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掃除機

ようやく繁忙期を過ぎた月曜日。

高峰は部長の席をチラ、と見やり、どうしたものかと考える。

今高峰が抱えている案件で部長に相談したいことがあったのだが、今日は朝から部長の様子がおかしいのだ。

いつもはにこにこと無駄に元気に挨拶をしながらオフィスに入ってくるのに、今朝は傍から見て分かり過ぎるほど落ち込み、虚ろな瞳でやって来たのだ。

周りの人間も部長の様子がおかしいことに気付いているようだが、普段とあまりにも様子が違い過ぎ、声を掛けることをためらっているようだ。

できれば自分も係り合いたくはない高峰であったが、この問題が解決しないことには前に進めない。

よし、と自分に気合を入れ、部長の席に向かった。

「部長、よろしいですか?」

「‥‥」

「部長?どうしました?」

「~~っ!高峰君!」

うるうるの瞳で高峰を見上げてくる部長。

もうすぐ50のおっさんにそんな目で見られてもちっとも嬉しくない高峰は、その様子に気が付かないふりをして仕事の話をしようとした。

が、遅かった。

「離婚だよ!」

「は?」

「離婚の危機だよ!」

オフィスがしん、と静まり返った。

「先週まですごく忙しかったじゃない?

だからね、僕、すごく疲れていたんだよ。

でね、昼間、リビングの床でごろごろしていたら、掃除機かけてた奥さんが、僕の髪の毛を掃除機で吸ったんだ!」

「‥‥」

「愛する旦那様に、そんな事、できないよね?

ねぇ高峰君、君の彼女は君にそんな事、する?!」

高峰が現在自分の彼女である同僚の田中を見やると、そこには大きく頷く田中の姿があった。

絶対やるな、と確信をもった高峰。

「ぶちょー、掃除してる奥さんの邪魔する部長が悪いですよ。

ごろごろするぐらいなら、布団で寝りゃあいいじゃないですか。」

自分の席から部長に声を掛ける田中。

あげく、布団干したかったら、やっぱりぶちょーは邪魔だぁ、とけらけら笑いだした。

「もう愛はないんだね?!」

机に突っ伏して泣き出す部長。


高峰はため息をつき、課長の席に向かった。

もうだめだ。課長、助けてください。


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