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<書籍、電子書籍発売中・コミカライズ連載中> ただ静かに消え去るつもりでした  作者: 結城芙由奈@コミカライズ連載中


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7 セブランの謝罪

 父のディナー終了後



――コンコン


不意に部屋の扉がノックされた。


「誰かしら?」


扉を開けると執事のチャールズさんが立っていた。


「チャールズさん。どうしたのですか?」


「はい、旦那様が書斎でお待ちになっております」


「え? お父様が……? 分かりました。すぐに行きます」


私はチャールズさんと父の書斎へ向かった。



書斎に到着するとチャールズさんはノックをし、そのまま扉を開けてしまった。

すると父が電話で誰かと話をしている。


「電話……?」


父は私に気づくと、電話越しに言った。


「セブラン、レティシアが来たので電話を代わる」


え? セブラン? その言葉にドキリとする。


「レティシア。セブランと電話が繋がっている。出なさい」


「は、はい……」


まさかセブランの電話で呼び出されるとは思いもしなかった。父から受話器を受け取り、耳に当てる。


「セブラン……?」


すると――


『こんばんは、レティ。』


「セブラン、一体どうしたの? 電話なんて今まで一度も掛けてきたことなかったのに」


『うん、実は伯爵から電話を貰ったからなんだ』


「え?」


その言葉にドキリとして、父の方を見るも私のことなど気にかける素振りも無く仕事をしている。


『レティ、プレゼントのことで謝らせてもらえないかな? フィオナはプレゼントにカフスボタンを選んだけど、最初僕は止めたんだよ。レティもカフスボタンなんだから他のにしたほうがいいよって言ったんだけどね』


「そう……だったの?」


『うん。だけど、別に同じ品物だって構わないでしょうって言われたんだ。毎日使うものだし、多いに越したことは無いって言い切られて……説得できなかったんだ。だけど、レティのことを考えればもっと強く反対して他の品物に変えさせるべきだったよね? ほんとにごめん』


「セブラン……」


その声は元気がない。


『だけど、良かった。伯爵に聞いたよ。レティはネクタイピンも用意していたんだね。それにカフスボタンもプレゼントしたんだろう?』


「え、ええ。そうよ」


『良かったね。伯爵、とても喜んでいたよ。それじゃ、また学校へ行くときに会おうね』


それだけ? 他に言うことは無いの? 今日、夫人とフィオナと一緒に出かけて二人の服を選んだことは?


けれど父の手前、尋ねることが出来ない。


「ええ、またね」


『おやすみ、レティ』


「ええ。おやすみなさい」


そして電話は切られた。


「……お父様。電話、ありがとございました」


「何だ? もう電話終わったのか? 何か言ってたか?」


父は書類から顔を上げると私を見る。


「はい、プレゼントの件で謝ってきました」


「他には?」


「いえ、それだけですけど」


「そうか……セブランは、何か勘違いしているんじゃないか?」


「勘違いですか?」


「そうだ。婚約者はレティシア、お前になると言うのに……でも謝ってきたのならいいだろう」


「はい」


私は返事をすることしか出来なかった。確かに婚約者になるのは私だけど、セブランが好きなのはフィオナなのだから。

多分、本当はセブランが婚約したいのはフィオナに違いない。


「ところで、レティシア。進路の話だが……高等部を卒業後はどうする? 付属の大学部に進学するのか?」


父が突然話を変えてきた。


「え? 進路ですか?」


「ああ、そうだ」


もし大学へ行くことになれば……私はこの家にまだ居なければならない。

ふと、そんな考えが脳裏をよぎる。


「少し考えさせて下さい」


「そうだな、今すぐ答えなど出せないだろうからな。だがセブランと婚約するまでには答えを出しておいたほうがいいだろう」


「はい、分かりました。それでは失礼します」


「そうだな。その方がいいだろう」




そして私は父の書斎を後にした。


多分、このときから私は無意識に決意していたのかもしれない。



ここから密かに去ることを――

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― 新着の感想 ―
[一言] ゼブラン、無意識に傷つけてる。一番、ダメなパターン。 ゼブランへ一番ざまあが、欲しいぐらいです。
[気になる点] 父親の最後のセリフが、まるで自分に言い聞かせているように感じました。 あの母娘と同じ家で暮らしていて、レティシアが幸せだと思っているとしたら、人間としての感性に疑問を抱かざるを得ない…
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