魔法少女の始め方
「実はな……俺、魔法少女始めようと思うんだ」
「「……はい?(なのです?)」」
俺の言葉に、その場に居た二人は同じ声を出す。
ミズリがホームステイした翌日、俺の家、俺の部屋。そこに俺、ミズリ、達也、イリィは集まっていた。理由は俺がこれを伝えておきたかったからである。そして、二人は予想通りの反応を示した。うん、まあそうなるよな。
「まず、今この世界が謎な状況になってるのは知ってるよな?」
「え、う、うん。何か化け物とヒーローが戦ってるらしいね」
未だ困惑から立ち直れていない様子の達也が言う。
「そう、個人的にそのヒーローが怪しいと思ってるんだ」
「まあ確かにタイミングが良すぎるとは思うけど」
「だから魔法少女になって倒す」
「ちょっと待って」
彼が慌てて止める。
まあ、彼が言いたい事は何となく分かる。
「前後に全く繋がりが見えないんだけど」
「要するに、こっちでヒーローを作り上げて怪物を倒しつつ他のヒーローについて調査しよう、って事さ」
「何で魔法少女なの?」
「趣味」
まあ、ある意味ジャパンっぽいと思う。多分大半の人間が「侍とか忍者じゃねえのかよ!?」って反応にはなると思うけど。
しかし、魔法少女を作り上げる……一見ふざけている様に見えるだろうが、実の所大真面目な計画である。
まず大前提として、ミズーリの事は露呈しない様にする。軌道上からの艦砲射撃が一番手っ取り早いのは事実だが、一度や二度ならまだしも怪物出現の度にそれをやっていては確実にバレる。そしてバレれば色々と問題が起こるだろう。最悪の場合、俺達の帰還との繋がりすら露呈しかねない。それでは平穏な生活など送れる筈もない。
ならば、ゴミを隠すならゴミの中作戦だ。|この世界の現状のフォーマット《・・・・・・・・・・・・・・》に乗っかってしまう方が安パイである。ヒーローならばそもそもが突然現れた存在である為に多少怪しくとも受け入れられるだろう、という訳である。
「本当は俺がやろうと思ったんだけど」
「え、魔法少女を? 女装して?」
「うん。あいや、別にそれだけじゃないぞ、某全身機械の甲冑で覆った感じの方向性のも考えてたが……ミズリがな」
そう、最初は俺がヒーローをやるつもりでいたのだ。
最新技術を無駄に使って女装して魔法少女をするもよし、メカメカしさを全面に押し出していくのもよし、兎に角、自分でやろうと思っていた。が、そこにミズリが待ったをかけた。
「マスターを危険に晒す訳にはいきません」
「あー……まあ、夜空君身体能力は……」
「ダメダメなのです」
「ひどい。まあ事実だから仕方ないけどさ」
その点に関してはイルミスの最終決戦で嫌という程思い知らされた。でもあれは奇襲で何の準備も出来ていなかったから起こった事であって前準備をしっかりとしていれば問題ないとは思うのだが。
「いやあ……夜空君を前衛で戦わせるくらいなら僕が戦うよ」
「仮に事前の準備で対応しきれない事があった場合マスターの身体能力では立て直しが出来ない可能性が高いです」
ボコボコである。
「でもミズリちょっと嫌そうにしてたじゃん」
「……問題ありません」
という訳で、ヒーロー役は俺ではなくミズリがやる事になったのである。俺は後方でバックアップだ。まあ諦めた訳ではないが。だってそういうの憧れるだろ?
