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8 レオナルド・グレンジャーの事情 ⑧

 翌日、祖母を連れてレティシアの宿泊しているホテルを訪れた。


祖父にもレティシアに会いに行こうと声をかけたのだが、どんな顔をして会えば良いのか分からないと言って頑なに拒否をされてしまったのだ。


レティシアはまさか俺が祖母を連れてくるとは思わず、驚いていたが2人はしっかり抱き合い、感動の対面を果たすことが出来た。


……本当に祖母をレティシアに会わせることが出来て良かった。



その後、レティシアを連れてルクレチア様が昔住んでいた家に案内した。祖母がこの家をプレゼントしたいと告げると、レティシアはとても喜んで笑顔を見せてくれた。


そして、早速翌日からレティシアはこの家に引っ越してくることが決まったのだった。

レティシアの笑顔を見ていると、こちらまで何だか嬉しい気持ちになってくる。


この気持ちは一体何なのだろう……?



****


 ――翌日の14時


祖母に呼ばれてリビングへ行ってみると祖父の姿がない。


「来てくれたのね、レオナルド。掛けて頂戴」


「はい」


勧められて椅子にかけると祖母に尋ねた。


「お祖母様、お祖父様はどこですか?」


「さぁ……それがつい先程出かけてくるといって屋敷を出ていったのよ。行き先も告げずに」


当主を俺に引き継いでから、殆ど祖父は外出することが無くなったが、たまにフラリと外出することがある。

どうやら港の商店街を散策するのが趣味らしい。


「それでね、レオナルド。私に考えがあるのだけど、今夜のお夕食にレティシアを招こうかと思っているの。あなただって、もっとレティシアと仲良くなりたいでしょう?」


「ですが、お祖父様が帰ってこられたら驚くのではないですか? 昨日だって心の準備が出来ていないと言って、一緒に行かなかったのに」


レティシアをこの屋敷に招くのは大賛成なのだが、祖父の不在中に勝手な真似をして良いのだろうか?


「それなら大丈夫よ。あの人、今日もきっと夕食はいらないのじゃないかしら? めかし込んで出かけたらしいから。それに仮に帰ってきても、構わないじゃない」


クスクス笑う祖母。こんなに楽しそうな笑顔をするなんて……。


「分かりました。実は俺も気にしていたのです。今日はレティシアがあの家に引っ越す日なので、夕方に会いに行ってみます」


本当は引っ越しを手伝いたかったが、1人で出来ますとレティシアに言い切られてしまったので気になっていた。


「ええ、そうね。それじゃ悪いけど夕方、レティシアを迎えに行ってあげてちょうだい」


「はい、分かりました」


レティシアにまた会える……思わず自分の口元がほころんだ――



****



「え? おじい様なら先程、この家を訪ねられてお帰りになったところですよ?」


「何だって? それは本当の話か?」


出迎えてくれたレティシアから意外な話を聞かされた。まさか、あの祖父が俺たちに内緒でこっそり会いに来ていたとは……。

しかも、いつでも遊びに来るようにと言うなんて、信じられなかった。


だが……


首を傾げて、目の前に立つレティシアを見つめる。

薄紫色のロングワンピースに真っ白なエプロンを身に着けた清楚な姿のレティシア。


確かに、この姿を見れば流石の祖父も愛しく感じたのだろう。


レティシアを夕食会に招くと彼女は躊躇した。どうやら今の自分の身なりを気にしていたらしい。


「何言ってるんだ? すごく良く似合って、可愛らしいじゃないか?」


「そうでしょうか……?」


どうもレティシアは自分を低く見る傾向がある。何故なのだろう? 誰かに蔑まされでもしたのだろうか? もっと自分に自身を持てばいいのに。



その後は家の戸締まりを終えたレティシアを屋敷に連れ帰った。


遅れてダイニングルームに現れた祖父がレティシアを見て驚いたのは、言うまでもない――

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