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拙作の『デラとアルフのドラゴン退治』の世界観に、ゴブスレの主人公パーティの面々を放り込んだらどうなるか?
連載3回目です。
よろしくお願いします。
ゴブリン村の中に、ゴブリンの死体は二十五体。
そのうち十三体は村民なのであろう、すがりついて涙を流す者、両手を胸の上で組み、祈りを捧げる者たちに囲まれている。
襲撃者である十二体については、一箇所にまとめて、相棒と二人で、簡易な鎮魂の祈りを捧げた。
「む?」
悲しみに包まれた広場の雰囲気が、不意に変わった。
ゴブリンにしては大柄な者たちに囲まれつつ現れたのは、裾を引きずるような外套に身を包んだ、ひどく老齢のゴブリンだった。
「子供たちを助けていただき、まずは感謝を。」
発音は若干不明瞭ではあるが、跪きつつ放たれた明らかな人語を耳にした男と女は、すぐには返答の言葉を思いつかない。
「ワシはこの村の司祭、ヌルワジと申す。」
「俺はグリフ。
こちらはミンファだ。」
「グリフ殿とミンファ殿は、どのような目的で、この村へ?」
「ゴブリンを、追って来た。」
「ふむ。
その途上で、この村に至ったと?」
「ああ。」
「警戒なさるのは分かり申すが、これでは会話が捗りませぬな。」
「・・・」
無言のまま、グリフは鉄兜を脱いだ。
黒い短髪に、野性味の強い面差し。
「ヌルワジ殿に対して、警戒しているわけではない。
生来の、話下手でな。」
「ふむ。
分かり申した。
恩人に対して礼を失しておったのは、こちらのようじゃ。
されば、まずはこの村の状況をご説明いたそう・・・」
ゴブリンがこの地に住み着いたのは、相当昔のことらしい。
らしい・・と言うのは、村の最長老であるヌルワジが先々代に昔話として聞いた話であり、どこまで遡れるものなのか、定かではなかったからだ。
少なくとも数十年、ゴブリンはこの地で生を営んできた。
狭いながらも畑を耕し、周囲の森で狩りをし、収穫物の量によって人口が増えたり減ったりもしつつ、何とか今まで生き延びてきた。
そこに突然現れたのが、件のゴブリンどもであった。
村の周囲を巡る柵は破壊され、畑を踏み荒らされ、不運な十三名が命を失った。
もしもグリフ等が現れなければ、村はひとたまりもなく壊滅していただろう。
そこまで話を聞いて、グリフは肝心なことが語られないでいることに気がついた。
「あの、人族の少女は、いずこから?」
「ワシが先代から司祭役を引き継いで程なく、幼子を抱いた旅人が村を訪れてな、ちょうど子を失ったばかりの者が引き取ったのじゃ。」
「オレの知るゴブリンは、人族の子供を育てたりはしない。」
「我らは、村の外の者と繋がろうとはせぬからのう。」
「この村の住人と、襲ってきた奴らとは、何が違う?」
グリフの質問に、なぜか微笑みのようなものを浮かべた長老は、少しの間を置いて口を開いた。
「そもそも、我らはすべて同根じゃ。」
「同根?
根は同じ・・・だが、今は違う?」
「邪神の呪いを受けし者・・・それを称して、邪化と言うそうじゃ。」
「邪化?」
「呪いを受けし者の仔は、呪いを引き継ぐ。
それ故、我らは村の外との交わりを絶ち、この辺境の地で、ひっそりと隠れるようにして、生きてきたのじゃ。」
「なるほど。
で、解呪の方法は?」
グリフの問いに、ヌルワジの返答はない。
いや、ややあって、何とか口を開く。
「この村全体が、浄化の結界に守られておる。
じゃが・・・」
ゴフっと、明らかに尋常でない咳をすると、倒れようとするヌルワジを、傍らのゴブリンが、背後から支える。
「見ての通り、ワシの余命も、あと僅かじゃ。
我が命尽きる時、結界も力を失うであろう。」
「そうか。」
グリフは、傍らに立つミンファに顔を向ける。
「短時間なら、結界を維持するのは、そんなに難しいことではないと思うわ。
でも、年単位で継続するなら、専門家を呼ばないと。」
ミンファの言葉に、ヌルワジの瞳に力が戻る。
「手伝うてくれるのか?」
「まぁ、とりあえず、あたしらがここにいる間だけはね。
古い術式みたいだけど、かっちり組んであるようだから、魔力を充填してやれば、半年くらいはもつと思うわ。」
「そこまで時間をかける積もりはない。」
次回予告
ゴブリンを刈ってきた者がゴブリンを守る。
葛藤に苦しむグリフだが・・・




