魔砲少女に対する各々の反応集
「ま、魔法少女?」
「魔法少女とは、えーと……どういうものなのかね?」
魔法少女──そんな日本のサブカル界が生み出した単語はここに居る者達の大半にはどの様な存在であるのかも想像もつかなかった。若者たる和泉などは想像は出来たが、結局理解する事は出来ない。
「何か……違くないか」
「そっ、そう……ですね」
彼は職員にそう言う。
そう、違うのだ。想像していた物と。
これまで世界に出現したヒーローは、例えばアメリカのスーパーセイビア。藍色のピッチリと身体に張り付く様なコスチュームに赤色のマントをたなびかせた筋骨隆々の男。アメリカの力強さを反映した様なコテコテのスーパーマンである。
それ以外にもイギリスでは『ロイヤルナイト』。バイオレット色のこれまたピッチリとした燕尾服モチーフのコスチュームを身に着けた騎士風のヒーローでありロングソードで戦う。
これらの様に、ヒーローはその国のお国柄を反映した様な見た目や能力をしている。そう来たら日本は忍者か侍かと考えられていたのだが、現実は魔法少女である。日本要素がアングラ過ぎる。
「マジカル☆ミルキーに助けられたという少女の証言では、彼女は未知のバリアーを張り怪獣の足を止め、その後自分達に向けて開いていた口へと銃の様な武器で光線を放ち、最後に名だけを名乗り箒に乗って何処かへ飛び去ったそうです」
「魔法少女なのに銃を使ったのか? ますます意味が分からんぞ」
和泉は困惑した。せめて魔法か科学がどちらかに絞ってくれ。
彼の困惑の理由はもう一つある。それは、恐らく怪獣が倒されたと思われるその時に全くそれらしき魔力を感じなかった事だ。
彼は対魔任課長というだけありそれなりに魔力の探知には長けている。だが、この総理官邸から感じ取ったのは怪獣のそれのみであり、魔法少女らしきものは全く感じ取れなかったのだ。
銃で倒した、と職員は言ったがまずそれは有り得ない。人間が持てるサイズの銃で倒せるならばとっくの昔に米軍が倒しているだろう。確実に魔法が関わっている筈だ。
……実際には、ミルキーの使っている銃──ゲリエドラグーン・ミルキーカスタムが放ったのは単なるパルスレーザーである。ただしその威力はかなり高く、ミズーリに対空砲として装備されている105mmパルスレーザーと同等以上だ。
イルミスからの帰路、レヴィドリアンを回った際に得た知識によってゲリエドラグーンを魔改造した事によりこの火力を得る事が出来た。
イルミスに腐る程あった魔石が宇宙ではコスモダートと呼ばれている、というのを覚えているだろうか。そしてそれは銀河間航行には必須の永久機関を作る為に使われる、という事も。
何が言いたいかといえば、ゲリエドラグーンにコスモダートを使った小型の永久機関を組み込んだのだ。コスモダートは超希少鉱物であり通常はそんな贅沢な使い方などしないのだが、ミズーリには腐る程積んであった。因みに魔石を使っているからといってその機関から発生するエネルギーに魔力は混ざっていない。
まあ要するに、マジカル☆ミルキーは完全に力押しで怪獣を倒したのである。単純に米軍の火力よりもゲリエドラグーン・ミルキーカスタムが出した火力の方が大きかったというだけだ。この世には知らない方がいい真実という物もある。
「な、何はともあれ我が国にもヒーローが現れたのは喜ばしい事だ。直に会って是非とも礼をしたい。何とか接触を図ってくれたまえ」
「わ、分かりました」
総理はそう言った。
そしてその翌日、テレビ、ラジオ、新聞、SNSなど全てのメディアでマジカル☆ミルキーに対する呼びかけが実施されたものの、結局彼女が彼らの前に姿を現す事はなく。
現状怪物を倒せる戦力との意思疎通が出来ないという脅威のリスクに対して内閣の面々の胃は更に痛むのだった。
──────
「ジャパンでタイタンが倒されたそうです」
「そうか、実に喜ばしい事だ」
アメリカ、ニューヨーク。怪獣が現れる以前から上昇し続けていた地価は今、鰻上りに上昇している。
その理由は、アメリカの守護神にして最初のヒーロー、スーパーセイビアが住んでいるからだ。世界最強の男のお膝元で枕を高くして眠りたい──そう思う人々が詰めかける事で地価や家賃はかつてない程に上がっているのだった。
そんなスーパーセイビア──ジェイムズ・リドリー・グランストンは今、自室の椅子に座りながら秘書からの報告を受けている。彼の自室は彼の保有する高さ480メートルのスカイスクレイパーの最上階に位置しており、彼の眼下には民衆の生活渦巻く世界最大の都市が映っている。
さて、秘書の言葉にジェイムズは事無さげに答える。まるで何もかも予定通りだと言わんばかりに。しかし、そんな彼の言葉に秘書は怪訝な表情を崩さない。
「それが……倒したのは"マジカル☆ミルキー"という少女らしいのです」
「……何?」
その言葉に、彼は眉をひそめる。
「サンシャインサムライではないのか?」
彼はその名を口にする。しかし秘書は否定し、現状分かっているマジカルミルキーの特徴を伝える。それを聞き終え、ジェイムズは眉間に皺を寄せていた。
「私はタイタンが現れそうな国家にヒーローを派遣、もしくはその才能がある者の隠された才能を開花させている。日本の場合はサンシャインサムライ……だった筈だ」
それは表には隠されている事実だった。
表向きには各国のヒーローはこれまで力を隠していたか自力で覚醒した事になっているが、本当は自力で覚醒したのはジェイムズただ一人だけなのだ。そして彼は、タイタンに対応するべく世界を回り、才能がある者が居ればその才能を覚醒させ、見つからなければ自分の元から派遣していた。
では何故それを隠しているのかといえば、世界にスーパーセイビアという存在を過剰に恐れさせない為だ。
今やヒーローは世界を守る最大にして唯一の戦力。独立した、各国で対等だと思われているそれが実はジェイムズただ一人へ深く信仰にも似た忠誠心を抱いていると分かればどうなるだろうか。世界はジェイムズに支配されているも同然と考え、彼を排斥する方向に動いてしまうかもしれない。
ならばこの事実を隠し、各国のヒーローは"セイバーズ"という括りであくまでも同等の存在であると知らしめておいた方がいい。そう考えた訳である。
だが今回日本に現れたヒーローの事を彼は知らなかった。これまでの常識と照らし合わせれば有り得ない話である。
「……まあ、私という自力覚醒者も居るのだ。世界の何処かにもう一人いてもおかしくはあるまい」
「そう、ですね」
「うむ……サンシャインサムライの方はどうしている?」
「現状は静観している様です。どういたしましょう?」
「そうだな……マジカルミルキーに接触する様に伝えてくれたまえ。マジカルミルキーとやらもヒーローである以上、セイバーズには入ってもらわねばな」
「かしこまりました」
軽く頭を下げ、秘書は出ていく。
そうしてたった一人になった部屋の中、ジェイムズは左手で顔を覆い、呟く。
「……どういう事だ……?」
彼のそんな呟きは、誰にも聞かれる事なく消えていった。
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