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拙作の『デラとアルフのドラゴン退治』の世界観に、ゴブスレの主人公パーティの面々を放り込んだらどうなるか?
連載6回目です。
ちなみに、最初に考えていたタイトルは、『ゴブリン理不尽物語』で、もっと殺伐とした話になる予定でした。
いつ頃から、背中合わせにあるものを、信に足ると感じるようになったのか?
あるいは、肩を並べて歩く者を、当たり前と思うようになっていたのか?
そんな、感傷めいた思念が浮かんだのも一瞬で、グリフは無言でミンファの後を追う。
人族のグリフの目には、何の変哲もない自然の景色にしか見えないが、エルフのミンファには、ゴブリンたちが歩いた痕跡は一目瞭然ということだ。
数刻後・・・
一行の姿は、森の奥深くの洞窟を見下ろす崖の上にあった。
「入り口は他にありそうか?」
「どうかしら?
でも、あれを塞いでも、他に穴を開けて出てくるだけじゃない?」
「どこに何匹いようと構わん。
ゴブリンどもは殲滅だ。」
グリフの言いように、わずかに通常と異なるものを感じたのか、ミンファがグリフの顔をしげしげと眺める。
「なんだ?」
「その方が、人間らしくていいわよ。」
「なにがだ?」
「なーんでもない。
さっさと片付けて、村のみんなを安心させましょう!」
「ああ、そうだな。」
さらに、数刻後・・・
五名の冒険者達は、ほとんど消耗した様子もなく、村への帰途についていた。
「ゴブリンを滅し、ゴブリンの集落へと帰還する。
確かに、少々複雑な心持ちですな。」
「盗賊退治をして、人の村に戻るのと同じと思えば良かろう。」
モムグの言葉に、グリフが思わず目をやると、
「たとえ血を分けた親子や兄弟だとて、憎しみ、恨み、殺しあうこともあろう。
なれば、ゴブリンと戦い、ゴブリンを守ることがあっても、別段不思議ではない。」
「そうか、そうだな。」
「でもわたし、少し、ホッとしました。」
珍しく、ニニアが口を挟む。
「ただただ、他者を弄り、殺すためだけに産まれてきた存在なんて、とても悲しいです。
だから・・・」
「確かに、俺も不思議に思っていた。
なぜ、ゴブリンには雄しかいないのか?
なぜ、人の胎からゴブリンしか生まれないのか?」
「余程、強い呪いなんだと思うわ。
エルフの伝承にも、こんな呪いのことなんて、残されていないもの。」
「エルフどもは、他の種族には興味がないからのう。」
「まぁ、それは否定しないわ。」
珍しく感傷的な反応をするミンファに、モムグはそれ以上追及することはなく、わずかに肩を竦めてみせた。
「あんな小さな村で、これからもひっそりと暮らして行くんですね。」
誰にともなく呟いたニニアの言葉に、
「小さければ、見つかる可能性も低いだろう。
村人以外は、すべて敵だからな。」
先頭を歩くグリフの表情は、ニニアからは見えなかった。
次回予告
ゴブリンは討伐された。
帰途につく一行に、思わぬ土産が・・・




