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涙は風の中  作者: 舞夢
圭は白檀の香りの中、過去を思い出す
15/28

圭の追想(13)綾乃の恋愛講座

綾乃の話は続く。

「夫が亡くなって・・・実家に帰って・・・何年かして・・・大学のサークル仲間から、貴方のお母さんが亡くなったこと、お葬式の連絡が届いたの・・・」

「お葬式で貴方、まだ小さかったけど・・必死に泣かないって我慢をしているのわかった」

「口をずっと、への字に結んで・・・お父さんが手をつなごうとしてもつなごうともしない・・・」

「もともとお母さん似で、可愛らしい顔だけど・・・その結んだ口元とか・・・すごくいじらしくて・・・思いっきり泣かせてあげたいなって、式の最中ずっと思っていた」

「当時・・・貴方たちは大学教員の宿舎に住んでいたから、宿舎に住んでる若い教員仲間も多く出席していたの・・・そう、貴方の今の教授もいたのよ・・・」


圭は、初めて聞く話ばかり。

「そうなんだ・・・全然覚えてないや・・・」


綾乃は、また話し続ける。

「うん・・・貴方も病気がちだったって聞いたから・・・あまり貴方自身とは付き合いが無かったのかもね」

「お葬式が済んで・・・貴方のお父さんのことと貴方のこと・・・サークルのみんなが、すごく心配して・・・」

「お父さんには、時期を見て再婚なんて人もいたけど、それは絶対しないだろうって人も多くて・・・」

「とにかく、その時に一番心配なのは貴方のことだったの」

「いろんな話が堂々巡りになって・・・それでも決着つけないと帰れない・・・」

「貴方のお父さんが・・・そこでぽつりって言ったの」


「綾乃さん・・・少しの間でいいから・・・家を手伝ってくれないか・・・この子の面倒だけでも・・・」


「はい・・・手伝わせてください・・・」


「私、その時これが私の定めって感じてしまったの・・・」

「貴方のお父さんの心には、女としては入り込めないけど・・・少しでも・・・そばにいたかったの・・・だって、好きだったもの・・・」

綾乃は、またわっと泣き出した。


綾乃の涙が激しくなった。

「私の実家は静岡でも昔からの古い地域で・・・なかなか出戻りなんて・・・白い目で見られて・・・」

「そういうこと、貴方のお父さんも心配してくれたのかな・・・」

「私も本当に実家に居づらかったし・・・お言葉に甘えるような気持ちで、この家に来て・・・ずっと居ついちゃったの」

「坊ちゃんは、お母さん似で本当に可愛らしくて・・・」

「でも・・・最初はツンツンしていて意地張っていて・・・本当に悩んだのよ・・・」


綾乃は、軽く圭をにらむ・・でも笑っている。


「盲腸の手術のあとは、仲良しになったね・・・坊ちゃまと食事していると、幸せだったもの」

「坊ちゃまは・・・何か不思議に周りを、ふんわりさせる魅力があるの」


圭は、首を傾げる。

「そうかなあ・・・自分ではよくわからないけど。」


綾乃は、涙を拭いて真顔に戻った。

「うん、坊ちゃまの大学のサークルの女性方・・春奈さんもそうだけど、本当にいじらしいほど真面目に働いていた」

「みんな、貴方のこと大切に思っているのよ」

「でもね・・・坊ちゃま、これだけは真剣に聞いてね・・・大事なことだから」


「うん・・・」

綾乃

「人に好かれるということと」

「うん」

綾乃

「人を好きになるというのは、違うの」

圭は、少し笑った。

「それは そうだろうけど・・・」

綾乃は、真顔。

「真面目に聞きなさい。」

圭も真顔になるしかない。

「・・・・うん」

綾乃

「坊ちゃま自身が心の底から、本当に愛せる人はきっと現れる」

「それは、坊ちゃまとその人が付き合った期間とかまるで関係ない・・・一瞬で決まることもある」

「そんなものなのかなあ・・・」

綾乃

「大丈夫、お母さんもお父さんも見守るし・・・何より・・・」

圭は、綾乃の言う意味がわからない。

「何よりって?」


「うん・・・今は言えない・・・」

綾乃は、微笑んでいる。


その夜は、綾乃は長年暮らした自分の部屋で眠った。

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