第2話
しばし無言で歩き続けること数分。俺たちは校門―――ではなく、とある部屋の前へと到着した。
ドアの横には『生徒会室』と書かれたプレートが下がっている。
そう、ここは我らが私立恍泉学園を取り締まる役目を担う中枢機関であり、俺がとある理由で所属している生徒会執行部専用の部屋である。
不知火がドアノブを軽く回し、開錠されていることを確認すると、振り返り俺を促す。
しぶしぶ不知火の前へと歩み出ると、俺はゆっくりと手首を捻った。
――――ギィ…
古めかしい金属の擦れる音と共に、焦げ茶色の趣ある扉が向こうの方へと開かれた。
まず目に飛び込んでくるのは、教卓よりも一回りほど大きい机。そしてその上には『生徒会長』と書かれた三角錐と、分厚い紙の束が置かれていた。
「1時間34分58秒の遅刻ですね、おはようございます」
実に嫌味ったらしく腕時計を見ながら挨拶してきたのは、生徒会会計の牧原出雲という名の女生徒である。
「おはよう、欠席でもよかったんだけどね」
「そういうわけにはいかないでしょう?貴方にはやって貰わなければならない仕事が山ほどあるんですから」
黒縁眼鏡をくい、と上に押し上げながら無表情で書類を差し出す牧原。普段キザに見えるその仕草も、牧原が行うと嫌というほど様になっている。
笑い声がしたので、ふと後ろを振り向くと、不知火が口元を抑えながら笑っていた。
毎度思うのだが、こいつのツボというやつは未だに慣れない。
満足するまで笑い終えたらしい不知火は自らの席へと歩いていく。
俺は牧原から渡された紙束を一瞥して、座るべき席…三角錐が置かれた机へと向かった。