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第8章 1 私の新たな居場所


 私がレオナルド達とリーフ(アネモネ?)に戻り、早いものであれから半月が経過していた。


「レティシア、今度はこっちの花壇に水やりをしてもらえるかな?」


ラベンダーのプランターに、ブリキのじょうろで水やりをしていると背後でシオンさんの声が聞こえてきた。


「はーい! 分かりました!」


私は空になったじょうろを持って、井戸に向かうとポンプを押して水汲みをしながらシオンさんの様子を伺った。


彼は新しい花壇の土をならしている最中だった。

ゴム長靴を履き、園芸用エプロンにシャツの袖をまくって作業をしているシオンさんは楽しそうに作業をしている。


その姿が少しだけイザークに重なって見えた。


「イザーク……ヴィオラ……元気にしているかしら」


少しだけ2人のことを思い出しながら、私はラベンダーの水やり作業を始めた。



ここは『アネモネ大学』のハーブ菜園。大学が春休みの間も、毎日ハーブの世話をしている。

そこで私もアルバイトという名目で、ハーブ菜園でお手伝いさせてもらっているのだ。



作業を初めて2時間後――



「ふぅ……こんなものかな。レティシア、少し休憩しないかい?」


土ならしを終えたシオンさんが、雑草を摘み取っていた私に声をかけてきた。


「はい、そうですね」


「それじゃ、ハーブティーでも淹れようか? この菜園で採取した特製のハーブでね」


「本当ですか? 楽しみです」


私は笑みを浮かべて返事をした――



**



「どうだい? レティシア、美味しいかな?」


木陰の下に敷布を広げ、2人で向かい合わせに座ってハーブティーを飲む私にシオンさんが尋ねてきた。


「はい、とても美味しいです。この赤いハーブティーはハイビスカスですか?」


「うん、そうだよ。疲労回復に効果があるからね。それにしてもレティシアが園芸好きで助かったよ。大学が休みの間は他の学生たちが帰省してしまうから、いつも一人で世話をして大変でね」


シオンさんが笑いかけてくる。


「いえ。私も園芸が好きなので少しも構いませんが……でも、本当にアルバイト代を頂いていいのですか?」


シオンさんはたとえ、短時間のお手伝いでもアルバイト代として毎回3000リンくれる。それが申し訳なかった。


「いいんだよ、だってレティシアは貴重な時間を使って手伝いに来てくれているんだから当然だよ」


「ですが、元々は私のアルバイト先が中々見つからなかったからですよね?」


いくらグレンジャー家の養子になったとはいえ、何から何まで祖父母にお世話になるのは気が引けた。

その為にアルバイト先を探しているのだが、今もコレだと思うアルバイト先が見つからなかった。

するとシオンさんの方から、自分のハーブ菜園の手伝いをしてもらえないかと提案があったのだ。


そして現在に至っている。


「そんなことないって。それにレオナルドからもレティシアが園芸好きだという話は聞かされてきたからね」


「そうですか」


恐らく、レオナルドは気を利かせてシオンさんに声を掛けてくれたのかもしれない。

もっとも、一度もそのような話をレオナルドから聞かされたことはないけれども。


「今日は、後1時間だけ作業をしたらもう帰っていいよ。レティシアのお陰で大分作業が進んでいるからね」


「え? それで大丈夫なのですか?」


「大丈夫さ、よし。お茶も飲んだことだし……作業の続きを始めようか?」


シオンさんが立ち上がった。


「はい」


そして私たちは、花壇の手入れを再開した――





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