ミルキーとサンシャイン、マジカルに戦っとこ!
「これで現在のセイバーズのヒーローは全員だ。基本は彼らの住む国にタイタンが現れたら対処して、時折近隣のヒーローが居ない国でも現れる事があるからそちらにも飛んでいく感じだね。何か質問はあるかい?」
二人とも別れた所でセイビアが言う。それにおずおずとサンシャインが口を開く。
「あ、あの……」
「何かな?」
彼が返すと、彼女は思い切って声を出す。
「ぼ、僕はセイバーズに入れるんでしょうか!!」
彼女が今一番聞きたかったのはそれだった。それに対し、セイビアは一瞬困惑した後に笑みを浮かべる。
「なんだ、そんな事を心配していたのかい? 当然だろう、そもそもセイバーズに入る資格など"ヒーローである"ただそれだけだ」
彼がそう言うとサンシャインは顔を明るくさせる。もしも彼が「入れない」と言えば自死してしまいそうな雰囲気を漂わせていた。
その後、二人はしばらくセイバーズの面々と交流した。
そうして分かった事がある。
──セイバーズに居る者の多くはとにかく"失う"事を恐れている。
今日、ミルキーに対して友好的に接してくれたライヒシャット、カフラン、サンバヒーローに玉虎侠客、彼らは会話の節々から今の仲間の輪が崩れる事を恐れている様に感じられた。同時にサンシャインが入る事に対してかなりの喜びを見せていた。
人間としては普通の反応なのだろうが、何処か引っ掛かる。
そして残りの二人──ロイヤルナイトとスーパーセイビアだが、まず前者はミルキーの事をかなり危険視している様に思えた。まあ当然といえば当然である。
後者はイマイチ何を考えているのか分からない。表面上は友好的に接してはいるものの警戒するに越したことはなさそうだ。
さて、その後なんやかんやあって甲板に行き、そこで模擬戦闘を行おうという話になる。実力の全てを、とまではいかずともある程度の戦闘スタイル等を見ておきたいらしい。
ミルキーは当初断ろうと考えていたが、他のヒーローの戦闘を間近で見られる良い機会だという事で最終的には承諾した。
「君達は二人とも日本のヒーローだ。そして以前の様に一人では倒しきれない敵が現れるかもしれない。その時に備えてコンビで戦ってもらおうと思っている」
セイビアのその言葉にサンシャインは明らかに嫌そうな声色で言う。
「コンビ……ミルキーと、ですか」
「そうだ。そもそも君達は実に相性の良いコンビなのだよ。ミルキーは遠距離型、君は中近距離型と互いの弱点を補う様になっている。それに思想は違えど最終的な目的は同じな筈……タイタンを倒し人類を守る、そうだろう?」
「そう……ですが」
サンシャインは一瞬言葉を詰まらせる。
その真意を確かめる事なく彼は顔をミルキーに向ける。
「君はどうだい? 彼女とコンビを組むのは嫌か?」
「それは模擬戦闘での話ですか? それともこれからの実戦においてもですか?」
「両方だね」
「それは……問題はありません。ただし彼女は到着が遅いので、被害が出る前に……私が倒しきる前に到着すれば、の話ですが」
"セイバーズのヒーローは到着が遅い"──そんな皮肉を滲ませて返す。それに彼は不敵な笑みを浮かべたまま踵を返し、部屋に居るヒーローの面々を品定めする様に見回す。
「ダニー、ハオ! まずは君達が相手をしてやってくれ」
「任されたゼ!」
「怪我しない様に本気で来いよ!」
セイビアがまず選んだのはダニーことダニエル──サンバヒーロー、そしてフェン──玉虎侠客。二人はそれぞれのヒーローとしての姿に変身しながら威勢のいい言葉を放つ。
サンバヒーローはカラフルな衣装に身を包み、ソンブレロに派手な羽根を何枚も取り付けた、正に南米といった風体である。
玉虎侠客は黄色の漢服を模した様な衣装を身に纏い、頭頂部には虎の耳、臀部からは尻尾が生え、そして手元には長いかぎ爪を装備している。
「ひ、ひいい、せ、セイバーズの方々と戦うなんて……」
