31 出迎えた祖父
私――レティシア・カルディナが屋敷に戻って来たのは十四時を少し過ぎた頃だった。
「すっかり遅くなってしまったわ」
祖父母は心配しているかもしれない。そこで私はすぐにふたりのいる居間へ向かった。
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「おじい様、おばあ様。いらっしゃいますか?」
居間の扉をノックすると、すぐに扉が開かれて心配そうな表情の祖父が姿を現した。
「レティシア! 随分遅かったではないか……」
そして強く抱きしめられた。
「お、おじい様?」
祖父の行動に躊躇っていると、祖母がクスクスと笑った。
「この人ったら、レティシアがいつまでも戻って来ないのは父親と一緒に『リーフ』に帰ってしまったからに違いないと大騒ぎしていたのよ。そんなはず無いわよと何度も私が言ったのに」
「う、うるさい! 余計なことを言うな、カトレア!」
祖父は祖母に言い返すと、次に私をじっと見つめて来た。
「とりあえず、椅子に掛けてじっくり話を聞かせてくれ」
「はい、おじい様」
「それにしてもレティシア。単なる見送りだけに、何故これほどまでに時間がかかったのだ?」
ソファに座ると早速祖父が尋ねてきた。
「はい。『リーフ』行の船の出航時間が十三時だったので、それまでお父様と一緒に食事をしていました」
「そうか……フランクと……それで? 一体あいつとはどのような話をしたのだ?」
「食事の最中は特に話らしい話はしませんでした。ただ、馬車の中では始終父は私に謝ってばかりでしたけど」
「フン。今更謝まられても手遅れだと言うのに……」
祖父はイライラした様子で腕組みをする。
「おじい様……」
どうしよう。父の話をすればするほど、祖父の機嫌が悪化していく。
すると――
「あなた、そんなにレティシアの前で苛々しないで下さい。元はと言えば、あなたから話を聞き出そうとしたのでしょう? 御覧なさい、レティシアが困っているではありませんか」
「それはそうだが……まぁ良い。この話はまたにしよう。それよりもレティシア。実はもうすぐ、この島でフェスティバルが開催されるのだ。大きな花火も打ちあがる。どうだ? 私と一緒に行ってみないか?」
「花火が打ちあがるのですか?」
「ああ、そうだ。とても綺麗だぞ。空に打ち上げられた花火が海に映って、それは見事な光景だ。お前は花火は見たことがあるか?」
「いいえ、まだ一度もありません」
「そうか、なら私と一緒に行こう」
すると祖母が窘めた。
「あなた、何を言ってるのですか? あのフェスティバルは若い人たちが参加するお祭りですよ? 幸い、今レティシアのお友達が来ているのだからレオナルドに案内させて四人で行かせてあげなさい。大体あなたがいたら皆気を使ってお祭りを楽しめないではありませんか」
「うぐ……お前は本当に痛いところを突いて来るな……だが確かにその通りかもしれん。レオナルドと友人たちが帰ってきたら、早速フェスティバルの話をしてみるといい」
「はい、おじい様」
花火にフェスティバル。きっと……とても楽しいのだろう。
私の胸は、今から期待で膨らむのだった――