焦燥の行き先
右腕をさする。まだ若干の違和感は残っているが、あの日からもう三日経っている。さっさと彼を始末して、早くこの件にけりをつけたい。
そわそわしている私の様子を見て、神さまがちょっかいを出してきた。
「神奈ちゃん、今回は妙にやる気だね。もう少し安静にしててもいいと思うけど」
あの最悪な運命の話を聞いてからと言うもの、常に何かをしていないと落ち着かなかった。少しでも立ち止まってしまえば、頭があっという間に絶望に持っていかれた。
「私、もう行きます」
空回りする私を神さまが引きとめた。
「あのね、運命の分岐点――今回は古賀が捕えられるまでにはまだまだ時間は残されている。急く必要はないんだよ」
「でも、こんなところでのうのうとしていられません」
勢いに任せて反論したが、神さまは理詰めで対応してくる。
「今回の件で私はどう考えているか、察してくれないと困るよ。今はこの件を早く終わらせることよりも、神奈ちゃんの安全を優先しておきたい。『神官』にいなくなられては大変だ。前にもそんなことを言った気がするけど」
隙なく嫌味を差し込んでくる。
「でも……」
あ~あ、と神さまが妙な声を上げた。
「君は『下見だ』って言っていちいち過度な干渉をするけど、『下見』に行かなくてもその点は変わらないんだね。まったく、『神官』の名が取れるのはいつになるやら。まぁ、私に神奈ちゃんの全てを制限することはできないけどね」
神さまは折れてくれた。
「行きたければ行けばいい。でも、絶対に失敗は許されない。この件は、どんなに無様な結末になろうと必ず遂行してほしい。というより、遂行しろ」
初めての物言いに私は気圧された。いつもは飄々としている神さまが、今は必死な様子を露呈している。しかし、あの運命を知った後ではそれも当然なのかもしれない。
――絶対に消し去る。
今日の私の歩幅は大きく、ずっしりとした重みを持っていた。何もない空の果てに、死を懇願していた古賀を思い浮かべて睨みつけた。
雲の先端から、睨んだ目のまま眼下に広がる景色をなめまわす。古賀巧巳――最初にあった地点からずいぶんと遠くの、海が近いところを歩いている。
目を大きく見開いて目標地点をより糸で結び、勢いよく飛び出した。轟々と音を鳴らして落ちていく。
不吉な予感がしていた。それは三日前からずっと感じたもので、日に日に大きくなって私を圧迫し続けていた。確かにこの事案を早く処理して、安心できる未来にしたいという思いは事実であったが、もう一つ、この嫌な感じを振り払いたいという思いも、事を急ぐ理由だった。




