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第2話〜矢車家の朝にて〜

続きです。

こっから本編です

N県横名町。


100年以上前までは、かの中華人民共和国で比較的都会な地域として昼夜を問わず騒がしかったこの町も、今では、日本帝國領となっていた。

閑静な住宅街と小洒落たオフィス群。そして町内唯一の高等学校、県立横名高校周辺に集まった、学生目当ての喫茶店やゲームセンター、ファミレスといった施設で形成されている非常に暮らしやすい町である。


朝日の昇りだした現在、各家庭ではその住民たちが窓越しに朝日を浴び1日のスタートを切ろうとしていた。


同じような見た目の一般的な造りの一軒家に両脇を固められた、この矢車家でも、住民たちは各々の"今日"を開始させようとしていた。

まあ、住民たちと言っても2人しかいないが。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


矢車慶弥は、これから過酷な訓練やハイレベルな講義に身を投じることになる妹のことを想いながらお弁当と朝ごはんを作っていた。

半分ほど完成しているお弁当と朝ごはんプレートからは、彼の炊事スキルが人並み以上であることと、彼がどれだけ妹を愛しているかということ、この2つの情報が読み取れる。


しばらくすると、目覚めた妹が2階から降りてきた。


慶弥はネギを刻む手を止めて、階段を降りてくる妹を見上げた。



慶弥の妹、恋華は慶弥のこれまでの人生の中で見てもダントツに可愛い美少女だった。

大きな瞳。白い肌。かすかに朱色のさした雪白の頬。その淡い桃色の唇は、さながら一枚の桜の花弁であった。

スタイルのいい華奢な体には、階段を降りるたびに揺れるくらいの胸が付いている。


まだ寝起きで髪も整えていない恋華だったが、その姿には、思わずため息をつきたくなるような可憐さがあった。



しかし、自分のいる一階に降りてこようとしている恋華を見る慶弥の表情は、どこか緊張しているように見える。


一段、また一段と恋華が近づくたびに、鼓動は速まり、今にも心が張り裂けそうになっていく。


今や、後一段で一階に着く恋華にその体ごと向けていた慶弥の心臓は、階段を降りきった恋華と目が合ったことで、自分の耳にも聞こえるほどに高鳴っていた。


恋華と目が合っていた5秒ほどの間、それが彼には30秒にも60秒にも感じられた。


兄は自分を奮い起こした。たった一言、妹に話しかけるために渾身の勇気を振り絞った。


「おはよう、恋華。」


その一言と共にたっぷり5秒ほど恋華と見つめ合う。


頬の赤みが増したように見えた恋華は、寝起きでまどろんでいた目を、冷たい見下すような瞳に変えて兄へ向けた。


兄を一瞥した恋華の口は開くことはなかった。

そのまま、視線を横にそらし洗面台の方へと向かう。




洗面台に着き、せわしなく準備をしている恋華とは対照的に、キッチンの前には今にも泣き出しそうな顔で下を向く慶弥の姿があった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


恋華が前とは違う態度を兄に対して取り始めたのは、四月からだった。

入学式をしてから数日の間、恋歌は以前と変わらない態度で慶弥に接してくれた。話しかけたら応えてくれたし、近づいても避けられるようなことはなかった。


それが今では、


「おはよう、恋華!!」

プイッ


「恋華おかえりー」

「…」


「あ、お風呂使う?ごめん今掃除終わー」

「邪魔。」


この有様だった。

どうやら、強い不快感を、感じたときにしか話さないらしい。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ショックを受けながらも、それでも恋華のためにとお弁当作りを再開させる。



別に、恋華が僕のことが嫌いでも、それは僕が恋華を好きでなくなる理由にはならないから。



そう思って包丁を振るう慶弥の後ろ姿を、洗面台の方から恋華が熱っぽい目で見ていることに、慶弥が気づくことはなかった。

まだまだ拙いですが生暖かく読み続けて欲しいです


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