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32 祖父の命令

 十七時半――


観光巡りからヴィオラたちが帰って来た。


「お帰りなさい、皆」


居間の窓から馬車が帰って来る様子を見た私はエントランスまで出迎えた。


「「ただいま」」


レオナルドとイザークは2人揃って返事をした。

一方のヴィオラは余程観光巡りが楽しかったのか、興奮した様子で私に抱きついてきた。


「ただいま! レティ!」


「観光は楽しかった? ヴィオラ」


「ええ、とっても! でもレティがいればもっと楽しかったのに……」


「ヴィオラ……」


すると、ヴィオラがハッとした様子で私から離れると両肩に手を置いた。


「ごめんなさい。レティはそれどころじゃ無かったのに、私ったら自分のことだけ考えて……」


「何を言ってるの? ヴィオラが楽しそうで何よりだわ。後で観光巡りの様子を教えてくれる?」


「ええ、勿論よ。そうだわ、レティに色々お土産があるの。後で荷物の整理をしたら貴女の部屋へ届けに行くわ」


「ええ、待ってるわ」


すると、そこへ祖父が騒ぎを聞きつけてかエントランスに現れた。


「お帰り、三人とも帰って来たのだな」


祖父の言葉にレオナルド、ヴィオラ。それにイザークが返事をする。


「ただいま戻りました。おじい様」


「はい、戻って来ました」


「はい」


「その様子では楽しめたようだな。夕食の時に詳しく話を聞かせてくれ。ところでレオナルド。少し話がある、私の書斎へ来てくれ」


「分かりました」


すると祖父は私に視線を向けた。


「レティシア。お前も一緒に来なさい」


「え? は、はい」


私も一緒に?

訝し気に思いながらも返事をする。


「よし、それでは行こう」


祖父が歩き始め、レオナルドも続く。私も後を追う為に背を向けたとき――


「レティシア!」


不意にイザークが声を掛けてきた。


「何?」


振り向くと、イザークがじっと私を見つめている。


「どうかしたの?」


「い、いや……」


私を呼び止めたのに、イザークは視線を逸らせてしまった。そしてそんなイザークをどことなく悲し気な目で見つめているヴィオラ。


……ふたりの間に何かあったのだろうか?


「レティシア?」

「どうかしたのか?」


祖父とレオナルドも立ち止まり振り返り、こちらを見ている。


「な、何でもない。また後でな。俺とヴィオラは部屋に戻ってるよ」


「ええ。また後で」


返事をするとイザークはヴィオラに声を掛けた。


「行こう。ヴィオラ」


「え? そ、そうね」


イザークは背を向けるとヴィオラと一緒に部屋に戻っていく様子を見ていると、祖父が声を掛けてきた。


「我々も行くぞ」


「はい、おじい様」


再び祖父に促され、私達は祖父の部屋へと向かった。




****



「おじい様。話と言うのは何です?」


ソファに座ると、すぐにレオナルドが祖父に尋ねてきた。


「ああ……他でも無い。レティシアと父親の件についていだ。あいつは今日、帰った」


「え? そうだったのですか?」


「それだけではない。あいつは、一週間後にレティシアに家に戻るように言ってきたらしい」


「何ですって? 本当なのか? レティシア」


レオナルドが驚いた様子で私を見る。


「はい、そうです」


「……本当にあの家に帰るのか?」


「帰ると言っても、一時的なものですから。婚約者との関係を終わらせなければなりませんし」


「そうか、それでレティシアは『リーフ』に戻るのか」


納得したかの様子で頷くレオナルド。


「そこでだレオナルド。お前に頼みがある。レティシアに付き添って、カルディナ家へ行ってくれ」


すると祖父がレオナルドに命じた――




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