「サンシャイン、戦闘準備をしてください……嫌なら私一人でやりますが」
「は、はああ!? き、キミ一人で勝てる訳ないだろ! この前のスライムに手も足も出てなかった癖に!」
「あれは火力が足りなかっただけです。貴女が乱入しなければプラン"S"に移行する予定でした」
「え、S──ッ!!」
と、他愛もない言い争いをしている二人の間に一つの影が乱入してくる。
サンシャインとミルキーは慌てて身を引き、二人の居た空間を一対の爪が通り過ぎる。
「戦ってる時によそ見なんて危ないぞ!」
「"ゲリエドラグーン"」
飛び込んできたのは玉虎侠客。
尊敬する相手に刃を向けるのを躊躇するサンシャインとは対照的に、ミルキーは身を引きながら拳銃を手元にやりショックモードにして放とうとする。だが──
「"サンバストライク"!」
「っ!!」
その声と共に横から飛来してきた緑色の光弾。それを避けつつショックレーザーを放つもワンテンポ遅れた事で避けられてしまう。
「ミーも居るコト、忘れないでヨ!」
それを放ったのはサンバヒーロー。彼はサッカーボール大の魔力弾を出現させるとリフティングし、今度はサンシャインへと蹴り飛ばす。
「サンシャイン!」
「へ、きゃあ!?」
ミルキーの声に彼女は慌てて避けようとするもやはりワンテンポ遅れてしまい、光弾は彼女に命中する。直前で刀を抜き防いでいたのである程度被害は抑えられたが、それでも多少のダメージはあった。尤も模擬戦闘の為に威力は抑えられているのでモロに命中した所で大したダメージではないのだが。
これらが二人の戦闘スタイルである。
玉虎侠客は両手の鉤爪による斬撃だ。衣装に虎のモチーフがある事からも分かる通り虎の様な身体能力を誇り、素早い動きで至近距離まで入り込み斬り付ける。
サンバヒーローは緑色の魔力弾を出現させるという物で、それを彼が元から保持していたサッカー技術によって蹴る事で多彩な攻撃を実現させている。魔力弾の出せる数はほぼ無制限であり、下手な相手ならば近づく事すら出来ず一方的にやられてしまうだろう。
それぞれ近距離型と遠距離型。理想は前者をサンシャインが、後者をミルキーが相手する事だが相手はそうはさせてくれないらしい。
「マジカルミルキー! お前の相手は俺様だ!」
「……"マジカルスイープ"」
「だ、大丈夫かいサンシャイン……デ、デモ戦闘中に油断はキンモツだヨ! "サンバストライク"!」
「うう……は、はい!」
ミルキーへは玉虎侠客が肉薄し、彼女は箒を取り出して空へ退避する。サンシャインへはサンバヒーローが罪悪感に苛まれつつ光弾を蹴り飛ばし、それを刀で斬っていく。
空へ上がったミルキーがショックモードで玉虎を撃つ。何度か避けられた後に命中するが、彼は気絶する事なく少し怯んだ後に彼女を追いかける。
この光景に彼女は非常に既視感があった。イルミスにて、クラスメート達や魔王相手に通用したかった時の事だ。
象をも気絶させる威力であってもステータスの高い者は気絶しない。しかし相手は怪しいとはいえ世界の平和を守るヒーローなので殺す訳にはいかない。非常に戦い難い相手である。
「オラオラどうした! 手加減してたら俺様には勝てないぞ!」
現状ミルキーが使っているのはゲリエドラグーンのショックモードと箒のみ。それ以外の武器は軒並み殺傷力の塊なので使えない。
一応ショックモードでチャージし威力を上げて使うという手もあるがあれは隙が大きく、素早い動きで距離を詰められて爪を躱すので精一杯の今では使えない。
正直な所を言えば、負けてもいい戦いなのだ。これは模擬戦闘だし負けたところで特にペナルティがある訳でもない。
そんな彼女の思考を読んだのか、観戦していたセイビアが言った。
「もしミルキーが負けたらその仮面を外してもらおうかな」
「……それは困りますね」
「え、うわっ!?」
ミルキーは呟くと不意に重力制御装置を操作して玉虎に反重力を与える。思いもよらぬベクトルに彼は空中でバランスを崩し、その隙に彼女はチャージして威力を上げたショックレーザーを放つ。
