決着
「"接着"!!」
彼が叫び、次の瞬間イルミスは驚愕する。
抜けないのだ。自分に突き刺さったアンカーが。見るからに浅くしか刺さっていないそれは、しかし溶接でもしたのかと思う程にへばりついて離れない。
──ああ、終わった。
さて、それをやった張本人たる達也はといえばそんな事を考えていた。
トリアルヴィンは解けてしまった。きっとすぐに自分は殺される。実際背後からはメイテルの気配がしっかりと伝わってきている。
でも、これでいいのだ。あとは夜空君が何とかしてくれる。自分は殺されるだろうが、魔王が他の人々を殺す前に彼が神を殺し洗脳を解くだろう。それになにより──僕は、夜空君の役に立てた。それが何よりも嬉しいのだ。
そうして彼が眼を閉じ、死を覚悟する。そんな彼の心臓を魔王の剣が貫──
「──よくやった」
「──え?」
──く事はなく、彼女はそのままの勢いで飛び上がり。剣を腰に構える。刀身が赤紫に染まり、先程よりも遥かに高い密度で赤黒い稲妻が纏わりつく。
実を言えば、接着するだけでは不十分であったのだ。イルミスにはまだ、アンカーとミズーリを繋ぐ鎖を千切るという選択肢があったのだから。そう考えたイルミスの、鎖にかけた手。
「"神……斬"!!」
その瞬間、空間が断絶された。少なくともその場に居た者にはそう見えた。
メイテルの生涯最高の剣はミズーリの主砲ですら傷一つ付ける事も叶わなかったイルミスの手を切り裂いた。飛び散る鮮血、顰められる顔。流石に手を両断する事は叶わなかったが。
彼女は怯みつつ驚愕した表情を浮かべるイルミスを見て呟く。
「今の私にはこれが限界か……だが、もう使わぬ技術だ」
これが所謂"正攻法"である。神殺しと呼ばれる特殊な黒い魔力を混ぜた攻撃、それだけがこの世で唯一神に対し傷を付ける手段である。
だが、眼前に浮かぶ巨大船からは、そして夜空からもその魔力は、それどころか通常の魔力すらも感じない。神という存在は力押しで勝てる相手ではない、だが──
「──行けぇ!! 夜空ァ!!」
──確実に倒せる。何故かその確信が彼女にはあった。だからこそ、彼女はミズーリに向け喉が張り裂けんばかりにそう叫ぶ。
──────
「エネルギー充填120パーセント。粒子加速率最大」
粛々と、なるべく早く準備を進める。二人ともやってくれると信じていたからこそ慌てずにやる事が出来たのだ。
実を言うと、メイテルは操られてなどいない。〝地上の者には敵が居る〟と神に思わせ、戦力を全てミズーリに集中させる──そう、彼女が脳内で話しかけてきたのである。勝手に精神に侵入されているのにももう驚かない。先程彼女に釘を刺されたのにも関わらず俺はまだ懐中時計を懐に入れているのだから。
もし、神が慎重だったならば。もし、達也がやってくれなければ。もし、もし、もし……一つでも歯車が狂えば失敗したであろうこの作戦は、しかし今全て噛み合った。俺はニヤリ、と笑いながら遮光グラスを身に着ける。
「タキオンレールカノン発射、十秒前‼」
カウントダウンが始まる。艦首に膨大なエネルギーが集まっていき輝きだす。それを見て、イルミスは身を震わせた。
『ば、馬鹿な……その、力は……‼』
「九、八、七‼」
艦首の砲口に光の粒子が集まっていく。
そこから感じられる力は、"星の神"たるイルミスには絶体に持つことができない程の物──すなわち。
『それ程の力は、人間が持っていい物ではない──』
「六、五、四‼」
通常の攻撃では傷一つ付ける事が出来ない。神とはそういう物だ。巨大なキノコ雲が上がろうが、海が干上がろうが、山が崩されようが、星そのものには全く影響がないように。
では、星を壊す程の力を受ければどうなるか?
イルミスは身体の前面に無数の魔法陣を形成させ、そこに魔力を溜める。
「三、二、一‼」
それは数秒で完了し、数え切れない程の光線がミズーリただ一つに向かって放たれる。
だが──
「タキオンレールカノン──」
──少し遅かった。
「──発射ァ‼」
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