11 【和葉】 青い鳥
夜、ベッドの上で袋を手にした和葉はごろごろと回転しながら、袋を見上げた。
「消える時間、いつなのかなぁ」
家を出てすぐに消えたのであれば、母による掃除の影響を受けていないはずである。
だがもし母の掃除の後に消えたのであればロープがどうなったのかよく分からない。
母に聞いても「下に置いてあった物は適当に掃除したわよ」という返答である。
いっそベッドの足に袋を被せてやろうかとも思ったが、それでベッドがなくなったら和葉は明日からどこで寝るのか困ることになる。絶対に母の激怒と、新しいベッドを買って貰えないことは確実だ。今度何か大きいものを一部入れてみるというのはどうだろうか。毎回和葉に嫌みを言う担任の先生のヅラとかか。いや、大きくなかった。じゃあ本人を突っ込むか。
「駄目だ、確か嫁と子供がいたはずっ」
和葉は首を振って危険な思考を改めて、カーネルおじさん人形が手に入らないかしばらく検討することにした。高かった。諦めた。
「うーん……」
消える時間に関しては、一晩中見張っていてもいいとは思うのだが、残念ながら明日も学校はある。いかに授業中は大抵眠っている和葉であっても、世界史の授業や美術は好きであるし、体育は寝て過ごす訳にはいかないのだ。
そしてまた、どんな仕組みで物が消えるのか気にはなったが、追跡方法がない。
「携帯を入れてみるとか……あぁ、でも消えたら困るし」
さすがに携帯が行方不明になるのは困る。電話をかけたとして出る相手がいるかどうか分からないのだ。古めの携帯なのでGPSは付いていないし。
追跡用発信器の値段を調べてみたら、そちらも数万単位だった。先日の金貨を売り払う言い訳を考え付かない限り無理だ。
悩んだ末、和葉はまず消える時間を探ろうと枕元の時計を袋に入れた。鳥の形の目覚まし時計だ。いつもより一時間前にセットしておいた。このセットの時間を段々早めれば、消える時間も分かるだろう。鳴ればその時間より後に消えることが分かり、鳴らなければその時間より前に消えているのだ。
「朝起きるまでに消えていたら、結構時間が絞れる気がする!」
時間を絞るためにも、夜中に頑張って出来るだけ起きて、ちょこちょこ覗いてみようと思う和葉だったが、既に眠気が半端ない。
ちらりと袋を開くと、中にはまだ青い鳥の目覚まし時計があった。
ここ数日、和葉の興味はこの袋に向けられている。
何故こんなに気になるのか分からない。単純に袋に入れた物が消えてしまうから? 不思議だから?
そうでもあるし、そうでないとも思う。
ただ袋の文様を見つめると、何か入れてみたいという、何だか良く分からない欲求にかられるのだ。
――いや。
誰かに、「何か」を届けないといけないような。
眠る前にうつらうつらと浮かんだこの考えは、起きた頃には忘れてしまうようなぼんやりとした意識となっていた。
そして和葉はすっかり忘れていた。
――朝までに目覚まし時計が消えてしまったら、明日からのアラームをどうするのか。
残り少ない和葉のお小遣いのピンチであったが、そんなことを考える意識は残っておらず、和葉は深い眠りに引き込まれていった。