それまでの弾が当たっても大した影響が無かった経験が災いした。彼は避ける事よりも体勢を立て直す事を優先し──命中したそれは見事に彼の意識を刈り取った。
「な、ユーフン!? ア、しまっ──」
「ッ──"シャイニースラスト"!!」
相方が撃破された事に驚いたサンバヒーロー、彼に動揺で隙が生まれる。
そして、それを見逃すサンシャインではなく、そこまでの攻防で覚悟を決めていた彼女は技を繰り出し、峰で斬り付ける。遠距離型故に耐久力がそれ程でもない彼はその一撃で気絶した。
果たして、この模擬戦闘がミルキーらの勝利に終わったのである。
「そこまで! いやあここまで強いとは、流石だね。世界の未来は明るいよ……ファーティマ、今、彼女が何をしたか分かるかい?」
「ファーティマも同じような技を使うけれど~、今のからは魔力も感じないから分からない~……」
「そうか……」
最後にミルキーが使った能力。その実態を彼は図りかねていた。
何しろ魔力を感じないのだ。世の中にはテレキネシスといった超能力を保持する者も存在する──ファーティマもその一人──が、それらは魔力による魔法かもしくは単なるインチキかの二択である。
魔法ならば使用した際に多少なりとも魔力を感じる筈なのだ。セイビア程の実力者になればそれを隠蔽する事も可能ではあるが、それでも"一切気付けない"程まで隠す事は不可能だ。
ともするとあれは魔法以外の力という事になる。考えられるとすれば純粋な科学力の産物、という線だが──
「……いや、有り得ない。そんな技術聞いた事がない……」
結局、彼のその問いに対する答えは現れず。
その後サンシャインはファーティマによる治癒魔法を受けた──ミルキーは拒否した──後にファーティマとメルヒオールのコンビとも戦う事となった。
ファーティマ──カフラン・アルザハビの戦闘スタイルは超能力による念力やパイロキネシス、電撃など。メルヒオール──ライヒシャットはレイピアによる剣技だ。これまた遠距離型と近距離型に分かれており、しかし二人は苦戦しつつも勝利を収める。
そして最後はセイビアとロイヤルナイトのコンビ──はお預けとなった。流石に三連戦はあまりにも不公平過ぎるだろうという事で、またいつか機会があれば、との事だった。
そう、サンシャインは兎も角ミルキーはあくまでも一日体験。そして、色々な案内や戦闘によってその期限は目前に迫っていたのだ。
「本当に入らないの~? ファーティマ、さみしい……」
「良い所だゼ? ココ」
セイバーズの面々がミルキーとの別れを惜しむ中、当の本人は何事もない様に帰宅の準備を進めている。
そしていよいよ帰るという所でセイビアが不意に手を差し出す。
「気が変われば来てくれ。セイバーズはいつでもヒーローを歓迎する」
「……ええ。考えておきます」
警戒しつつその手を握る。
『──』
瞬間、彼女の懐が熱くなる。
「……?」
「どうかしたかね?」
「……いえ。何でもありません。では」
彼女は箒に跨り飛び去っていく。それを騒がしく見送る声、静かに見つめるセイビア、ロイヤルナイト、そしてサンシャイン。
「──さて、彼女も去ったのだし仮面を外してもいいのではないか?」
「……そうですね」
セイビアのその言葉に、サンシャインは頷き自らの面を外す。瞬間、声色が変わりそれまで朧げにしか認識出来なかった声が明瞭になる。
金色のポニーテールがその印象を薄めてはいるものの、やはり少年の様な印象のある凛々しい顔立ち──
「──サンシャインサムライ改め、月影玲です……! これからよろしくお願いします!」
──夜空の幼馴染の王子様が、そこに居た。
そんな……サンシャインサムライの正体が玲だったナンテ……()
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