っていた者の顔を見て安堵する。部屋は施錠してあった事など最早記憶の彼方に追いやられていた。
「ミルキーへの対処……考え直す必要がありそうだ」
──────
「──これで大丈夫かな」
「助かったよ、達也」
「ありがとうございます」
一方その頃、月面基地にて。
「それにしても危なかったね。盗聴に発信機なんて、もし対処してなかったら全部バレてたよ」
グレートセイバーズを離れたミルキーは、本来の予定であれば上空で待機していたミズーリに戻り夜空達と合流する筈だった。
だが、状況が変わる。スーパーセイビアによって魔法がかけられたのである。
無論想定していなかった訳ではないが、本質的に魔法を理解出来ないミズリや夜空ではその影響がどれ程まであるのか、などは分からなかった。
しかし、予想していなかったとある助力によりその魔法の効力を完全に理解したミルキーは、敢えてその場で解呪せずに一芝居打つ事にする。
ミズーリではなくコスモパンサーで基地まで戻り、未知の言語で芝居したのだ。大根役者にはなっていなかっただろうか? 少し不安である。
「これであっちはミルキーの正体が宇宙人だと思い込む筈だ。そうじゃなくとも本拠地が月にあると思わせるだけで十分効果はある」
今回の一芝居の目的はセイバーズのミルキーへの目を地球人というカテゴリから外す事。ミズリは兎も角、夜空はきちんとした出生記録もあるし純粋な地球人である事は疑いようがない。
だからこそ、これにより夜空とそれに付随する形でミズリの疑いも多少なりとも晴らす事が出来る筈だった。まあそもそもまだ相手は夜空達の事など知りもしないとは思うが、念の為。
そして、この情報はセイバーズを通していずれ外にバレる筈。この怪物事件の班員がスーパーセイビアであれ他の何者かであれ、明らかに部外者中の部外者が関わってきていると知れば対応を変えてくるだろう。そうなれば何かしらボロが出る筈だ。
また、もし仮にスーパーセイビアが犯人だった場合、いずれ必ずぶつかる事になる。その時、地球で戦うのは非常にやり辛い。
ならばいっそのこと、誰にも迷惑がかからない月に来てもらう方が都合がいいという訳だ。
かくして、この作戦は成功した。
そしてもう一つ。
「あっちはどんな感じだ?」
「とても動揺している様です。また、こちらへの対応を変えようとも言っています」
「バレてはなさそうか……まああっちも芝居している可能性も残ってるけど」
仕掛けをしたのは何もスーパーセイビアだけではない。実はミルキーも彼へ盗聴器を仕掛けていた。本来ならば犯罪だがあちらもやっていたのでお互い様であろう。
ミルキー──ミズリの身体はナノマシンで構成されており、その一部をセイビアに取り付けたのだ。小さすぎて目には見えず、魔力も発していない。気付く事はほぼ不可能だろう。
だがまあ、気付かれている可能性も否定できないので絶対的に信用する事はない。
そう思いながら、夜空はミズリへ問いかける。
「で、どんな対応にしようって?」
「マジカルミルキーが怪物事件の真犯人であると想定する様です」
「まあそうなるわな」
あちらが犯人でない場合、一番怪しいのはミルキーだった。加えて今回の情報により外宇宙からの訪問者だと判明したのである。状況証拠はこれ以上ない程に揃っている。
夜空達はそのまま歩き出し、軽く基地の調整をして帰る事となった。
実は夜空が戦うバトル・スーツの制作も進められており、その調整もしようという事になっていたのである。ミズリは不満げだが、彼自身このまま何もせず彼女一人に戦わせるのは流石に嫌だった。
──この時の彼らはまだ知らなかった。
自分達を嵌める、恐ろしい計画が進められている事に……
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