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<書籍、電子書籍発売中・コミカライズ連載中> ただ静かに消え去るつもりでした  作者: 結城芙由奈@コミカライズ連載中


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5 残された人々 イザークの場合 5

 帰りの馬車の中――


俺とヴィオラは真剣な表情で向かい合って座っていた。


「イザーク、これからどうするの?」


ヴィオラが尋ねてきた。


「居場所が判明したんだ。明日か、明後日にでも俺は『アネモネ』島へ向かう。レティシアは多分その島で暮らすことを決意したはずだ。今すぐ島に向かう必要は無いだろうからな。家族には卒業旅行で出掛けると伝えるつもりだ」


「……」


ヴィオラは何を考えているのか黙っている。


「ヴィオラ、レティシアのことは俺に任せろ。レティシアに会って話をして……帰りたくないと言うなら、彼女の意志を尊重するつもりだ。誰にも居場所を告げないで欲しいと頼まれたら、絶対に秘密にする。だから君は……」


「私も行くわ」


突然ヴィオラが口を開いた。


「え?」


「私も一緒に『アネモネ』島へ行くわ。家族には友達と卒業旅行に行くって告げる。お願い、一緒に連れて行ってよ」


「本気で言ってるのか?」


にわかにはヴィオラの言葉が信じられなかった。


「勿論、本気よ。だってレティは私にとって大切な友人だもの。こんなふうに……きちんとお別れもできずに、会えなくなるかもしれないなんて……そんなの私はいやよ! そ、それに……レティが帰りたくないっていうなら……私も無理は言わない」


ヴィオラの必死の思いが伝わってくる。


「……分かった。ヴィオラにとって、レティは本当に大切な存在だったんだな」


するとヴィオラが笑った。


「それはイザーク、あなたにとってもでしょう? 普通ならただのクラスメイトが卒業式に姿を消したとしても、こんなに必死になって捜すはず無いもの」


「……」


その言葉に何も言えなかった。

レティシアはセブランの婚約者なのに……一体俺は何をやってるんだ? 彼女に会ってどうするつもりだ?

だけど……このまま、彼女と終わりにはしたくなかった。


「イザーク。いきなり卒業旅行に行くと言っても家族が許さないと思うの。でも必ず説得するから丸一日待ってもらえるかしら?」


「あ、ああ……それは別に構わないが……」


「なら時間を決めてしまいましょう。そうね……明後日の十時に、さっきの船着き場で待ち合わせしましょう? もし出港時間までに間に合わなかったら……その時は私に構わず置いて行って頂戴」


「……分かった。そうさせてもらう」


その後も俺とヴィオラは馬車の中で詳しい打ち合わせをした――




****



 帰宅後、俺は家族に二日後に卒業旅行に行きたいと告げた。いきなりの話で家族は驚いたけれども、もう成人年齢に達したのだから構わないだろうと快諾された。




そして、二日が経過した――



――午前十時


 青空の下で俺は『アネモネ』島へ行く船が出向する港でヴィオラが来るのを待っていた。


「そろそろ十時だ……やっぱりヴィオラは無理だったか」


まぁ、俺と違ってヴィオラは女性だ。いきなり卒業旅行に行くと言っても、家族がそう簡単に許すはずないだろう。

それなら俺がひとりで島に渡って、レティシアを捜すだけだ。


そんなことを考えていたとき――



「イザークーッ!!」


遠くで名前を呼ぶ声が聞こえた。

振り向くと、青いワンピースに麦わら帽子を被ったヴィオラが大きなキャリーケースを引きずりながらこちらへ向かって近づいてくる。


「ヴィオラ!」


自分の荷物を置いて、彼女の元に駆け寄るとキャリーケースを受け取った。


「よく来れたな……もう来ないかと思っていたところだ」


「何言ってるの。親友を捜しに行くのよ? 行かないわけないでしょう。それに一度でいいから私、『アネモネ』島へ行ってみたかったのよ」


ヴィオラがいたずらっぽく笑った。


「偶然だな。俺もそうだったんだ」


俺もニヤリと笑う。


その時――



ボーッ……


大きな蒸気船が煙を吐きながら、港へ向かって近づいてきた。


「あれが……」

「『アネモネ』島へ行く船ね……」


俺たちはこちらへ向かってくる真っ白な美しい蒸気船を見つめていると、やがて船は港に停泊し、タラップが降ろされた。


「よし、行くか? ヴィオラ」


「ええ、行きましょう」



俺とヴィオラは蒸気船に乗り込んだ。レティシアがいる『アネモネ』島へ行くために。


けれど、このときの俺は……まだ何も知らなかった。


レティシアと衝撃的な再会を果たすことになるなんて――




* 次は父親視点の話になります

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― 新着の感想 ―
[一言] 貴族子女が二人だけで旅行は拙くないか?
[気になる点] 逃亡方法雑すぎやろ主人公! まあ見つけて欲しいのか、箱入りすぎてそんなことも考え付かなかったのか。
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