敵?味方?サンシャインサムライの憂鬱☆
バタバタバタ、けたたましい音を立てて報道ヘリが宙で立ち尽くすサンシャインサムライへと近付く。プロペラが巻き起こす暴風が彼女の髪とマントをたなびかせる。
「皆様おはようございます! 毎朝放送の増沢です! 我々は今、世紀の光景を見ていたのかもしれません!」
「テレビ……」
「こちらは毎朝放送の増沢と申します! 取材よろしいでしょうか!?」
ヘリから大胆に身を乗り出して彼女へマイクを向けるアナウンサー。そんな彼女に対してサンシャインは仮面の下で苦虫を嚙み潰した様な顔をする。
「貴女はマジカル☆ミルキー氏とどの様な関係にあるのでしょうか! 何故日本は二人のヒーローが居るのでしょうか!」
「ッ……!」
その明らかに予想出来た質問に、しかし彼女は何も答える事が出来ない。
こちらを見つめるアナウンサーの瞳には畏敬などこれっぽちも宿ってはいない。本来彼女が受ける筈だったそれは"マジカル☆ミルキー"という言葉を放つ時にしか向けられていない。
アナウンサーが彼女に向けるのは、好奇心から来る興味だけ。それがこちらを向くテレビカメラを通して日本全国から受けている様に思えてしまって。
「ぼ、僕の名前はサンシャインサムライ。ミルキーとは何の関係もありません!」
「ええ、も、もう少し取材をー!」
サンシャインはそれだけ言い捨てるとそのまま何処かへと飛び去ってしまう。慌ててヘリがそれを追おうとするが、そこで自衛隊のヘリが割り込んでくる。
『こちらは自衛隊です! そこの報道ヘリ、止まりなさい!』
「なっ、これは報道の自由の侵害だぞ!」
そこ以外でも同じ様な光景が見られ、結局報道陣はサンシャインの名とマジカル☆ミルキーとの僅かな関係性しか分からなかった。
だが、それだけでもある意味では十分であった。その日から報道のネタはミルキーとサンシャインが並行して行われる事となり、そして戦闘スタイルすら不明のサンシャインは殆ど妄想に近い記事を日夜書かれ言われ続ける事になる。
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「サンシャインサムライ、ね……いや、凄い名前だな」
「マジカル☆ミルキーも同じ様な物ではないでしょうか」
「いや流石に、でもそうなのかな……」
ややジト目気味のミズリにそう指摘され、俺は自分のセンスを疑いかけ、一旦考えるのをやめる。こういうのは勢いが大事、立ち止まって考えてはならない。
さて、今は二度目の戦いから帰還したミズリと作戦会議中である。
今回の出撃では大きな収穫があった。何しろ、日本に本来現れる筈だったヒーローが出て来たのである。
名はサンシャインサムライ、名前がアレなのはまあサムライという単語と英語の相性が悪いから仕方ない、本当に仕方ない。サムライと合わせて違和感がないのはラストだけである。
今回、マジカル☆ミルキーはセイバーズに勧誘を受け、それを断った。理由は正体がバレたくなかったからだが、サンシャインの反応からして少なからず悪印象を持たれた事は間違いないだろう。
取り敢えず、今後はセイバーズ所属のヒーローも潜在的な敵として見るほかない。まあ元から今回の怪物事件の犯人第一候補であったのでこうなる事も想定内だ。
今のマジカル☆ミルキーの行動は恐らく犯人の想定外の物だろう。しばらくこのまま倒し続けていたら、そのうちあちらから何かしらのアクションがある筈だ。それがセイバーズ──スーパーセイビアか、もしくはそれ以外かは分からないが。
「……でも、もしその時に家が巻き込まれるのは不味いな」
俺達が感知出来るのは魔力の起こりのみ。それ以外は感知出来ない。
正体がバレないように万全を期してはいるもののもしかすれば俺達が知らない方法で追尾されている可能性もある。
だから、マジカルミルキーとしての拠点が必要なのかもしれない。
「とはいってもなあ」
「ミズーリを使用すればいいのでは?」
「まあそれはそうなんだけど」
確かセイバーズは空飛ぶ移動拠点を作るとか言っていたし、こちらも対抗して宇宙拠点でもいいのかもしれない。
ただ……やはり地に足を付けた拠点も欲しい。ミズーリはほぼ無限の単独行動が可能とはいえ一隻の船なのだ。その母港も欲しいと思っていた所なのだ。
が、そこで問題となるのが土地。俺はどこかに土地を持っている訳でもないし、例えあったとしても建設の段階で多数の問題が発生するだろう。まさか建設会社に頼む訳にもいかないし……
「別に今すぐに考えなきゃいけない物でもないか……」
行き詰った俺は、取り敢えず寝転んでスマホを開く。
そして俺達がイルミスに居る間に世界一の金持ちに買収されていた水色のSNSを開き、ポケーっとタイムラインとスライドさせていた所で偶々鉤十字が目に入った。
ドイツのタブーを平然と流す、相変わらず汚いSNSだなあという感想を抱いた直後、俺の脳内に電流が走る。
「月があるじゃん」
そう、月である。地球の周囲を回っている月、その裏ならば基地を作っていてもバレない筈だ。
月の裏にはよく美大落ちのチョビ髭が居るやら宇宙人の基地があるやら都市伝説が多くある。一つくらい魔砲少女の基地があっても違和感はないだろう。多分。
思い立ったが吉日。俺は早速コスモパンサーに乗り込んで月へ赴く。ステルスモードにしているのでバレないとは思うが、まあ見つかったとしても追いかけてこれないので問題はない。
そして大気圏を易々と脱出し、僅か数分で月まで辿り着く。アルテミス計画を進めている皆さん、すみません。何気に月に来るのは初めてだ。ついでにアメリカ国旗と足跡も見ておきたいが、それはまた今度。今は本題に集中する。
「ここが月の裏かあ、暗いなあ」
「測定開始します」
未だ誰一人として降り立った事のない月の裏側、そこにある無数のクレーターの一つ──『賢者の海』と呼ばれるそこに俺達は着陸し、足跡を付ける。
そしてミズリが計測機器を取り出して地中の様子を測定する。月にはかつて溶岩が流れた際に造られた"溶岩チューブ"と呼ばれる地下空洞が無数に存在する。俺達が基地を作ろうとしているのもその中である。
「測定完了、北西の方角約5キロメートルの地点から進入可能な空洞を発見しました」
「よし、そこに行こう。"アストロバイク"!」
俺はエアバイクを取り出し、ミズリと二ケツしてそちらへ向かう事にした。
美少女とバイクに二ケツする、多分全少年の夢だろうが感じる感触は宇宙服のゴワゴワとした物だし、広がっているのは悠久の白い砂漠、空は瞬かない星空である。
かくして俺は月面にてレゴリスを巻き上げながら建設予定地へと向かったのである。
……所で、サンシャインサムライの喋り方、どこかで知ってる気がするんだよな。
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