圭の追想(16)春奈の不思議な涙
圭にとって、学生生活やサークルの活動は楽しい。
もともと、父や母の影響からか歴史的なものに違和感がなかったことから、教授たちやサークルの学生仲間も屈託なく付き合っている。
入学当初から、他大学ではあるけれど、白柳教授に招かれ、そのゼミに特別参加し意見を述べたり、榊原教授に頼まれ講義原稿の作成を手伝ったりすることが多かった。
「君も、お父さんの跡を継いだほうがいいね・・・他の仕事に付かせることは日本歴史学にとって損失になる」
圭は、白柳教授や榊原教授によく言われる。
圭自身では、そういう評価は、よくわからないことが多いけれど、今の研究が続けられるならと思っている。
また、春奈も時々、圭の原稿作りを手伝う。
そんな ある時、圭は、春奈と原稿作りをしている時、不思議な会話をしたことがあった。
春奈
「細かい資料は、何とかそろえるから。文はお願いね」
圭
「ありがとう・・・春奈さんの資料は本当に助かります」
春奈
「私ね・・・こうやって貴方と原稿作りの仕事している時って・・・すごく幸せなの・・・ほんと、ずっとこうしていたい」
春奈は、うれしそうな顔、しかし・・・どこか笑顔に曇りがある。
圭は、春奈の言葉と表情が不思議。
「春奈さん・・・ずっと手伝ってくれないの?」
「ずっと手伝っていたいの・・・でも・・・」
春奈は、圭の顔をじっと見つめる。
何故か、春奈は、涙ぐむ。
圭は、不安になった。
「春奈さん・・・どうかしたの?何か悪いこと言っちゃったらごめんなさい・・・」
春奈は、下を向いた。
「うん・・・いいの、泣いたりしてごめんなさい・・・」
そして、不思議なことを言う。
「私、わかっちゃったの・・・お葬式の時・・・」
圭は、ますます不安で、混乱する。
「お葬式の時って・・・何のことやらわからないよ・・・春奈さん・・・」
春奈は、首を横に振る。
「・・・いずれ、貴方もわかるから・・・」
「今はわからないだろうけど・・・」
そして、顔を上にあげた。
「でも・・・お願いがあるの」
圭
「お願いって?」
春奈
「私、貴方のこと好きなの・・・」
「その時まで・・・そばにいさせて・・・」
圭は困った。
「その時って?」
「今日の春奈さん・・・変だよ」
春奈の顔が厳しくなった。
「いいの・・・ごちゃごちゃ聞かないの」
「準備続けましょう」
その時の春奈の心は、圭は、今でもわからない。
圭は、白檀の香りが漂う中、様々な思い出に浸っていた。




