あつまれ!キズナでつながるセイバーズ
エンジンの駆動音を轟かせながら大戦艦が空を征く。
記者会見が終わった後、スーパーセイビアを乗せてノーフォーク海軍基地を離陸したグレートセイバーズは世界中のヒーローを集める旅に出た。
まずは南米のヒーローが居ない国々を回り、そしてブラジルで一人乗せ、次に向かったのがイギリスだった。
「エドワード! 元気にしてたかい?」
「お陰様で。そちらこそお元気そうで何よりです」
スーパーセイビアは艦から伸びたタラップを軽快に降り、待っていた一人の男に両手を広げて駆け寄る。
その男はシックなスーツに身を包みモノクルを装着し、白い髭を生やした正に老紳士といった出で立ちであり、細身ではあるが立ち居振舞いからは騎士の様な気品が溢れ出している。
その老紳士の名はエドワード・アーサー・プレンダーガスト。現役のイングランド伯爵であり、イギリスで活躍するヒーロー『ロイヤルナイト』その人である。
セイビアは彼との友誼を報道陣に大仰に見せつけ、共に戦艦へと入っていく。
「して、これからの航路はどうなっているのですかな?」
「イギリス上空を低空飛行した後は大陸に渡り、西部を回った後にドイツでライヒを拾う。そこから東欧諸国、アフリカ、エジプトでカフランを拾い、中央アジア、そして中国でユーフン、オセアニア。最後に日本だ」
「なるほど。件の魔女ですな」
「ああ。私としては是非とも直に会っておきたい」
ガクン、と艦が揺れる。離陸し始めたのだろう、ここからは先程彼が言った通りロンドンを低空飛行し、彼の姿を民衆に見せるのだ。
これはイギリス政府から依頼された物であり、強い人気を誇るロイヤルナイトとアメリカのヒーローたるスーパーセイビアが並んでいる姿を直に見せる事で両国が良好な関係を築いているという風に見せたいらしい。
そこまで言って、セイビアはははは、と笑う。その笑い声を聞くのは隣のエドワードだけだ。
「面白いだろう? 政府はまだ、俺が国家の狗だと思っているらしい」
「我々は独立した武力。それを個別の国家の為に使う事はない……」
「その通り。ヒーローは国家の為には動かない。タイタンを倒しているのがその様に見えているだけだというのにな。それを伝える為にセイバーズを作ったのだが、どうやら理解出来なかったようだ」
そう、それこそがセイバーズ設立の真の目的。その国家のヒーローが、その国家の為には動かない、という意志表示。
ヒーローとはタイタンを倒す為に存在するのであって国家が保有する暴力装置ではない。スーパーセイビアはヒーローが生まれた時からそうなってしまう事を危惧し、セイバーズを作り独立勢力として動ける様にした訳だ。
字面だけ見れば、高尚な理想を掲げている様に見える──もしもヒーローが世界に反逆した時、それを止められる者は誰も居ない、という点を除けば。
無論それはこの場に居る二人にも、各国政府も理解している。しかし、現状彼らに従うしかない。何しろ、タイタンを倒せるのは彼らだけなのだから。
その関連で、セイバーズへの対抗手段としてその勧誘を蹴り続けるマジカル☆ミルキーに対してのアプローチがより激しくなっていたのだが、怪物が現れなければ姿を一切見せない彼女がそれに答える事はなかった。
「まあ、ヒーロー同士の友誼を見せつけておくのは悪くない。民衆にも安堵を与えられるからな。私としては混乱と不安は避けたい」
「そうですな」
その後、予定通りグレートセイバーズはロンドン上空を飛び、ヨーロッパ大陸に渡る。
そして各国の民衆に勇気と希望を与えながらヒーローを拾っていった。
──────
「そろそろかあ。日本が最後なんだな」
「地理的にはそうなるのでしょうが……少し怪しいですね」
「だな。警戒しておくに越した事はない」
一方その頃、夜空とミズリは月面基地──マジカル☆ムーンキャッスルにてポテチを齧りながらニュースを観ていた。その内容は、グレートセイバーズが日本にまもなく到着する、という物。
