ワクワクの高等学校へ!入学式へレッツ&ゴー!
四月──若緑の大地に桃色の衣が纏わりつく季節。
澄み渡る蒼空の下、コツ、コツ、コツ、とおろしたてのローファーの裏で石畳を打ち付ける少年少女達を桜吹雪が祝福する。
そう、今日は天宙高校の入学式。過酷な受験戦争を勝ち抜いてきた者達が、新たな生活に胸躍らせて臨む記念すべき日。そして、俺達にとっては約半年ぶりの学校という事になる。
新入生達の中に紛れて高校の前に立つのは俺、達也、ミズリの三人。この中で新入生はミズリ一人である。
俺と達也、というか召喚事件に巻き込まれた生徒の事情は複雑であり、今年も一年生をやるものの入学式には出なくてもいい、との事だった。だが、そもそも在学生も結局入学式には出席しなければならないのでこうして来ている訳である。
隣には女子用の制服に身を包むミズリの姿。その美貌からよく目立ち、先程からチラチラと視線を受けている。俺の今の気分はまるで授業参観であった。
「ミズリはこっちだな。じゃあまた後でな」
「マス……夜空さん、お気を付けて」
「何にだよ」
『それではこれより、2023年度天宙学園高校入学式を始めます。新入生、入場』
ズラ特有の若干違和感のある頭髪を持つ教頭の声で、会場である体育館の中に新入生達が整列して入ってくる。
やはり黒や茶の中に混じる銀髪というのはよく目立つもので、ミズリが来ると在学生の席が少しざわめく。少し気になって旧クラスメートの方に耳を澄ませてみたが、聞こえてくるのは他のそれと同じ様な物ばかり。一瞬、ミズリの姿を見る事でイルミスでの記憶が蘇ったりしないかと不安になったがどうやら杞憂だったようである。
また、中には玲の姿もあった。彼女はこちらに気付くとウィンクをしてくる。それに在学生の女子達から黄色い悲鳴が上がり、俺は小さく手を振っておく。
彼女らは暫く歩き、教頭に向かってお辞儀させられると用意されていたパイプ椅子に座る。
その後起立して国歌斉唱、校長の話があり、全員の名前が呼ばれていく。
「月影玲!」
「はい!」
玲の名前が呼ばれ、起立する。それに同じクラスになった女子達が歓喜の声を上げる。そんな彼女らに玲は再びウィンクをし、またも黄色い悲鳴が上がる。そういうキャラで行くのか。
そして、その何人か後。
「ミズリ・シャーロット・ミルキーウェイ!」
「はい」
ミズリが呼ばれ、起立する。それに同じクラスになった男子達が小さく歓声を上げる。
そんな彼女に玲は表面上微笑み、しかし何処か冷たい物を秘めている、そんな様な雰囲気が感じ取れた。因みに二人は俺達とも同じクラスである。
『新入生の皆さん、おはようございます! あたしは天宙高校生徒会長の相川真波です!』
背の低い生徒会長が挨拶を行っている。
彼女は確か俺達が召喚される前はまだ会長候補の段階だった筈だ。俺もビラを貰ったから覚えている。こうしてみると、改めて俺達の失った時の長さを思い知らされる。
『あたしから言う事はヒトツだけ! 楽しんでください! 以上!』
『えっ……あ、相川生徒会長、ありがとうございます。続けて新入生代表による宣誓です』
あまりにも簡潔すぎる式辞に若干司会が困惑しつつ進めていく。
『新入生代表、月影玲!』
「はい!」
元気よく返事をし、立ち上がる玲。どうやら彼女が今回の学年首席であるらしい。
因みにミズリは受験では間に合わないので受験枠とはまた別に取られている留学生枠にしれっと紛れ込ませていた。多分普通に受験していれば彼女が首席だったのだろう。
首席による宣誓は予め決められた原稿を読み上げるだけ、先程の生徒会長の物の様な面白さはない。というか生徒会長の祝辞も原稿がある筈なのだが……まあいいか。
その後来賓などの祝電、校歌斉唱があり入学式は閉会する。
次はクラスごとのホームルームである。
「あー、今日からこの1年1組の担任になる松本だ。本来は二年の何処かになる筈なんだが色々あって一年の担任になる事になった。これからよろしく」
担任は前と同じく松本先生、少し安心した。しかし相変わらず覇気のない顔と声である。
さて、入学式の日のホームルームといえばそう、自己紹介の時間である。
「斎藤達也です。趣味はゲームです、よろしくお願いします」
「櫻井夜空。趣味は読書、ゲーム、日記、あと旅行。達也共々例の事件に巻き込まれたせいでベテラン1年生だ、何かあったら聞いてくれ」
「ミズリ・シャーロット・ミルキーウェイです。イギリスから来ました、日本語はマスターしているのでお気になさらずに。趣味は特にありません。よろしくお願いします」
「僕は月影玲、まあさっきも前で話したから知ってると思うけどね。趣味は読書と水泳! 皆、よろしくね!」
取り敢えずはこんな感じ。各人に対する反応は最早言うまでもないだろう。因みに俺達に対しては好奇の視線こそ向けられたものの直後がミズリだったが為に完全にそちらに持っていかれた形になる。
その後は役職決め。俺達の一度目の時は決まらなかった──面倒なので──学級委員長だが、今回は玲が即座に立候補した為にすぐに決まった。まあ確かに学級委員長としてクラスを引っ張れるオーラは出ている。
それ以外には特筆すべき事はない。
俺達は一度聞いた話を聞き、ホームルームは終わったのだった。
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