圭は、銀座香苑の応接室で、驚く。
車は銀座に着いたようだ。
少女は、圭の胸にしがみついて、かなり泣きじゃくっていたけれど、今は泣きやんでいる。
圭が、紳士にドアを開けてもらい、車から降りると、銀座香苑と書かれた大きなビルの前。
「ようこそ・・・お出でくださいました・・・」
「銀座香苑でございます」
先日声をかけられ、今朝も電話をかけてきた婦人が立っている。
圭「はい・・・お招きにあずかりまして・・・」
婦人が、少女に声をかけた。
「あら・・・楓・・・」
少女は泣きやんでいるものの、手はつないだままだった。
圭は、少女の名前は楓ということが、わかった。
「しかたないわね・・・全く・・・」
婦人が申し訳なさそうに、苦笑をしている。
そして、その頭を下げた。
「とにかく・・・詳しい話は、中で・・・」
圭は、楓と手をつないだまま、香苑のビルに入った。
外から見ても、また中に入っても高級なビルと思う。
圭「藤のお香ですね・・・とても好きです。」
香苑店内の広いホールに藤の魅惑的な香りが漂っている。
婦人は、また圭に頭を下げた。
「はい・・・ありがとうございます」
「後で・・・お店もご覧になってくださいませ」
「地下1階から、3階までがお店になっております」
婦人と楓と圭の3人でエレベーターに乗った。
ガラス張りのエレベーターからは、各階のお店の様子が見える。
圭「かなり にぎわっているようですね・・・」
婦人は満足そうに店内の様子を見る。
「はい・・・ありがとうございます」
「いつの世も、香りは人をやすらぎの世界に導き、また心を高める不思議な魅力ゆえ・・・なのでしょうか」
そのエレベーターは7階でとまった。
「こちらへ・・・」
圭は、婦人に促されて応接室に入った。
楓は、まだ圭の手を握って離さない。
その圭は、応接室に入った途端、驚いた。
「ようこそ・・・おいでなされました・・・」
「え?」
圭には、聞き覚えのある顔と姿。
どういうわけか、応接室に 榊原教授が立っている。
「教授・・・これは・・・」
圭には、全く状況がよくわからない。
どうして、教授がここの部屋にいるのか・・・
どうして、学生の圭にそのような丁寧な言葉づかいをするのか・・・
「おかけになってくださいませ・・・」
圭が、少し戸惑っていると、婦人から座るように促される。
婦人は、笑顔になっている。
「大丈夫よ・・・貴方・・・」
圭は、楓にも促されて、ソファに腰をかけた。
かなり上質な革張りのソファで、身体全体を包み込まれるような安心感がある。
「楓・・・まだ貴方というには、早いと思いますよ・・・」
婦人が、苦笑しながら楓に話しかけた。
楓の顔は、ぽっと赤らんだ。
つないだ手は、ずっとそのままになっている。