今は日本時間にして金曜日。学校も終わり翌日が休日なので気楽に過ごしている……のだが、スーパーセイビアが来るという事で僅かながら緊張感も漂っている。なおポテチは齧る。
「俺の予想が当たれば……」
と、彼が言いかけたその時、基地内に警報が鳴り響く。
「……マスター」
「やっぱりな。ミズリ、頼む」
「了解しました」
そうして彼女はマジカル☆ミルキーとなり、放たれたビーコンへ向かってテレポートした。
さて、今回怪物が出現したのはまたしても東京。出現させている奴は首都圏に何か恨みでもあるのだろうか。ただ今回は街中ではなく豊洲だった。
しかしその形状は以前の様な怪獣型ではなくよく分からない不定形な生物。ショゴスやスライムと言った方が伝わるだろう。これまでは生物的であったので何処に弱点があるか分かりやすかったが、今回は外見からそれを予測するのは難しい……と思うかもしれないが、変わらない。何しろ前回の怪獣は頭を吹っ飛ばしても生きていて、尚且つ傷口から触手を伸ばしてきたのだ。
「"ゲリエドラグーン"」
まずは小手調べ。腰の拳銃を手元にやってフル充填した攻撃を放つ。
出来るだけ中央を狙ったその攻撃はしかし通用しない。スライム(仮称)は逃げ惑う人々へとゆっくりと進んでいく。スライムが進んだ跡はコンクリートがごっそりと剝ぎ取られているので人間など一たまりもないだろう。
「液体で構成された身体でレーザーを吸収している……計算上は有り得ないのですが、魔法でしょうか」
彼女の分析では、どうもスライムはその身体でレーザーの熱量を吸収、中央に辿り着く前に消滅させている様だ。
その程度の厚さではとてもではないが吸収できない熱量の筈なのだが、現にスライムはそれを成し遂げている。彼女は銃を腰に戻し、バズーカを取り出して放つ。
放たれた弾はスライムの身体に沈み込み、溶かされる前に爆発する。
「……効いていない。これはプランSに移行するしか──ッ」
と、彼女が分析をしていた所にスライムが自らの身体から伸ばした触手を向けてくる。ミルキーは箒を動かしてそれを避けつつ機関砲で近付いて来る物を対処していく。
だが、肝心のスライム本体へ対しては未だ有効打を与えられない。はっきり言って目の前の怪物は"マジカル☆ミルキー"に対しての天敵であった。
だが、方法がない訳ではない。彼女は|上空で待機している夜空へ向けてそれを要請しようとした、その時だった。
「──"シャイニースラスト"!!」
何処からかそんな声が聞こえたかと思えば、次の瞬間にはスライムが縦に分割されていた。恐らく未知の液体で守られていた中心部に核があったのだろう、それを切断されたスライムは灰となって消えていく。
それを確認しつつ、ミルキーはその声が聞こえた方向へと顔を向ける。
「……サンシャインサムライさん」
「ミルキー……どうだ、僕だって、僕だって……!」
と、どこか悔しさを混ぜ込んだ、勝ち誇った様な声を滲ませるサンシャインサムライがそこに浮いていた。
その手には刀が握られており、恐らく今の攻撃は彼女がやったのだろう。
「討伐して頂いてありがとうございます。今の私ではアレを倒すのは不可能でした」
ミルキーは素直に頭を下げる。
倒す方法はあった、だが奥の手は隠せるなら隠しておいた方がいい。
「僕だって……はぇ?」
と、あまりにも素直に感謝された事にサンシャインは目を丸くしながら脱力する。
「……? 何を驚いているのですか?」
「だ、だって、だってだって」
彼女が何かを言おうとした、その時だった。
「Beautiful!!」
パチ、パチ、パチ、と拍手の音と共にそんな声が二人にかけられる。
ミルキーは冷静に、サンシャインは驚いてそちらを向くと、そこには一人の男が浮いていた。
「──初めまして、日本のヒーロー達。私はスーパーセイビア、最初のヒーローさ」
彼は崩れぬ柔和な表情でそう告げた。
技の名前を英語系にするか漢字にするかで悩みました
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