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4−22 アンリ氏との別れ

 結局、この後私とレオナルドはシオンさんが警察から戻るまではカルディナ家に滞在することになった。


そしてアンリ氏は……



「それでは、私はアンリを『リーフ』の港まで送ってくるので……ふたりは屋敷で休んでいてくれ」


馬車の前に立つ父は、見送りに出てきた私とレオナルドを交互に見た。


「はい、行ってらっしゃいませ……お父様」


すると、父が悲しげに笑みを浮かべた。


「レティシア……こんな父親なのに、私のことを『お父様』と呼んでくれるのだな?」


「……はい。私にとっては……ひとりきりのお父様ですから」


だけど……もう、私は……けれど、続きの言葉を今は飲み込む。


「レティシアさん」


父の隣に立っていたアンリ氏が私の名を呼ぶ。


「はい」


「本当に、イメルダと……フィオナが大変なことをしてしまった。なんとお詫びすれば良いか……イメルダは罪人として裁かれ、収監されることになるだろう。それにあの子も罪を問われることになるだろう。フィオナは成人年齢になっているけれども、この先は私が親の責任を取るつもりだよ」


「そうなのですね……? では、どうかフィオナのことをよろしくお願いします」


すると、私の言葉にレオナルドが首をかしげた。


「レティシア、何故そんな言い方をするんだ? フィオナは君に散々嫌がらせをして苦しめてきた相手じゃないか?」


「それは、確かにそうですが……ある意味、フィオナも被害者だったのではないかと思ったからです」


「被害者……?」


口の中で小さく父が呟く。


「はい、そうです。フィオナはイメルダ夫人からお父様が自分の父親だと言われて育ってきたのですよね? しかも妾の娘として……でも、実際はそうではありませんでした。アンリさんがフィオナの父親だったのですから」


「あ、ああ……そうだよ」


申し訳無さそうに頷くアンリ氏。


「フィオナが最初から妾の子供では無かったという事実を知っていれば、周囲がそのことを理解していれば……彼女は虐められることも、世間から白い目で見られることも無かったわけです。だから……彼女も被害者だと思います」


それにフィオナのお陰でセブランがどういう人物だったのか知ることができたのだから、そこは感謝をしている。


すると、アンリ氏はフッと笑った。


「ありがとう、レティシアさん。君は……本当に優しい人だね」


そして次にアンリ氏は父に視線を向ける。


「フランク、出港時間もあることだし……そろそろ行かないか?」


「ああ、そうだな」


ふたりは馬車に乗り込むと、そのまま馬車は音を立てて港に向けて走り去っていった。



「……行ったな」


レオナルドさんが小さくなっていく馬車を見つめながら言う。


「はい、そうですね……レオナルド様、本当にありがとうございました」


私はレオナルドに向き直ると、お礼を述べた。


「いや、それほどのことじゃない。それに……お礼を言うのはまだ早いんじゃないかな?」


「え? 早いですか……?」


「ああ、お礼は全てこの件が片付いてからだ。そうは思わないか?」


「全て片付いてから……ですか?」


「そうだ、まだいくつか明らかにされていないことが残っているからな」


「分かりました」


まだ明らかにされていないことがあっただろうか? 疑問に思いながらも返事をした。


「よし、それじゃ中に入らないか? 喉が乾いたからお茶が飲みたくなってね」


「それなら私に淹れさせて下さい。お茶の淹れ方なら……少しは自信がありますので」


ほんの些細なことでも、レオナルドにお礼がしたかった。


「それは楽しみだ。それじゃ、早速ごちそうになるかな?」


「はい」


私は笑顔で返事をした――

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― 新着の感想 ―
妾の子じゃないにしても犯罪者の子ですけどね。 まぁ性格の問題だよなぁ。
まだ全部終わってないという発言で安心した。まだ解明してないこと、ありますよね。考えすぎかもしれないけど、不審な動きをしてる人物もいるし、これで解決ならスッキリしないなと思ってたのでよかったです。
婚約者を奪いたくなるような立場に置くという見方から取れば、やらされてたことは精神や心理の誘導が巧妙で間に挟まってるだけで、自爆テロする何も知らない人あるいは宗教に洗脳された人と変わらないからな 誰か…
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