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涙は風の中  作者: 舞夢
圭は白檀の香りの中、過去を思い出す
14/28

圭の追想(12)綾乃と父の過去

「坊ちゃまにはまだ難しいでしょうけど・・・」

綾乃は、少し難しい顔をしている。。

「男女の仲って・・・どうにもならない定めってあるの」


「うん・・・」


綾乃

「私はね・・・」

綾乃は涙ぐんだ。

「本当は・・・だんな様のこと、好きだったの」

「前の夫に先立たれて・・・本当に途方にくれていた時、夫の借金のことから何から何まで助けてもらって・・・」


圭は、驚いた。

「え?ずっと前から父さんのこと、知っていたんだ・・・」


綾乃

「うん、黙っていたけど・・・貴方のお父さんとは、大学のサークルで一緒だった」

「父さんのほうが2年先輩だけどね」

「お父さんはサークルの中で、男女を問わず人気があって、私もあこがれていた」

「面倒見がいいし、いかつい顔だけど、ほんとうはすごく優しくって紳士なの」

「サークルの女子学生はみんなお父さんのこと好きで、誰が射止めるかなんて、そんな話も多かったな・・・」


綾乃は、少し照れたような顔。

「私もかなり狙っていたけれど・・・アプローチもいろいろしたけど・・・まあ貴方のお父さん鈍感で気がつかないの・・・そういう女心には・・・」


「そうなんですか・・・」

そう答えるしかない。


綾乃

「そんなことしていたら次の年になって、新入生で貴方のお母さんが入ってきて・・・」


圭はまた、驚いた。

「同じサークルだったんだ」


綾乃

「まあ、聞いてないでしょうね・・・だんな様が貴方に言いそうもないし・・・私も黙っていたけど・・・」


「どうし 黙っていたの?」

綾乃

「それが女心っていうの・・・後でまた教えてあげる」

「貴方のお母さんって、悔しいけど、すごく可愛いし、頭もきれて、思いやりもある・・・ほんとに悔しいけど・・・あっという間に貴方のお父さんと・・・」


圭は、ようやく、少しわかってきた。

「そうだったんだ・・・」


綾乃

「私も貴方のお父さんへの思いは、消えては無かったけど」

「貴方のお母さんには、とても太刀打ちできないって・・・その時はあきらめるしかないって・・・大学卒業と同時に実家のある静岡に帰って、何年かして地元の人と結婚したの」

「結婚生活は、まあ幸せだったけど・・・夫が今でいうワーカホリック、働きすぎみたいなところがあって・・・朝早く製茶の関係で運転していて・・・崖から・・・」


綾乃は、苦しそうな顔になった。

「だいたい製茶工場って時期になると、ほとんど24時間労働が3か月ぐらい続いて・・・家には帰ってこないし・・・たまに帰っても顔色悪いし・・・」

途切れ途切れに話している。


「夫の葬式の時、貴方のお父さんやサークルのメンバーが来てくれて、本当に心強かった・・・嫁ぎ先のご両親に・・・毎日いろいろ嫌みを言われていて・・・」

「結局・・・子供が出来なかったこととかあって・・・夫の家を出て・・・実家に帰ったけど・・・夫の残した借金もあって・・・」

「葬儀の席で、小声で夫の母が口にしただけなのに・・・貴方のお父さん聞いていたのね・・・」

「私の知らない間に、お金を工面してくれて・・・」

「死んだ夫の母にも、しっかりと話をしてくれて・・・」

「どんなに感謝しても、しきれないの・・・」


綾乃の話は、途切れ途切れ 続いていく。

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