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星のてかがみ  作者: たかの かんな
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「おとめ座さんって本当にいじわる!」

「だめよちい星、悪口を言うものじゃないわ」

「でも二の姉さま、おとめ座さんは私たちのことを馬鹿にしていました!」

「よせちい星、言っても仕方のないことを気にするな」

「一の兄さままで……!」


 おしゃれした星座たちで春の夜空がにぎわいはじめても、てかがみ座はまだおとめ座と別れた場所にいました。周りに他の星座がいないこともあってか、てかがみ座は自分たちだけでお話しているようです。


 何やら怒っているのはちいぼし。七つ星きょうだいの末っ子、つまりみそっかす星座のてかがみ座の中でも一番のみそっかす、七番目の星でした。とても優しい二の姉さまと長男らしく真面目な一の兄さまの二人からたしなめられ、ちい星はしょんと落ち込みます。


「ちい星ったら二の姉さまにべったりなのに口だけは一人前ねえ」


 そこへからかうような声が割って入り、ちい星はまたも声を荒げました。


「六の姉さまもおとめ座さんみたいにいじわるばっかり! だいたい六の姉さま、六の姉さまにはちい星って呼ばないでっていつも言ってるじゃない!」

「やあよ、ちい星はちい星でしょ。悔しかったら二の姉さまから離れてから言うことね。まあ、どうせ無理な話でしょうけど」


 六の姉さまはすまし顔でちい星に言いました。ちい星はくちびるを噛みしめます。私が二の姉さまから離れたらてかがみ座じゃなくなっちゃうもん。ちい星は誰にも聞こえないような小声でつぶやきました。

 一の兄さま、二の姉さま、三の兄さま、四の姉さま、五の兄さま、六の姉さま、そしてちい星の七つ星でてかがみ座はできています。二の姉さまからちい星までの六つの星がぐるりと大きな円をつくり、一の兄さまと二の姉さまがてかがみの柄をつくっているのですが、ちい星のいる位置は二の姉さまのすぐ側。本当はちい星がいなくたっててかがみの形になるのです。

 もしも二の姉さまから離れると言ってしまったら、自分以外の六つ星だけでてかがみ座になっちゃうかもしれない。そう思うとさみしくて悲しくて、ちい星は六の姉さまに言い返せなかったのでした。


「いいことちい星、おとめ座さんの言うとおり私たちてかがみ座は地味で名無しの星座よ。他の星座みたいに着飾るよりも、みんなをお手伝いしてばかりね。だけどちい星、それって誰にでもできることじゃないの」


 二の姉さまはちい星の頭を撫でてやりながら続けます。


「星は少しでも自分が目立とうとするものでしょう? おとめ座さんだってどのドレスを着たらもっときれいか、どの飾りをつけたらより素敵になるかばかり考えていたわね。他の星座もそうよ。今日の夜空の星座たちはみんな『自分が一番』だって思ってるはず。だけど私たちはどうがんばっても目立てないわね。その代わりみんなのいいところを探すことができるの。見た目がきれいな輝きを生むのも本当でしょうけど、心のうつくしさで輝けたらもっと素敵だと思わない?」

「う……ん」


 二の姉さまが何かすごく大事なことを言ってくれているのはちい星にもなんとなく伝わってくるのですが、二の姉さまの言葉は難しくてわかりません。というより、二の姉さまが易しい言葉を使ってくれているのだとしても、ちい星には「心のうつくしさで輝けたら」どうして素敵なのかがわからないのでした。


「いいのよちい星、いつかあなたにもわかる日が来るわ」


 ちい星がじっと考え込んでしまったのに気付いたのでしょう。二の姉さまはふんわりと笑いながら、ちい星の背中を優しくたたきます。


「さ、すっかり遅くなってしまったけれど、私たちも春の夜空へ行きましょう。今年もよろしくお願いしますってごあいさつをしなくてはね。今日はお月さまがお休みだからみんなの姿がよく見えるはずよ」


 ちい星はあっと思いました。おとめ座が去年より張り切っていたのも、みんなが早い時間から夜空に出かけていってしまったのも、お月さまがお休みだからだったんだ。

 お月さまはお日さまと入れ替わりに現れる王さまのような存在です。金色のたてがみをなびかせてまぶしく走るのがお日さまなら、銀のたてごとをかき鳴らして控え目に見守ってくれるのがお月さまです。お月さまの柔らかさの側でならば星々はそれなりに輝くことができるのですが、やっぱり星が一番目立てるのはお月さまがお休みの日なのです。空を星だけで埋め尽くせる幸せな夜が春の初日とかぶっていたから、みんなが何日も前からうきうきそわそわしていたのです。


「一の兄さま、二の姉さま、早く行きましょう!」

「落ち着けちい星、お前ひとりだけで動くな。ちぎれてしまうぞ」

「ごめんなさい一の兄さま。いい子にしますから、早く早く!」

「まったく……今年はちい星だけじゃなくて大勢がこんな調子だな。面倒が起きなければいいが」


 いてもたってもいられない様子のちい星を一の兄さまが叱りましたが、ちい星はちっともへこたれません。星が一番きれいに見える夜、そこへ行けばちい星たちてかがみ座も少しはきらきらして見えるかもしれない。「今日のてかがみはすごく素敵ね」なんて言ってもらえるかもしれない。二の姉さまが言ったことなんてすっかり忘れて、期待に胸がいっぱいのちい星なのでした。


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