ワクワク!月面基地建設大作戦☆(後編)
さて、お手製月面基地の各区画を解説していこう。
まずは基地の入り口。俺達も入ってきた縦孔から入るのだが、その周辺に隠遁式の対空砲や警戒装置を設置した。
隠遁式460mm三連装陽電子砲塔を1基、隠遁式155mm連装陽電子両用砲塔を5基、40mm四連装パルスレーザー砲塔を10基、ホーミングレーザー発射機を24門。並みの艦隊相手ならかなりの間持ち堪えられるであろうこれらの動力は基地に備え付けられた、ミズーリの物と同じ永久機関から供給されており侵略者を迎撃する……予定である。現状は直撃しそうな隕石相手にしか役立っていない。
さて、そうして縦孔を下っていき現れる広大な空間の中に基地は建設されている。
全体的なシルエットとしては、魔法の城や学校の様な印象を与える形状にSF的な要素を加えた様な感じだ。
基地は一本の柱に寄生する様に造られており、数段の階層に分かれているのは城を思い起こさせる。その中から生えている様に見える天盤を支える柱にも建物は建設されており、まるで巨木に造られたツリーハウスの様だ。
細かく見ると、材質はレゴリスである為に全体的に寒色であり、またあまり突起の無いそのデザインは未来的な印象を与えるだろう。これらのデザインはイリィの監修のもと俺達で作り上げた設計図をミズーリのAIに"それらしい"物に手直ししてもらった物である。特徴的な部分は全てイリィの発想だ。将来はデザイナーか建築士だろう。
中層部からは無数のリングの様な物が生えており、あれがミズーリ等の宇宙船が停泊する港である。
リング状の港は停泊した艦の形状がどの様な向きであれ対応できるようにする為の物だ。そしてリングの直径はある程度なら操作でき、修理などメンテナンスも容易になっている。
一応六つ作ったのだが、現状はミズーリ一隻しか使っていない。さみしい港である。また、ワープアウト用のガイドビーコンも設置してあり、これを利用すれば一発でここに来る事が出来る。その回線は俺とミズリしか知らない。
流石に一々何分もかけてここに来るのは面倒くさい、という事で考え出した対策法、それはコスモパンサーやコスモイーゼルなどの艦載機にワープリアクターを取り付けるという力技だった。これにより俺はほぼタイムラグ無しで基地まで来れる様になったのである。
また、基地そのものにも武装は施されており、幾つかのパルスレーザー砲塔やミサイル発射管がある。加えてシールドを展開可能であり、万が一洞窟内に侵入されても敵の基地への攻撃を耐える事が可能である。因みに現状その予定はない。
ここからは内部の説明だ。
まずはエントランスホール。ここはかなり広くとってあり、相当数の来客にも対応可能、突然の戦闘もバッチコイ、という思想の元作った。そもそも仮想敵はヒーローなのだ、恐らく戦場は基地の中になるだろう。
デザインとしては一言で表すならば"SF風ゴシック・ロマネスク建築"だろうか。未来感バリバリでありながらもどこか古臭いテイストもある。柱の配置やそのアーチを多用したデザイン、そしてステンドグラスにも見える装飾が施された窓などは伝統的建築を思い起こさせるが、しかし材質や丸みを帯びた形状、力学的配置などは未来風だ。
ここにあるのは受付と椅子と机。ドリンクサーバーがありソファーは有り得ない程にフカフカで心地良いので一生ここに居座りたくなってしまう。
また、中層にはそれ以外にも実験室や倉庫などがある。一体何を実験するのかと思うかもしれないが、俺も分からない。取り敢えず空いた部屋に実験室と銘打ち、それっぽい機械とかを置いただけのハリボテルームである。雰囲気は大事なのだ。
また、演習室もある。今後魔砲少女としての練習はここで行う予定だ。
さて、そこから下がって下層は工場スペースと機関室が存在する。
工場はこの基地を建設した際にわざわざ組み立てた大型3Dプリンターが収納されており、何かしら必要になった時はここで製造する事が出来る。ミズーリの艦内工場程の精度は無いのだが、そこまでの精度を必要とする物を製造する事は多分ないだろうからあまり気にはしていない。
機関室には先述したミズーリと同じ永久機関──メールリンス・エンジンが収納されており、基地全体にエネルギーを送っている。ここは万が一にも破壊されては困るので分厚い装甲で覆い、何重にも警戒装置を張っている。因みに非常用動力として核融合炉も設置してある。この非常用動力ですら未だ地球では実用化出来ていない代物である。
さて、二段上がって上層。ここは居住区となっている。
