ドラゴンもバズーカには敵わない
さて、ダンジョンに踏み入れた俺達をまず最初に襲ったのは先程待ち伏せていたのと同じ、巨大狼である。だがその大きさはアレよりも大きく、体長は5mはあるだろうか。
そして何よりも、狼は単体ではなかった。一気に五体、俺達に向かって飛び掛かり───ミズリの発射した機関砲によってミンチにされた。
「意外と何とかなる物だな……おっと、危ない」
その様子をぼおっと見ていると横から小さな兎が飛び掛かってくる。アルミラージ、見た目は可愛いが凶悪なモンスターだ。
俺はそれを避け、レーザーを叩き込む。高温の光は見かけによらず硬い表皮を食い破り、一撃で絶命させた。これでこの部屋に居たモンスターは全滅だ。
ミズリが周囲を警戒する中、俺は地面に落ちたモンスターの死骸を回収する。ダンジョンで湧くモンスターは死ぬと魔石などを残してそれ以外は消えてしまう。今回は運が良く、魔石の他に牙や毛などの素材も残していた。
俺はリュックを取り出しそこにそれらを入れていく。このリュックは特殊であり、冷凍機能や反重力サポート機能なんかがあり、実質重さはゼロになるのだ。つまり、満杯にしても動きに支障はそこまで出ない。
「……まあ、持って行ってどうするんだって話だけど」
思わず嬉しさから手にとってしまったが、よく考えてみればこんな物不要なのである。
まあ、売り払ってここの金を得る事には使えるか。俺はそう考え、回収を続行した。
その後もダンジョンを進んでいく。道中モンスターハウスなどに遭遇したりもしたが何とか切り抜け、罠もドローンが代わりに受け、切り立った崖は反重力装置で降り、長い通路はバイクで駆け抜ける。
途中あったセーフポイント───ダンジョン内部に稀にあるモンスターが湧かない場所───で適当に飯を食べもした。そこは大きな空間で、天井付近に輝く結晶があり水も流れ、植物が生い茂っていた。見たことも無いような果物なんかもあり、解析した後に食べてみた。とても甘く、取り敢えずあるだけ取っておいた。
そんな事をしていたものだから、最下層の推定ボス部屋に来た頃にはリュックは満杯になっていた。流石に邪魔なので一旦この場に置いておく。仮に忘れても備品ならばいつでも取り寄せられるのだ……ん? 取り寄せられる?
「そっか、収納出来るんだ」
俺はそこで、初めてそれに気が付きリュックを艦に送り込んだ。事実上のアイテムボックススキル……そういえば、クラスの誰かが持ってたっけ。すまんな、名も知らぬクラスメイトよ。
そんな技はともかく、身軽になった俺は目の前にそびえる扉に目を向ける。高さ20m、幅12mもの巨大な扉。
「仰々しい扉だな、こっちの方が魔王城っぽいぞ」
「扉の向こうに生命反応を感知しています」
「ダンジョンボスも復活したんだな。さてどうやって倒そうか……」
ここまでは銃器が通じたが、流石にダンジョンボスともなれば効かない可能性も考慮しなければならない。
俺は一先ずコスモバズーカを取り出すが、もしかすればボスを認識し、引き金を引くまでに死んでしまう可能性すらあった。
「……ここから倒すか」
と、いう訳で俺は中に入らず倒す事を決めた。
コスモバズーカⅣの弾を徹甲弾にし、内部に控えるボスをロックオンする。念の為に発射準備を済ませた物を5個用意し、またミズリにも構えさせる。
「じゃあ、3、2、1……発射!」
その合図で、俺とミズリが同時に発射する。
放たれたミサイルは扉を貫通し、内部にて堂々と構えていた4つ足のドラゴンの顔に命中した。俺は空になったバズーカを収納し、次の物を構え───
「生命反応、ロストしました」
───それは無駄になった。俺は弾を榴弾に切り替え、扉に向かって放つ。分厚い鋼鉄製の扉は粉々に破壊され、部屋内部への侵入が可能になる。
「……なんか申し訳なくなってくるな、ここまであっさりと終わると」
そこには首から上を失った4つ足の巨大なドラゴンの骸が転がっていた。
ガイアドラゴン、飛ぶ事が出来ない代わりに強靭な肉体と高い魔法力を持つモンスターだ。全身を覆う鱗は如何なる物理攻撃をも跳ね返す───筈なのだが、どうやらバズーカには無力であったらしい。いや、このバズーカの説明ではRHA換算で約12,000mmの貫徹力があるらしく、そのレベルの防御力を生物に期待するのは酷というものだろう。
そんな事を考えながら死骸を呆然と眺めていると、やがて光となって消えていった。残されたのはラグビーボール大の魔石と土色の巨大な鱗が1つ。
