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涙は風の中  作者: 舞夢
圭は白檀の香りの中、過去を思い出す
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圭の追想(5)歴史研究会への入部

榊原教授は、割と有名らしく、すれ違う学生が、みな頭を下げ挨拶をしてくる。

そして、たどり着いた部室は、校舎の3階にあった。

「歴史研究会」とかかれた古い看板が掲げられている。

「歴史研究会」そのものが、古い歴史がありそうだ。

榊原教授が部室のドアを開けると、大きな丸いテーブル、そして年代物の椅子、かなり大きな書棚と、その中に収められた大量の史書らしきものが圭の目に飛び込んで来る。



「あ、教授・・・」

薄い緑色のジャケットを着た女子学生が椅子から立ち上がった。

榊原教授はにこにことしている。

「うん、連れて来たぞ・・・作戦成功だ・・・」


女子学生は、教授と圭の顔を見てプッと吹き出した。


教授も笑っている。

「そうだなあ・・・笑うのもよくわかる」

「あの教授の息子だから、もっといかつい顔かと思ったが・・・」

「春奈さん、いろいろと面倒見てやってくれ」

「私はこれから授業の準備をするから・・・」

榊原教授は大笑いしながら、部室を出て教授室に戻っていった。


部室には、春奈さんと圭だけになった。

「沢田春奈です、2年生になるの」

「よろしくね」


沢田春奈と名乗った女子学生に、圭は自己紹介をしようと思った。

「はい、私は」


沢田春奈は、首を横に振る。

「ふふ、実はね、貴方のこと私知っているの」


「え?」圭は驚いた。


沢田春奈は、にこにことしている。

「教授からね、貴方が入学する前というか、合格した後から、貴方の話を聞いていたの」

「だから、作戦は貴方をこのサークルにいれること」

「貴方のお父さんも、有名な歴史学者だから知っています、大尊敬です」

「だからね、貴方のお父さんの写真も、教授から見せてもらってあったし、その息子さんだから・・・」

「いかつい顔になっているって、教授とか皆で決め付けていたから・・・」

「そしたら、全然いかつくないし・・・いかついっていうよりは・・・」

春奈は、じっと圭を見つめる。


圭は、何を言われるかと、ドキドキする。


突然、部室のドアが開いて女子学生が3人入ってきた。

静かだった部室が突然騒がしくなる。


「あ 春奈、どうしたの?」


「あ、この子、もしかして、教授の言っていた子?」


「全然、いかつくないって・・・可愛いって!」


「いかついっていうより お人形さんじゃん!」


「だめだぞ、春奈、独り占めは・・・」


「でもさ、この子、直衣みたいな平安風の服着せると 面白いかも・・・」


「居眠りしている間にお化粧したらどう?可愛いかも・・・」


「武家って顔でないね・・・」

圭は、初対面の女性たちにあれこれ言われ、どう対応していいか全くわからない。

圭は、途方にくれてしまった。


「あ、そうだ・・忘れてた・・・」

春奈が、突然立ち上がった。

「入会申込書を書いてね・・・」

春奈は、入会申込書を後ろの書棚から、取り出し丸いテーブルの上に置く。


「え? まだ 春奈書いてもらってなかったの?」

紺のブレザーを着た女子学生が、春奈に突っ込みを入れる。

「うん、良美、忘れていた・・・」

春奈は、少し照れた様子。


「もう・・・、まったく・・・」

薄いピンクのワンピースを着た女子学生も、春奈を軽くにらむ。

「でも、智子、しっかりものの春奈が忘れるなんて、少し変だよね・・・」

青のスタジャンを着た女子学生が不思議そうに言う。


「いいの、ゆかり・・変でないって・・・」

春奈は、少し頬が赤くなっている。


「ねえ、君、春奈に何か言われたとか、されたとか・・・正直に・・・」

良美が圭を、じっと見つめる。


「いや、何も無いですよ・・・」

圭は正直に答えた。

実のところ本当に何も無い。


「うん じゃあ これに 住所とか名前、電話番号書いてね・・・」

春奈は圭に、書く欄をいろいろ指差して教える。


「わ・・・春奈・・・すごく丁寧・・・はじめてみた・・・」 智子


「うん・・・ 少しあやしいかも・・・」ゆかり


「やかましい、みんな・・・」

春奈は、笑いながら、他の人をけん制する。


「あーーー、わりときれいな字・・・私より上手・・」智子


「あ、杉並なんだ・・・久我山だと井の頭線沿いね」ゆかり


いろんな声を浴びながら、圭は、入会申込書を書き終え、春奈に渡した。

その後は、4人に囲まれ、サークルのことや、歴史の話などをして過ごした。

家に帰っても一人しかいない圭にとっては、久々に他の人と長く話す時間となった。


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