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陰陽洲~和風VRMMORPG、闇鍋仕立て~  作者: 鉢棲金魚
第一話 出戻り武士と新参巫女
2/37

其の一

 空調の効いた講義室に、滔々と語る声が響き渡る。

 視界上にAR表示されるのは、雲上の車へと乗り込む十二単の女性と、それを見上げる翁や武士の姿を描いたワンシーンだ。


「つまり―――」


 講義を半ば聞き流しながら、関重明日人(せきえあすと)は『かぐや姫の昇天』の隣に表示したニュースサイトの記事を眺めていた。


(『陰陽洲』が大規模アップデートか)


 VRMMORPG『陰陽洲(おんみょうのしま)』。

 大ヒットというワケではないが、数少ない和風VRMMORPGとして、サービス開始から二年後の今も、一定の同時接続数を維持している国産ゲームタイトルだ。


 贔屓目に見れば中の上くらいの人気。

 そんな微妙な位置のタイトルが予定する大規模アップデートの内容を確認し、明日人は半眼になった。

 呆れたように見つめるのは、新要素を紹介する一枚のスクリーンショット。


 ―――火縄銃型の式神を操り、鬼にオールレンジ攻撃を行う陰陽師の姿。


 彼の記憶が正しければ、『陰陽洲』は平安時代をモチーフとしていたハズだ。

 もっとも、戦国時代の甲冑が装備品としてあったり、平安時代初期と後期の人物が同時に活動していたりと、元から闇鍋状態だったので、銃の実装も今更なのかも知れない。

 とはいえ、その新要素を紹介するスクリーンショットに、なぜ陰陽師。


「……相変わらずみたいだな」


 一年前―――大学受験を機に引退した時と変わらず、やりたい放題な運営の姿勢に、明日人は懐かしさを覚える。


(大規模アップデートは、十月下旬か)


 ニュースサイトを閉じて、明日人は小さく笑った。

 かつて育てたキャラクターは、引退の際にアカウントごと削除済みだ。

 始めるとしたら、完全に一からになるが―――


(前期試験が無事終わってから、だな)


 夏休みの予定、決定である。



◆◇◆◇◆



『本ゲームは、全感覚没入(フルダイブ)及び(・)主観時間加速《アクセラレーション》機能対応型VRゲームです。

 個人の体質によっては、健康上の悪影響が生じる可能性があります。

 また、十五歳未満の方のプレイを推奨していません』


 お決まりの警告を読み飛ばし、ゲームを開始する。

 ログインの後、最初に行うのは、『陰陽洲』における現身の作成《キャラクタークリエイト》だ。


 先ずは外見設定。

 プリセットをベースにおおよその外見を設定し、そこから修正を加えていく。

 修正は各要素をスライダーで調整する類のものではなく、プレイヤーの思考を読み取ったAIによる調整だ。

 十五分後、黒髪黒瞳、中肉中背の青年の姿が完成した。

 髷をゆったりはしていないので、何となく現代人っぽい。というか―――


「一応、イケメンにしたはずなのに、何かモブっぽいが……まあ、こんなものか」


 次いで、【心】【技】【体】の決定。

 この項目は各種能力値の大元になると同時に、特技の実装枠を決定するものだ。

 割り振れる数値は、合計八点。


「二、三、三でいいか」


 続いて、初期取得【特技】の選択。

 【心】【技】【体】のそれぞれに割り振った数値の数だけ、対応する特技を取得・実装する。


「とりあえず、各種能力値強化系と【霊視】は必須。武器戦闘用の特技もいる。

 ……あれ? 【疾風足】がこの段階で取れるのか」


 初期取得特技の一覧に見つけた名前に、セキは目を丸くした。

 取得の条件が結構面倒だったのを覚えているので、この段階で取得できるのならと、迷うことなく選択する。 


 【心】【技】【体】の数値と取得・実装した【特技】の補正を受けて各種能力値が算出される。特に問題を感じなかったので確定。

 さらに、初期装備を選択し―――


『貴方の名前を入力してください』

「セキ」


 最後の問いに、明日人は一年前と同じ名前を入力した。


◆ステータスについて

 名前:セキ 

  心:2 技:3 体:3

   体力:1075

   気力:900

   力:43 速:43 耐:43

   意:36 識:30 霊:24

   巧:30 知:30

  特技

   心:【堅志】【霊視】

   技:【武器習熟/太刀(初伝)】【軽業(初伝)】【疾風足】

   体:【大力】【迅速】【頑強】


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