「そのまほうしょうじょっていうのはどんなのなのです? イリィみてみたいのです!」
イリィが興味津々に訊く。
そういえば艦でもミラフィア──日曜朝8時30からやっている女児アニメ。プリティでキュアキュア──を結構観ていたな、というのを思い出す。
「ああ、そうだな。先に見せておくか。正体がバレない様に現場には変身した状態で向かうんだが……」
「そうなのですか……」
変身シーンが無い、彼女がしゅんとする。
「……一応変身バンクは用意してあるぞ」
「! みたいのです!」
暗くなっていた彼女の顔が一気に明るくなる。
備えあれば患いなし。こんな事もあろうかと。その辺りを凝って作っていて本当に良かった。
「じゃあミズリ、頼む」
「了解いたしました」
俺がそう言うと、彼女は立ち上がり薄水色の小さく丸っこいガラケーを取り出した。古臭いけど、まあいいだろう。俺の世代だと変身アイテムといえばこんなのなのだ。
「では、始めます……」
パチリ、ガラケー──『マジカルモジュール』を開き、そこにあるボタンを幾つか押す。
これが変身の合図。これにて行われた操作により、スキルの異空間に収納中の衣装が順番に送られていくのだ。
「ミルキー、メタモルフォーゼ」
彼女が抑揚の無い声で言う。瞬間、彼女の着ていた服が光に包まれ、銀水色の光のワンピースの様に変わる。
まず、モジュールの画面に服が映し出される。
銀色を基調に水色のアクセントが入れられたドレス状の衣装。スカート丈は膝上10センチ程度、やや刺々しい印象を与え、後方にかけて若干丈が長くなっているそれは、上から見ると星の形になっている。
半袖のパフスリーブ、若干大き目の襟は立ってうなじを隠し、衣装全体の刺々しさのバランスをとる為に臀部の辺りに大き目のリボンがあしらわれている。
それが映し出された状態で、モジュールのカメラレンズを自らに向けてボタンを押す。カシャリ、という音と共に光のワンピースが弾ける様にその衣装へと変わる。
次に映し出されたのは手袋とタイツ。白の長手袋に白のタイツが映し出され、またもシャッターを切りそれが彼女の身体に転写される。
次はブーツ。こちらは銀水色を基調としたロングブーツであり、土星の環の様な薄いリングがふよふよと謎技術で浮いている。それも転写。
次は髪。ミズリは元々銀髪だが、それを更に白銀色にした様な長い髪を右側に括ったボリュームのあるサイドテール。それは星雲の様なモヤモヤとしたシュシュで留められ、また所々に丸い白金色の小さな飾りが輝いている。
次は顔。多少のメイクをして、そこの上から狐の面を被る。
ここで何故面を被るのかといえば、単純な話で正体を隠す為だ。ここは現実であり、恰好が違っていても顔は分かる。なので折角メイクはするものの面で顔は隠す必要があったのだ。
最後に武器。柔らかな印象を持つ水色のホルスターが腰の辺りに現れ、そこに銀色に塗装されたゲリエドラグーン・ミルキーカスタムが収納される。これが彼女のメイン武器になる。
そして、モジュールをそのホルスターの横にある袋に収納し、そして決めポーズとセリフだ。
上を向き、左手を掲げて握り締め、言う。
「無限に広がる大宇宙」
そしてその手を払い、名乗りを上げる。
「マジカル☆ミルキー……!」
「「おおー……」」
パチパチパチ、二人が拍手をする。ただし達也のそれと比べて明らかにイリィのそれの方が大きかったし、彼女の目は輝いていた。
「すごいすごーい!! わたしもへんしんしたいのです!!」
「えっ」
「ははは、安心してくれ。ちゃんとイリィの分も作ってあるから。専用のをね」
「やったー!!」
「ちょっ、ちょっと夜空君! イリィはもう戦わせないよ!?」
俺の言葉に慌てる達也。さすがにそんな事に気が回らない俺ではない。
「安心しろって、変身できるだけで戦う能力は無いから」
「あ、そうなんだ……なら良かった……」
「そもそもミズリのやつだって衣装自体に何かある訳じゃないからな」
彼女のそれは単なるコスチューム。戦う為の道具はまた別に用意されている。
そんなこんなで、マジカル☆ミルキーお披露目会は終わった。後は本番を待つのみである。
そしてそれから二日後。
東京、新宿。そこがミルキーの初陣となった。
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