グレートセイバーズへ!憧れのヒーロー!(前編)
「本当に安全第一だぞ」
「分かっています。では、行ってまいります」
そう言うと、彼女は俺の目の前から消える。
スーパーセイビアは俺達が思っているよりも遥かに常識的だった。何しろ、彼はミルキーとサンシャインに一日を与えたのだ。
彼女らはあの場で一旦別れ、翌日に横須賀に来いと言ってきた。そこにグレートセイバーズが着陸するから、と。彼女らが普段は普通の子供だと見抜いているからだ──親の許可を取ってこい、という事だろう。
体験するのは一日のみ、泊まる訳ではないので親には丸一日遊びに行く、と伝えてある。俺もその間ミズーリに乗って上空待機だ。母親からは生暖かい目で送り出された。多分何か勘違いしている。
今の俺にはただ、彼女を見送るしか出来ないのだ。
──────
その日、横須賀海軍基地にはこの歴史的瞬間をカメラに収めようと多くのメディアが詰めかけていた。
港に停泊しているのは戦艦ミズーリ──飛行戦艦グレートセイバーズ。そのタラップへと赤絨毯が敷かれ、スーパーセイビアが仁王立ちで彼女らを待っている。
そう時間が経たないうちに、二人は来た。箒に乗ったミルキーがふわりと降り立ち、箒を消す。生身で飛んできたサンシャインがスタリと降り立つ。二者二様の赴き方をして、日本のヒーローはスーパーセイビアの前に正式にやってきた。
「やあ、待っていたよ」
「今日はよろしくお願いします」
「よっ、よろしくお願い致しますっ!」
彼が差し出した手を二人は順に握る。ミルキーは冷静に、サンシャインは明らかに緊張しながら。
そんな彼女の様子を見て彼は笑う。
「HAHAHA、そこまで緊張しないでも大丈夫だよ」
「す、すみません……でもあのセイバーズの方々と会うとなると……」
「皆私より遥かに個性的だが、良い奴らだ。そこだけは保証する。君もだよ、Ms.ミルキー」
「そうですか」
そっけない対応。だが彼は特に気にした様子もなく、2人を連れて歩き出す。
その様子をカメラは余す事なく切り取り続ける。マジカルミルキー、サンシャインサムライ、その両名がここまでカメラの前に姿を晒したのは初めてだ。
もう二度とこんな機会は得られないかもしれない──セイバーズに入るならば杞憂かもしれないが、サンシャインは兎も角ミルキーはあまり乗り気ではない、という情報も入っていたのである。
また、テレビの前の市民達も食い入る様に彼女らの姿を見ていた。
ここまで三度日本を守ったヒーローがもしかすれば遠い所へ行ってしまうかもしれない。その不安は興味という形で現れ、各ニュースの視聴率は年末の歌番組に匹敵する程であり、各SNSのトレンドは二人に関する事で埋め尽くされた。
記者からの質問は飛ばない。本当はしたくて堪らないが、スーパーセイビアが後程正式に時間をとるという事もあり止めている。どの局も社も彼の機嫌だけは損ねたくなかった。
さて、タラップを上がり艦内に入った二人を長身の老紳士が出迎える。
「ようこそ、グレートセイバーズへ。私めは英国にて怪物を倒しております、ロイヤルナイトことエドワード・アーサー・プレンダーガストと申します。以後お見知りおきを」
「初めまして。私は日本で怪物討伐に従事しているマジカル☆ミルキーです」
「ろっ、ロイヤルナイト様っ!? は、初めまひて、ぼっ、わたっ、ぼ、僕はサンシャインサムライですっ、よっ、よろひくお願いします!」
またしても二人の反応は対極的であった。
噛みまくったサンシャインにエドワードは柔和な笑みを浮かべ、言う。
「スーパーセイビア様より聞いていると思いますが、そこまで緊張して頂かなくとも大丈夫ですよ、サンシャイン殿」
「ど、殿だなんて……ぼ、僕はずっと貴方達に憧れていて……まさかこうして話せる日が来るだなんて、嬉しくて……」
俯き嬉しそうに呟く彼女を横目に、エドワードはミルキーへと視線を移す。
これまでは柔和だった表情が一転して冷たい物に変わる。
「ミルキー殿は変わらぬご様子ですな、鉄の心をお持ちの様で」
「如何なる状況にも対処出来る様常に平静を保つ様にしておりますので。お気を害したのならば謝罪致します」
何故か露骨に敵意を向けてくるエドワードにミルキーは拳の振り下ろす先を無くそうと動くが、本当に何故かより険悪なムードになってしまう。無論サンシャインに割り込める勇気など無い。
結局慌てた様子でセイビアが仲裁に入り、エドワードとはそこで別れて三人は奥へと向かう──そこで、急に彼女らは何か柔らかい物に包まれる。それが抱き締められているからだ、という事に気付いたのとほぼ同時に彼女らの頭上から妖艶な声が掛けられる。
「嬉しいわ~、ファーティマと同じ、女のヒーロー」
そうして二人は解放され、自分達をこれまで抱き止めていた人物の全体像を知る。
やや色黒の肌に大きな印象を受ける目、緑がかった瞳、カールした長い髪は光の当たり具合で金色にも黒にも見える。
驚くべきはそのスタイルだろう。所謂モデル体型という物で、スラリと伸びた脚に細身の身体、背丈はミルキー所かサンシャインよりも一回り大きく、180センチはあるのではないだろうか。
どこか神秘的な印象すらも受けるその女性の事を二人は知っており、最初にアクションしたのはやはりサンシャインだった。
「あ、貴女はカフラン・アルザハビ様……!」
「そうよ~。エジプトの至宝、カフラン・アルザハビことファーティマ・イスマイル。ファーティマって呼んでね~?」
そんな間延びした喋り方をする彼女はエジプトで活躍するヒーロー、カフラン・アルザハビである。
彼女は嬉しそうな表情を浮かべ、二人に話しかける。
「これまで男所帯だったから~、楽しみ~」
そう、現状セイバーズの構成員は彼女を除き全員男なのである。その全員が紳士的な人物であるとはいえ、やはり男のグループの中に女が一人というのは若干不安だったのだ。
そんな中で現れた少女のヒーロー、それも二人。ミルキーが怪しいとかサンシャインの影が薄いとかはどうでもよく、彼女にとってはただ単に嬉しかったのである。
高評価、ブックマークはモチベに繋がるのでよろしくお願いします




