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4-14 もう一つの断罪 2

「見つけたのか? シオン」


レオナルドがシオンさんを見て、嬉しそうに笑う。


「ああ、ばっちりだ」


シオンさんはテーブルの上に花を置くとソファに腰掛けた。よく見ると、それぞれの花は違う種類だった。


「その花は何だね?」


不思議そうな顔つきでシオンさんに尋ねる父。


「このお屋敷の花壇で育てられていた植物ですよ。しかも採取してきた花壇は、裏庭の人目につきにくい場所にあったので、少し探してしまいました。でも本当に残っているなんて……てっきり処分されていると思っていたのですが、良かったです」


説明を聞いていた父はチラリとイメルダ夫人を見る。……けれど夫人は微動だにせず、置かれた花をじっと見つめるだけだった。


「……何よ。この花が何だって言うのよ……こんなのただの雑草じゃないの?」


バラのように美しい花にしか興味がないフィオナはブツブツ言いながら、時折刺すような視線で私を見る。


雑草……?

フィオナの目にはそう、映るのだろうか? 私にはどの花も可憐で可愛らしく見えるけれども。


「これらの花は、一見何の変哲もない花にしか見えませんが……全て毒を持っているのですよ。たとえばこの花は接取すると腹痛、嘔吐の症状が出ます。こちらの花は意識が混濁したり、マヒが起こる。……ああ、これはまた随分毒性の強い花だ。呼吸困難を引き起こしますよ」


シオンさんが一つ一つ、花を指さしながら説明していくと、徐々に父とアンリ氏の顔色が青ざめていく。

フィオナは興味深げに話を聞いているし、イメルダ夫人は……微動だにせず、じっと花を見つめていた。


「でも、これはほんの一部です。中には危険なので持ち込むことも出来ない花がありました。何しろ花粉にまで毒があるのですから。この花壇を管理している人物は誰なのかご存知ですか?」


シオンさんが父に尋ねる。


「いや……すまないが、私はそこまでのことは分からない。屋敷のことは全て執事のチャールズにまかせているから」


「そうですか……では、その方を呼んで頂けますか?」


「分かった」


父は部屋に控えていたフットマンにチャールズさんを呼んでくるように伝えると、すぐに姿を現した。


「旦那様、お呼びでしょうか?」


「尋ねたいことがあるのだが、この屋敷の花壇の世話をしているのは一体誰だ?」


「はい、以前までは専用に花壇の手入れをしている人物がおりましたが……辞めてしまったので、今は屋敷に出入りしている庭師が管理しております。前任者が退職する前に、その庭師を指定したのです」


「前任者……? その人物は退職していたのか? 一体誰だ?」


すると、チャールズさんがイメルダ夫人に視線を移した。


「な、何よ……何故私を見るのよ!?」


チャールズさんを苦手としていた夫人はイライラした様子を見せる。


「イメルダがどうかしたのか?」


父が尋ねると、チャールズさんが答えた。


「はい、前任者はイメルダ夫人の父親であるゴードン氏でした。もともとこの屋敷の花壇を作ったのも彼でしたから」


「なるほど。やはりそうでしたか」


満足そうに笑みを浮かべるシオンさん。


「何? ゴードンだと? 確かに彼はフットマンになる前は、この屋敷の庭師だったが……」


父の顔が険しくなり、イメルダ夫人を睨んだ。


「な、何よ……その目つきは……? 私は何も知らないわよ!」


今度はイメルダ夫人がヒステリックに叫んだ――

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