まずはレストラン。外部に面しており、大きく開いた窓からは洞窟内の神秘的な景観を楽しみながら最高級の食事に舌鼓を打つ事が可能である……まあ、最高級といってもミズーリのそれと同じなのだが。
天井からはシャンデリアが吊るされ、しかしあまり威圧感は感じさせないリラックスできるバランスを保っている。というか、保つ様にした。そんな毎食高級レストランなんて身が持たない、俺達が。
次に俺達の部屋。現状は俺、ミズリ、達也、イリィ、ついでに先生の分の部屋を作ってある。部屋は1LDK風呂トイレベランダドリンクサーバー旅館にある謎の空間付き。空き部屋はまだまだあるので少なくともあと二十人はここに永住出来る。
大浴場。アホ程広い物を用意した。ジャクジー、寝風呂、サウナ、水風呂は勿論の事、低重力状態の表面張力を利用した"浮き風呂"や地下から掘り起こした氷を融かして作った"月の源泉風呂"など多種多様な物を用意している。
「月の氷なんて世間に知られれば大騒ぎになる筈だけどね……」
と、苦笑いで達也は言う。
月に水が存在する可能性は昔から指摘されていた。恐らくNASA辺りは喉どころか目から手が出る程欲しがる物だろうが、そんな代物を風呂なんて物に無駄遣いしてもいいのだろうか? と、良心が訴えかけたが全て跳ね除けた。
かつてアームストロング機長は人類で初めて月に降り立った。ならば俺達は人類で初めて月の温泉に入る人間になろう、という事である。因みに入った感想だが、若干ヌルヌルした。月の泉質は弱アルカリ性である。ここ試験に出ます。
あとあるのはバーやストレッチルーム、レジャースペース。
バーには酒(ミズーリで造った。純度100%密造酒)が置いてあるが、現状飲めるのは先生だけである。いずれ招待するつもりだ。
日本じゃないしいいかな、と思って一口飲んでみたが、ワインは思ってた味じゃなかったしウイスキーは苦かった。カルーアミルクは美味しかったがこれならコーヒー牛乳でもいいかな……高校二年生、春。俺の舌はまだお子様であった。
ストレッチルームは要するにジムである。特筆すべき点はない。
レジャースペースは映画館やボーリング場、カラオケルームやテニス場などがある。要するに総合テーマパーク的なそれであり、ここに長居する事があれば世話になるだろう。
さて、そしていよいよ最上部。ここは基地全体をコントロールする場所だ。
まずは巨大な窓に面している総指令室。かなり広い空間にSFじみた操作盤などが幾つも設置してあり、またホログラムで幾つもの画面が空中に投影される様になっている。港の調整もここで行う。
最上段の席に座ると非常に興奮するが、現状ここが役立つ出番はない。何かしらエイリアンでも攻めてきてくれればここから基地の防衛施設を操ったり防衛艦隊に指示を飛ばしたりと出来るのだが……まあ、平和が一番だ。寧ろここが役立つ場面なんて来ない方がいいのである。
そして緊急用脱出装置。最上層の一部が切り離せるようになっており、エンジンも積んでいるので何かあって基地が陥落した際には逃げられる様になっている。多分そんな場面はこない。
番外編。基地が寄生している柱に吊り下げられる様にして建てられた六角形の建物、そこには大図書館が設置してある。
内装は完全に中世風であり、材質もわざわざ木材やレンガ風にしている程のこだわりっぷり。収納されている本は300万冊、わざわざミズーリのアーカイブから適当に印刷して並べてある。
基地本体とは居住区のある上層からエレベーターで繋がっており、まあ雰囲気はあるのでたまに使う……かも?
以上がこの月面基地の全貌だ。
因みに名前だが、候補としてルナシティだのリュンヌ・ラトゥールだのフォンブラウンだのグラナダだのが挙がったが、結局イリィの鶴の一声で決まった。
その名も──『マジカル☆ムーンキャッスル』
・ルナシティ:月の街(直球)。よく分譲住宅地の名前に使われてる。
・リュンヌ・ラトゥール:フランス語で月の塔。作者の別作品で使う予定だったがその作品が没になった。
・フォンブラウン:アメリカの宇宙開発者。アナ〇イム・エレクトロニクスの本社がある。
・グラナダ:紫おばさんがいる。
・マジカル☆ムーンキャッスル:イリィは賢いねえ将来はコピーライターか建築士だねえ
月の泉質がどうのこうのとかは完全に妄想です。野生の天文学者の方などいれば生暖かい目で見守って頂ければ幸いです
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