「と、取り敢えずこれを回収して……テレポート罠をさが「発見しました」す早いなオイ」
袋の中にアイテムを詰め込み艦へと送る。そしてミズリが発見したというテレポート罠へと近付いた。
それはここまで早く見つけられたのも納得出来る程あからさまに置いてあった。部屋のある場所に祭壇の様な物があり、その下の部分の床に魔法陣が輝いていたのだ。
俺はそこにダイブ───ではなく、一先ず探査用ドローンを載せてみる。
「ドローン、ワープしました。現在位置北緯15.000度、西経15.000度」
「西経……あれ、そこって」
「はい。ワープ先は魔界です」
どうやら俺は、またあの地に行かなければならないらしい。それも、ドローンがテレポートした後に魔法陣が消えてしまったので、自分の足で。テレポートが一度切りだという可能性を考慮していなかった。
もしも発信機が無ければ俺はまたこのドラゴンを倒さなければならない所だった。倒すのは一瞬だが、いつ湧くかも分からないのだから。
さて、今度はダンジョンを逆攻略し、俺達はフロンティア・ホールの入り口にまで帰ってくる。そしてコスモパンサーに乗り、宇宙空間から世界の壁を越え、ドローンが示す座標まで辿り着く。
そこはグランドキャニオンの様な地形。しかし岩肌の色は鮮やかなオレンジではなく黒茶けた、以前見た死んだ土地の色だった。
そんな岩肌のとある場所に、崖にへばりつく様にして建てられた石造りの神殿の様な物がある。発信機はそこを指していた。
「何だこの神殿……」
「建築年、推定2000年前です」
ミズリが風化具合などから算出したその数字。地球で言うならば西暦が始まったくらいに建てられた物が未だに残っている。それもこんな誰も整備に来なさそうな場所にありながら。石造りの頑丈さを思い知らされる。
内部を歩く。暗いそこには様々な石像が建てられており、最奥部にはダンジョンのそれと同じ祭壇があった。そこにドローンはおり、ちょこんといる姿は若干可愛い。俺は疲れているのかもしれない。
「内部に生命反応は?」
「ありません」
「うーん、何処行ったんだ……」
念の為に範囲を広げて生命反応の感知を行うが、人間のそれは一切見当たらなかった。
どうしようか、これで手がかりは全て失われてしまったという訳だ。
「ま、まあ魔界に居る事は分かった訳だしな。いくらでもやりようはあるだろ」
そう自分に言い聞かせ、俺は一度艦に戻る。医療ポッドで寝てダンジョン踏破の疲れを癒し、艦橋に戻った。
ふと、気になって「ステータス」と呟いてみる。眼前に半透明のスクリーンが現れ、そこには様々な数値が書いてある。
「おお、結構上がって───ないな」
長らく見ていなかったステータスは、あれ程モンスターを倒したというのにも関わらず殆ど上がっていなかった。
レベルは190。スキル覚醒前が3だった事を考えると劇的な上昇だが、肝心の能力値の変化は殆ど無いのだ。精々それぞれ20ずつ上がった程度であり、魔力に至ってはまだ0だった。
「というか、レベル1から3に上がった時は10ずつ上がってたのになんでこんな……」
俺のスキルは、意地でも俺を生身で戦わせたくないらしい。じゃあ一体何が変わったのか、俺は画面をいくらか操作していた所、ある記述を発見した。
「ん……? スキルレベルが2になってる……」
スキルにもレベルがあり、それが上昇するに従ってより強力な物へと変化していく。
俺のスキルも例外ではなく、以前見た際にはスキルレベルは1であった。「次のレベルまで???EXP」と書いてあり、1でも十分強力だったのであまり気にしていなかったのだが……
「えーと、『艦のシールドのみを出現させる事が可能』……マジ?」
以前と変わった事は、スキル説明の欄にその文章が付け加えられていた事のみ。だが、それは俺に大きな衝撃を与えていた。
試しに宇宙服を着て外に出てシールド、と呟く。
「……マジだった」
瞬間、自分を中心として球状に半透明の光の膜が生成される。どうやらこれがシールドらしい。
あくまでもカタログスペックではあるが、これは少なくともミズーリの主砲程度ならば防げる様だ。山をぶっ飛ばすあの威力を防げる……多分この世界で防げない攻撃は無いのではないだろうか。
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