親愛なるあなたへ
数年前。
私は、大切な人を失った。
それと同時に、自分も失った。
失って初めて、その大切さに気づくと身にしみて実感したのはそれから。
あの人がいて、私の世界は保たれていたのだと気づかされた。
すべてを受け止めてもらえていた安心感で、私は初めて自信を持った一歩一歩を踏みしめていたと。
この文章は大切なあの人への手紙。
私から、あの人への。
心からの、愛を込めた、感謝を伝える手紙。
今まで
愛してくれてありがとう。
守ってくれてありがとう。
大切にしてくれてありがとう。
時間を共有してくれてありがとう。
あなたと過ごした時間。
あなたと生きた時間。
思うだけで、泣きたくなるくらい
私はあなたが大好きでした。
あの人は、いつも困った様な顔をしていた。
原因は私。
あの人へ私はいつも、怒りをぶつけていた。
私の怒りを飲み込みながらあの人は、ずっと考え込んでいた。
そんな、あの人の差し出す手はいつも温かくて、少しかさついていた。
あの人の笑顔はとても暖かく陽だまりのようだった。
人の心を温めるような陽だまり。
笑い声は豪快。
ふと、うるさいと言ってしまいたくなるくらいに。
独り言の多い人。
話かけられたと思って何度も返事をした。
慣れすぎて答えられなかった。
あり得ないとも思った。
寝ぼけているとも思った。
私はウトウトしていたから。
私のいる部屋は、あなたの病室から少し離れていたし。
あなたは、もう、話せなかったから。
なのに、あなたは呼んでいた。
2回も。
起き上がり、あなたの所に行った。
消えてしまいそうなあなた。
それから数分後。
最後のベルがなる。
あなたは旅立った。
あれから、私は変わった。
周りの人達は大人になった。という。
自分では、心に温度が無くなったようにしか思えない。
あなたを失い私は、温度がない。
本当の心を伝えることをしなくなった。
それでも、生きている。
時間を費やして思う。
やっと。
気休めかもしれない。
自己暗示かもしれない。
それでも思う。
私はあなたに愛されていた。
私はあなたを愛した。
それは真実。
あなたに愛された私は人を愛せるという事実。
ありがとう。
私は、愛せるんだ。
これから、人を愛せる。
失った温度を私は、
愛されるのではなく、
愛すことで取り戻す。
いや、なくしてはいなかった。
愛してくれてありがとう。
私は今でもあなたを愛しています。
ありがとう。