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第2章 第3節 「死ぬこと」がなくなった世界:実質的不老と社会の「目詰まり」

魔法大学の社会学部や倫理学専攻を目指すなら、この節は避けて通れません。

 西暦2150年。人類はついに、宇宙シミュレーターの仕様を逆手に取った「究極のライフハック」を完成させました。それが、肉体の定期メンテナンスによる「実質的不老」の実現です。


■ 「寿命」というプログラムの書き換え

もともと、人間の細胞が一定回数で分裂をやめて死んでしまうのは、宇宙のプログラムに書き込まれた「寿命テロメア・タイマー」という設定のせいでした。

 

 しかし、第2節で学んだ「バックアップとロールバック」の技術が完璧になったことで、人々はこう考えました。

「病気になってから治すんじゃなくて、毎日、寝ている間に細胞を『昨日の状態』に巻き戻せばいいんじゃないか?」

 

 これが、22世紀に大流行した「恒常的復元コンスタント・リペア」です。朝起きるたびに、体は常に「20歳の最高の状態」にリセットされる。これにより、理屈の上では人間は事故に遭わない限り、何百年でも生きられるようになったのです。


■ 2450年の「若すぎるおじいちゃん」

この技術が普及した結果、現代の2450年では、見た目だけではその人が何歳なのか全くわからなくなりました。

 大学のキャンパスで一緒にスポーツを楽しんでいる友達が、実は「ひいひいおじいちゃん(150歳)」だった……なんてことは、今では珍しくもありません。

 

 でも、いいことばかりではありませんでした。

 誰も死ななくなったことで、社会には新しい問題が生まれました。会社の上司が100年以上も席を譲らなかったり、政治家が200年くらいずっと同じ人だったりして、「社会のプログラムが更新されない(目詰まり)」という現象が起きたのです。


■ 「死」という特権と「死を義務付けられた下層」

また、この「毎日ロールバックする魔法」を実行するには、莫大な演算資源(MP)が必要です。

 お金持ちはいつまでも若く美しく生き続けられる一方で、MPを十分に買えない貧しい人々は、昔ながらの「老化」を受け入れるしかない……という、残酷な「因果格差」が生まれたのもこの時代です。

 魔法大学の入試では、「魔法技術がいかにして不平等を生んだか」という小論文がよく出題されるので、この歴史的背景はしっかり押さえておきましょう。


【試験に出る!:従量課金制寿命(Pay-as-you-live)】

22世紀後半に導入された、生存時間に応じてMPを支払う制度のこと。

 現代の魔法市民社会では、一人あたりの「基本ロールバック権」が法律(WCL)で保障されていますが、かつては「お金が切れた瞬間に、溜まっていた数十年の老化が一気に押し寄せる」という悲惨な事故も多発しました。


【コラム:『誕生日』のお祝いが変わった?】

昔の人は「一つ年をとったこと」をお祝いしたけれど、今の僕たちの世界では「また一年、無事に宇宙のバックアップが壊れなかったこと」をお祝いする「生存ログ更新祭」が一般的だよね。ケーキのロウソクの数も、実際の年齢じゃなくて「ロールバックを始めてからの年数」を立てる人が多いみたいだよ!


次の講義(節)の案内

命を自由にいじれるようになった人類。その次に求めたのは、世界を動かす「お金」と、他人を支配するための「力」でした。


第3章 第1節 魔法の力「MP」って本当は何?


きみたちが毎日使っているそのエネルギーの「物理的な正体」についてお話しします。


講義はさらに深い「世界の仕組み」へと進みます。しっかりついてきてね!

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