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【短編小説】メーター

掲載日:2025/12/16

 旧型のバイクに乗っていくつかのメーターを横目に走る。

 どいつもこいつも調子が悪そうだ。

 かく言うおれの旧型バイクもスピードメーターの中にあるオイルランプが点灯している。

 今日はさっさと帰って寝たかったが仕方ない。そのまま近くのバイクショップに寄ってエンジンオイルを足してもらうことにした。


 修理工事は連休前の整備待ちバイクがずらりと並んでいる。

「いらっしゃいませ」

 様々な油で汚れたツナギを着た従業員は愛想よく頭を下げた。

 ワタシはよろしくと言って煙草に火を点ける。

 排気ガスと機械油の匂いと煙草の匂い。

 オッサンの楽園だな、と思う。ワタシもこの匂いは嫌いじゃないが、家がこんな匂いだったら発狂してしまう。

 従業員はワタシのバイクを工事の奥へと運んでいった。

「店にキープしてある2ストオイルはまだある?」

「えぇ、半分くらい残ってますよ」

 そう答えた従業員の頭上にあるメーターは連続稼働9時間、体力ゲージは残り1/3ほどと表示されていた。

 精神テンションのゲージは高いままなのでしばらくは大丈夫だろう、と思う。

 空腹アラートが出ていたが、もう間もなく閉店だしそれは大丈夫だろう。

 カフェインとニコチンの低下も出ていたが、それも気にするほどでもない。

 だけどワタシの吸う煙草でストレス値が少し変動している。申し訳ないことをした。


 気になるのは精巣メーターだ。

 昨晩だけで5回は出している。

 中高生でもないのだから尋常ではない。おそらく残り体力が少ないのもその所為で、眠りが浅く回復しきっていなかったんじゃないだろうか?

 いや、ワタシを見て微塵もチンピクしなかったのはそのせいだろう。そうであって欲しい。

 だが精神テンションのゲージが高く維持できているのはその影響かも知れない。

 ワタシでなくオッサンだったら……?

 


 別に他人の頭上にこの手のメーターが見えたからと言って何かの役に立つ訳でも無いが、見えると色々考えてしまう。

 たまに職場の同僚がワタシをオカズにしたのを見る事があるが、なんだってそんな悪趣味なのか逆に訊きたくなる。

 もしワタシが自覚のある美人なら「わたしで抜けよ」くらいは思ったんだろうか。

 まぁ全く興味を持たれないよりはマシか。


 バイクのオイルを入れ終えたツナギの従業員が出てきた。

 ワタシは礼を言って金を払いショップを出る。腹を満たしたバイクのエンジンはすこぶる好調で機嫌よく煙を吐いていた。

 ウインカーを出して大通りに出ると、通りに並んだ色々なメーターとテールライトが見える。

 やっぱり、どいつもこいつもクタクタだ。


 アクセルを開ける。

 夜のとばりに溶けていくオレンジ色の光と各種メーター。

 オイルを追加したエンジンは軽快に吹き上がり、甘い匂いを撒き散らしながら走りだす。

 きっといまのワタシのメーターは良い感じだろう。少し疲れているかな?お腹も空いてるし喉も乾いてるけど、バイクの気持ち良さに比べたら大したことじゃない。


 うるさくてゴメンね。

 煙くてゴメンね。

 すり抜けはうざったいよね。

 でも羨ましいなら君もあなたもみんなバイクに乗ればいいんだ。

 上がり続けるみんなの不愉快ゲージ、その隙間を縫って走り続ける。

 ワタシの快感ゲージはどんどん上がっているだろう。


 速度警告灯が点いた。

 同時にサイドミラーで赤い追尾灯が光るのが見えた。

 ワタシの不愉快ゲージが上がる。

「まぁ良いか」

 あいつらのゲージも見てやろう。

 少しはチンピクして欲しい気分だった。

 バイクを止めて警察官たちを向く。

 色々なメーターが上がっていく。

 ワタシは全身にピッタリと張り付いたレザースーツのフロントジッパーを下ろす。

 解放された豊かな谷間。

 割れた腹筋。

 無毛の丘がギリギリ見えるあたりまで。

「フン」

 鼻で嗤う警察官のメーターが乱れる。動揺しているのが手に取るみたいに分かる。

 そこでワタシは一気にヘルメットを脱ぐ。

「ブスかよ!死ね!」

 警察官が厳重を抜いて発砲した。


 コンティニュー画面は出ないもんだな。

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