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転生令息と前世の婚約者  作者: 千花
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6 小話






ティナ。ティナ。

私はこの時を永らく待っていたんだよ。








パイプオルガンの幻想的な音色が花嫁の入場を促す。

アルメリア王国の宰相であるアルバート公爵に導かれて新郎のもとへ向かう花嫁は、純白のベールで包まれている。彼女が足を進めるたびに流れるベールは美しい。


緩く巻いた銀糸の髪はサイドにまとめられており、鮮やかな菫色の大きな瞳はきらきらと輝いている。透き通るほどの白い肌に薔薇色の頬、小ぶりな唇は赤く煽情的であり、アルメリア王国一の美女と謳われているクリスティーナの美しさを純白のドレスが引き立たせていた。


祭壇の前で待つ新郎は、愛しそうに目を細めて花嫁を見つめている。優しく揺れる少しウェーブがかかった金色の髪。吸い込まれそうな空の色の瞳。高い鼻梁に、美しい曲線で描かれた形の良い唇。


祭壇の前で並ぶ美しい新郎新婦に参列者は、感嘆の吐息を洩らした。


アルメリア王国国教会・最高聖職者であるリーベン大主教が誓いの言葉を問いかける。


「汝を妻とし、今日より如何なる時も共にあることを誓います」


私が必ず君を幸せにするよ。


「幸せな時も、辛い時も、富める時も、貧しき時も、病める時も、健やかなる時も、死がふたりを別つまで愛し、慈しみ、貞操を守ることを新郎に誓います」


ティナに笑みを向ければ、私に気づき、くすぐったいような、愛おしむような微笑みを向けられる。


宣誓書にサインをして、ティナと向き合った。ベールに包まれた彼女を露わにさせると、ティナは目を閉じた。伏せた瞼は長い銀の睫毛に縁どられており、日の光の下、姿を現した月の女神は艶やかに輝いていて、思わず見惚れる。


顔を近づけ、触れるだけのキスをおとす。

緩々と伏せた瞼をもちあげたティナの顔を覗き込むと、彼女は大きな瞳に涙を浮かべていた。


愛しさが込み上がり、ティナを抱き寄せて目尻に口付ける。ドレスがシワにならないよう優しく包み込むと、彼女は頬を染め、潤んだ瞳で呟いた。







愛しています。


 






吹き荒れた強い風が窓を揺らす。

その音に私は目を覚ました。

目を覚ましたと同時に絶望する。








望んだ未来が現実(ほんとう)ではないことに。











ティナ。ティナ。

私はその時を永らく待っていたんだよ。






次回から本編になります。

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