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涙は風の中  作者: 舞夢
銀座香苑へ
22/28

圭は楓に手を握られ、過去の自分を見る。

榊原教授が、ゆっくりとした重々しい口調で話しだした。

「未だ、この状況がよく飲み込めておられないと思われますが・・・」


圭「はい」


榊原教授は、意外なことを言う。

「楓の手をしっかりと握ってください」


圭「え?」


榊原教授

「大丈夫です・・・そして目を閉じてください」


「はい」

言われるがまま、楓の手を握りなおし、目を閉じた。



楓の手は、圭は、何故か懐かしい温かみがあると感じた。

今までの悩み、苦しみが消え去るような不思議な安堵感も感じる。


応接室に漂う藤の香りの中・・・いつの間にか圭の意識は、遠のいていく。




圭は、身体が空に浮かんでいる感覚がある。

下を見ると、病院が見える。

かなり大きな病院だ。

どこか想い出がある。

身体は、だんだん病院のほうに降りていく。


「こっちよ・・」

楓の声に、引き寄せられて、圭の身体は病院の廊下を進んでいく。

しかし、どうしても廊下に足を下ろすことができない。


「入って・・・ここよ」

圭と楓が、ドアを通り抜けるように、病室に入ると数人の大人が見える。

ベッドには、子供が寝かされている。


「あ・・・」

そして、圭は驚いた。

若い頃の、父と母が、ベッドのそばに立っている。

そうすると・・・寝かされているのは圭自身なのか・・・

そういえば、圭には、小さな頃に病気で入院した記憶がある。


「ごめんなさい・・・貴方・・・この子急に熱が上がってしまって・・・先生に聞いたら、今夜あたりが峠ということなの・・・」

母が父に謝っている。


「そうか・・お前も身体の具合があまりよくないのに・・・」

「もうだめかもしれないな・・・私も付いていてあげればよかったのだが・・・」

父の顔は、心配というか哀しそうにも思える。


「お願いだから・・・こんな時ぐらい・・・付いていてあげて・・・」

母が父に、泣きついている。


「私たちが学校のほうは手伝いますから・・・今日ぐらいは・・・」

サークルの榊原教授と、白柳教授がいる、榊原教授が必死に父に頼み込んでいる。


父「そうか・・・榊原さん、白柳さん、本当に申し訳ない・・・」


「いえいえ、貴方も、奥様も・・・同じ仲間ではないですか・・・そして貴方と奥さんの血を引くこの子はどうしても、育て上げたい・・・我々としても・・・」

白柳教授が話していると病室のドアが開いた。



「あ・・・」

圭は、また驚いた。


銀座香苑の婦人が入ってきた。

小さな娘を連れている。


婦人「ごめんなさい・・・貴方、楓がさっきから病院、病院ってずっと泣きやまないの・・・」


「しかし・・・こんな時に迷惑になる・・・」

榊原教授は、少し困ったような顔をする。


「迷惑なんかじゃない!」

突然、小さなころの楓が叫んだ。


楓は、小走りにベッドに寝ている子供の頃の圭に近づき、手を握り締めた。

「死なないで・・・貴方・・・楓を一人にしないで・・・」

「この人は、必ず私が治します・・・」

楓は子供の頃の圭の手を握り締めながら泣いている。

横たわる瀕死の圭の閉じたまぶたに、楓の涙が落ちていく。


「楓・・・」

「楓ちゃん・・・」

その楓に、病室にいる、教授や香苑の奥様、父や母から声がかけられている。





圭は、突然、手をぎゅっと強く握られ、目を覚ました。


「驚いた?」

目の前にいるのは、現代の楓。


いつのまにか、この応接室には2人だけになっている。

楓は、恥ずかしそうに頬を赤らめている。

とても、美しく可愛らしい。


楓が、小さな声でぽつんとつぶやいた。

「熊野の血なの・・・」


「熊野の血って・・・」

圭は、全く意味がわからない。


楓は再び圭の手を握った。

圭は、再び強い眠気におそわれ、意識を失ってしまう。


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