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最終決戦(前編)

 それはよく聞き覚えのある物で、そして俺は今、何故か死んでいない。


「──なっ」

「貴様の救済の為に魔界の救世主を殺される訳にはいかんのでな。助太刀させて貰うぞ、聖女エリスフィーズよ」

「お前は……デルデオーラ‼」

「へ……? メイテル? どうやってここに……」

「貴様に渡した時計があっただろう。懐柔出来たと思い込んで易々と受け取ってはいかんぞ、罠かもしれないのだからな」

「はは……気を付けます」


 もし彼女が悪意百パーセントだったならば俺はいつでも殺されていたという事だ。憎悪を滾らせるエリスフィーズの剣を自らの剣で受け止めるメイテルを見て少し冷や汗をかく。


「だが、今回ばかりは正解だ。貴様がそれを身に着けていたからこそ──」

「ッ‼」


 彼女が少し身を引き、腰に剣を構える。その体勢は達也の必殺技と似ていたが、発せられるオーラはこちらの方が遥かに大きい。刀身が赤紫に染まり、パリパリと赤黒い稲妻が発せられる。

 それを見たエリスフィーズは戦慄し、メイテルへ向けて剣を振りかぶる。

 だが──



「──〝神斬(しんざん)〟」



──メイテルの方が速い。一瞬の内に彼女はエリスフィーズの背後に立っており、そしてエリスフィーズは倒れていた。

 何が起こったのかは全く分からない。だが一つ確かなのは、メイテルがエリスフィーズに勝利した、という事だ。口を開けて呆然と見ていると不意に両腕が淡く光り、骨折が治る。そして彼女は言った。


「何を呆けている。さっさと行かんか」

「──っ、ああ。ありがとな‼」


 彼女の言葉で、俺が今すべき事を思い出す。俺は飛び起き、重力制御で飛び上がる。


「ま、待て! ッ⁉」

「邪魔はさせんぞ?」


 兵達はそれを迎撃しようとするが、その前にメイテルが立ちはだかる。

 俺は暫く進んだところでコスモパンサーに乗り換え、更に空へと、宙へと向かっていく。やがて軌道上に待機してあったミズーリのもとに辿り着き、ハッチを開けて内部に飛び込む。

 そして艦長席に座り、高度を落として地上に近付く。艦橋の窓からでも地上の人々が唖然としているのが見えた。



「な……」

「あれは……何……?」


 戦っていたクラスメイトが、王都の住民が、城から見ていた王が、皆平等にその存在に慄き、そして困惑する。

 〝神の船だ〟誰かが言った。それは耳障りの良い逃避の為の単語。ある者は隠れ、ある者は畏れ崇める。戦艦だ、そう認識した者は剣を取り落とし、必死に民家の影へ隠れようとする。そんな行動に意味など無いと分かっているのに、身体は勝手に動き出す。


「な、なんだ、あれは……」


 先程まで達也と激しい剣戟を繰り広げていた如月も同じだ。彼の視線は突如現れたその戦艦を捉えて離さない。それでも剣を落とさなかったのは恐怖よりも憎悪の方が未だ勝っていたからだろう。

 だが、次に俺が行った行動でその戦意は完全に折られる事となる。


「下部パルスレーザー発射準備」


 艦底部に装備されている対空兵器を作動させ、それを下に居る者達の武器に照準を合わせる。

 戦艦の下部にある何かが動いている、それは分かっただろうが何をするかは分からなかっただろう。俺は照準が合ったのを確認すると発射ボタンを押す。無数の砲口から赤いレーザーが放たれ──とはいっても肉眼ではほぼ確認出来ないが──彼らの武器に命中する。

 杖、メイス、弓、腕、剣。光弾はその悉くを正確に貫き──如月の持っていた聖剣ですらも、105mmパルスレーザーは貫き、破壊した。彼らからしてみれば急に自らの武器が破壊された様にしか見えなかっただろう。

