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5 レオナルド・グレンジャーの事情 ⑤

 自室に戻り、暫くの間色々考えてみた。


レティシアは俺が責めるような言い方をしても、訳が分からない様子を見せていた。しかも時折悲しげな表情を浮かべて。


もしかしてレティシアは手紙のことを知らないのかもしれない。

自分の父親の行動を知っていれば、ここに訪ねてなど来れないだろう。


「ん? 待てよ……もしかすると、レティシアの父親も手紙の存在を知らなかったのだろうか?」


少なくとも俺の目にはレティシアが性悪な娘には見えなかった。物腰も丁寧だったし、島で暮らすために伯爵令嬢でありながら自転車に乗る練習もしてきたのだ。

それは恐らく交通費を節約するためなのだろう。


「やはり、何か腑に落ちないな……祖父母はカルディナ家に手紙を送っていたはずだしな……2人に尋ねてみよう」


そこで早速、2人の部屋を訪ねてみたが姿が見えない。書斎にもリビングにも何処にもいないのだ。


「一体何処へ行ったのだろう?」


リビングの前で佇んでいると、フットマンが声をかけてきた。


「レオナルド様、どうなされたのですか?」


「祖父母を捜しているのだが、何処にも姿が見えない。何か知らないか?」


「あ……そう言えば、今から30分ほど前でしょうか? チャーリー様が旦那様と奥様に何か話しかけられており、すぐにお二人はお出かけになりました」


「そうだったのか? 俺は何も聞かされていなかったぞ? チャーリーは何処にいるか知っているか?」


「申し訳ございません。チャーリー様が今何処にいるかは……」


そこへ別のフットマンが現れた。


「私、先程チャーリー様をお見かけしました。何やら箱のようなものを抱えて裏庭へ歩いていく姿が見えました」


「箱だって……?」


裏には焼却炉がある。


まさか……? 何やら嫌な予感がする。俺は急いで裏庭へ向かった。



****



裏庭へ行くと、やはり思った通りチャーリーが焼却炉の前に立っていた。そしてマッチで火を起こしている。

足元には蓋の開けられた箱が置かれていた。


「チャーリー!!」


背後から大きな声で叫ぶと、チャーリーの肩が大きく跳ねて俺の方を振り返った。


「そこで何をしている!!」


駆けつけると、チャーリーは顔面蒼白になっていた。


「あ……レオナルド様……」


「一体何をしていたんだ? その箱の中身は手紙じゃないか!」


箱の中には紐で束ねられた封筒が入っている。封筒に書かれた筆蹟には見覚えがあった。


「あ、あの! こ、これは!」


慌てるチャーリーを無視し、束になった封筒を拾い上げて目を通した。

すると驚くべきことに、祖母の字で宛名にはカルディナ家の名前が記されている。


「!」


驚いて紐を解くと、束ねられていた封筒は全てカルディナ家宛だったのだ。


「これは……一体どういうことだ?」


怒りを押し殺し、チャーリーを睨みつけた。もはやその表情は色を失い、全身を小刻みに震わせている。


「黙っていないで答えろ!」


気づけば怒鳴りつけていた。すると……。


「も、申し訳ございません!! わ、私が全て……旦那さまと奥様が書かれたカルディナ家宛に書いて託された手紙を隠し持っていました!!」


「な、何だって……!!」


「す、全てお話いたします……!」


チャーリーは観念したのか、今までの経緯を白状し始めた。


それは……あまりにも自分勝手な言い分だった――




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