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<書籍、電子書籍発売中・コミカライズ連載中> ただ静かに消え去るつもりでした  作者: 結城芙由奈@コミカライズ連載中


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17ーb 残されたイザーク 1

 今日は卒業式、そして卒業記念パーティーが行われる日だ。


俺、イザーク・ウェバーはこの日を心待ちにしていた。なぜならこの日はダンスパーティーが開催される。

堂々と彼女をダンスに誘えるからだ。


気持ちを打ち明けることも出来ずに、ずっと片思い中だったレティシアに――




 講堂での卒業式が終わって生徒たちはぞろぞろと更衣室に向かって歩いていくが、俺はレティシアを捜しまわっていた。


何としてもパーティー会場の大ホールに入場する前に、レティシアを見つけなければ会えるのは不可能だと思ったからだ。


何しろ次のパーティーは分校の生徒たちも集まる総勢約七百人にも上るからだ。


「レティシア……どこだよ……」


必死で捜していると、ようやく彼女を見つけた。

レティシアはヴィオラと別れ、ひとりで中庭の方へ向かって歩いていく。


「え? どこへ行くんだ? 更衣室とは反対方向じゃないか」


なぜか酷く胸騒ぎがする。そこで悪いとは思ったが、彼女の後を追うことにした。



 レティシアは俺につけられていることに気づく様子もなく、真っ直ぐ足早に中庭に向かって歩いていく。まるで何かに追い立てられるように。


「一体どこへ行くんだよ……」


すると前方に外へ続く門が視界に入る。ま、まさか……


「レティシア? どこへ行くんだ」


たまらず、とうとう声を掛けてしまった。ただ、彼女を驚かせないようにできるだけ静かな口調で。


なのに、それでもレティシアは驚いたのだろう。小さな肩をビクリと動かし、恐る恐るこちらを振り返る。


「イ、イザーク……」


その目は酷く怯えている。何故、そんな目で見るんだ? だが、意を決して彼女に話しかけた。


「レティシア。こんなところで何してるんだ? それにまだドレスに着替えてもいないじゃないか」


俺はレティシアのドレス姿も楽しみにしていたのに。


「そ、そういうイザークはどうしてここに……?」


「どうしてって……レティシアがひとり、こっちへ向かったから気になって……ついてきたんだ」


怯えた目で俺を見る彼女に、とてもではないがダンスの申し込みをすることなんて出来ない。


「何故?」


「え? 何故って……」


まさか、優しい彼女からそんな台詞が飛び出してくるとは思わなかった。ひょっとして後をつけてきたから幻滅されてしまっただろうか?


情けないことに、レティシアがセブランと婚約しても……まだ彼女に未練があっただけに今の俺に対する態度は流石にショックだった。


すると、レティシアは悪いと思ったのか謝ってきた。そして花壇の様子を見たかったからだと告げてきた。

けれど、その話は嘘だということはすぐに分かった。何しろ彼女は説明する間、視線をずっとそらしていたからだ。


「い、いや。その話はパーティー会場でするよ。それじゃ、また後で」


もう……ここで彼女と話をするのは諦めよう。レティシアも俺の提案に頷くも、心ここにあらずということは一目瞭然だ。


俺は背を向けて、引き返す。背後に彼女の視線を感じながら。

建物の中に入ると、すかさず陰から顔をのぞかせた。


「!」


すると驚くことに、はるか前方をレティシアが門に向かって走っている姿が見えた。


「レティシア!」


慌てて後を追いかけるも彼女は門を開けて出て行ってしまった。


「くそ!」


必死で門まで走り、通りに出たものの既に手遅れだった。


人や馬車で賑わう大通りを見渡しても、どこにもレティシアの姿は見当たらなかったのだ。


「レティシア……」


俺は完全にレティシアを見失ってしまった――


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― 新着の感想 ―
[一言] やはり横恋慕してたのか 婚約は18歳になった時に~は知ってたはずだし、ダメで元々なんだから婚約前に告白しとけばよかったのに まぁフラれる勇気がなかったんだろうけどさ
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