 ぎゃああ、と叫び声がする。安田は拳で戦うタイプだったので腕を肘から消滅させたのだ。私怨も含んでいたがまあ、己の戦闘スタイルを恨んでもらいたい。


 さて、これで無力化は完了だ。ふう、と一息つく。後は何とかしてあいつらを拘束し、取り敢えず営倉にでも放り込んでおけば──


「──?」


 ふと、何かを感じる。視線の様な、あるいは殺気か。その正体はすぐに分かった。

「おいおい、何だよアレ……」

 艦の前方の空間に何かが集まってきている。それは光の粒であり、紫のモヤであり、赤い雫でもある。次第にそれは人の形を作っていき──


『……我が名はイルミス』


──そんな声が脳内に直接響いてくる。その名はこの世界──星の名であり、信仰されている光の神の名でもあった。

 白い衣を纏った巨大な老人、それがイルミスの姿であった。信徒の前だからだろうか、天使はあれ程の異形であったのにも関わらずこちらは普通のよく想像される様な神の姿をしている。


「おいおい急だな、神本体も動けるのかよ」

『罪人よ、今すぐに自らの罪を悔い改めよ。さすれば汝の魂は天に召される事だろう』

「聞く気無しだな」


 急に現れて一方的に悔い改めろと言う、そんな奴の言う事など誰が聞くだろうか。

 しかし相手が出てきてくれたのは好都合だ。これで俺は──神を仕留める事が出来るのだから。慢心ではない。俺達の安寧を取り戻すには結局神を何とかしなければならないのである。


「悔い改めまーす、これでいいか?」

『汝は心から罪を認めてはいない。真に悔いるのであれば自死するべきである』

「断る、と言ったら?」

『その選択肢は汝には与えられていない』


 彼の周囲に光が集まり、それぞれが人の形を作っていく。純白の四枚の翼を背から生やした人間達──天使である。その他にも二枚羽根の者達も現れ、イルミスの周囲を取り囲む。

 彼らは弓や槍、剣をこちらに向け、睨みつけてくる。殺気満々だ。



『我が力を分け与えし者達よ、罪人を処刑せよ』



 次に彼はそんな言葉を放つ。


『精神防御プロトコルが発動しました』


 脳内に機械音声が流れる。それはつまり、彼が何かしらの精神攻撃を仕掛けてきたという事に他ならない。

 実際に下方の状況を確認すると、クラスメイトや兵士、住民までもが達也達に襲い掛かっている。その中には先生とイリィの姿もあった。


「あれは……なるほどな」


 洗脳。虚ろな目で攻撃していく様子は、あの宇宙船の映像にあった物と酷似していた。きっとあれをやったのも奴なのだろう。

 これは予想だが、きっと奴は恐れたのだ──今のこの状況を。すなわち、神や天使に対抗出来る宇宙戦艦という"力"がイルミス内に入る事を。だからこそ、船員を操って爆破した。全く、面倒な事をしてもらったものである。


 さて、達也は苦しそうな表情をしながらも皆に抵抗している。クラスメイトや兵士の剣などは先程の攻撃で失っているもののその身体能力から繰り出される拳や蹴りは脅威であった。


「イリィ! 先生! 目を覚まして下さい!」


 達也の必死の言葉は、しかし二人には届かない。そして二人が彼に向かって襲い掛かった所で、ミズリがその足に向かって発砲する。二人は倒れ、達也は驚愕してミズリを向く。


「な、なんで」

「ご安心下さい。生きてさえいれば治ります」

「それは、そうですけど……ミズリさんは、大丈夫なんですか? 僕はさっきから頭が痛くて……」


 彼は神が行った洗脳に何とか抵抗出来ていた。だがそれに伴って激しい頭痛が生じてしまっている。そんな中だからこそ平然としているミズリを羨んだ。

 問題ありません、そう答えて彼女は次々と襲い掛かってくる人々の足を撃ち抜き、またショックビームを撃ち込んでいく。流れる様なその作業であっという間にほぼ全ての者が無力化された。

 洗脳によって自我を奪われ、彼らは単調な動きしかしなかったのだ。だからこそ処理も簡単だった。


「では私は一旦マスターのもとへ帰投します。後をお願いします」


 そう言って、彼女は消える。その場に立っているのは彼、そして。


「最後は……」


 彼がある方向を向く。そこではメイテルが無言で佇んでいる。

 彼が剣を構えながら話しかける。次の瞬間、彼は剣を自らの首元にやっていた。ギイン、という金属音が鳴り響き二つの剣が交わされる。


「罪人を処刑する」

「ッ‼」


 そこからメイテルと達也の戦いが始まった──

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