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ともしび  作者: れとろそふと
第二章
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うたかたの記憶

 夜になって、ひんやりと気持ちのいい風が吹いていた。

 私と怜香は、今の私たちの立場や今後について、ぶっきらぼうなやり取りをおこなった。私はどうしても怜香と一線を引いた口調となり、彼女は必死に雰囲気を良くしようと努力をしていたが、挙句の果てに疲れ切ってしまい、二人で仰向けに寝転んでしまった。

 どこを向いても、息が詰まりそうになるほどの奥行きを持った藍色に包まれていた。その上に、白くまばゆい砂糖をまいたような星が点々と連なって、甘く煌めいている。

 その頂点に、鋭く尖った三日月がポツンと佇んでいた。いつも見ている景色ではあったが、今日はとても新鮮に思える。普段はない存在が、重量のある居づらさと目新しさを呼び寄せている。

 私たちはしばらく黙っていた。怜香はもう寝てしまったのかな、と思ったとき、「あたしたち――」と続く、消え入りそうな声が聞こえた。つややかな泡沫ほうまつ のようだった。

「せかいにふたりだけしかいないように、おもえない?」

 泡沫の薄い膜がはじけて消えた。その中の言霊たちが放射状に飛び出して、雲の上に染み込んでいく。

「怜香ちゃん。その言葉、どこで知ったの」

「わかんない」

 怜香は即答したが、何となくもどかしさが残る感じが伝わってきた。

 そっか……。私は直感した。きっと古賀の言葉なのだろう。証拠は何もないが、表現できない確信があった。

 不意に初めて古賀と出会ったときの、私と似ていると感じたことを思い出した。いや違う。そのときの記憶など思い出したくなかった。だから深い心の海の底に沈めていたはずなのに、怜香の言葉が無理に引き揚げてしまったのだ。

 ――きっと彼と私が望むものは同じなのだ。

 彼が答えた、人間の証明という望み。私が見た、私と類似した彼の姿。怜香をここに連れてきたときから「間違いだ」とずっと頭の中で繰り返し唱え続けていた。そんなバカなことがあってたまるか。もしもこの事実を否定せず認めてしまったならば、私を支え続けている足場は無残にも崩落してしまう。

 人間になってしまった私は白い羽をもがれて、成すすべもなく落下して、地面にたたきつけられてしまう。

 横たわっていた私は背中を丸めて膝を抱えた。顔をうずめ、心をチクリと刺す疑念を懸命に突き放した。

 不本意ではあったが、かつて命の灯を吹き消し、抹消した小暮の言葉を思い出した。

 ――過去に囚われて生きるなんて、僕はごめんだ。

 そうだ。どうせ誰も覚えていない人のことだ。もう忘れよう。そして今するべきことは、未来の芽を育てていくことなのだ。

 すぐそばから、愛らしい微かな寝息が聞こえてきた。

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